337 / 442
不動ベイシン
オペレーションらびっと4
しおりを挟む
昼食のお弁当を食べ終わり、衣笠大臣からの連絡を待つ間。
圭介さんとリビングのソファに並んで座る。
食休みもかねて聞きたいことがあったから。
「あんなことをいつもしていたんですか?」
圭介さんへの糾弾会は時間になったからと強制的に終了した。
そうしないと終わらなかったから。
入れ代わり立ち代わり、圭介さんを非難する人が現れて。
その度に圭介さんは同じことを繰り返し伝えた。
僕はそれを圭介さんの足元で見ているしか出来なかった。
「いつもじゃないけど、まあ、それなりに? 俺は泰葉さんみたいに誰かに寄り添ったりとかいう直接的な支援は出来ないから」
けろりとした様子の圭介さんを見ると、これが初めてではないと分かる。
誰かに文句を言いたいクレーマーの相手を普段からしていたんだ。
「唯も言ってたじゃん。俺には共感力がないって。その分、今日みたいに聞くだけの仕事は得意だから」
「共感力がないのと、自分が言われて傷付かないのは違うし」
ツラくないの? 僕は聞いてるだけで悲しくなった。
圭介さんがサンドバッグにされる理由はないよ。
「怒ってるのは聞き流せばいい。使えそうな意見は採用して、不要なものは切り捨てればいい。俺、そういう取捨選択得意だから。今日とか唯の方が嫌な思いたくさんしたでしょ? ごめん。コーヒー欲しいって言っちゃって。聞かせないほうが良かった」
「コーヒーは僕が圭介さんのために何かしたくて淹れたんです。そのまま圭介さんのそばにいたのも僕がしたかったからです」
本人は平気だと言うけれど。
僕が圭介さんをひとりにはしておけなかった。
自己満足だけど、その場に寄り添うことを選んだ。
「矢面に立つ圭介さんを見て、何も出来ない自分の不甲斐なさが嫌になる」
圭介さんを感情的に批判している人達には、もう少し落ち着いて物事を判断しようよと思う。
でも、あんなふうに興奮して手がつけられなくなってしてしまった人達にどうやったら分かってもらえるのか。
何も知らない。何もできない。
無能な自分に一番腹が立つ。
「唯にしか出来ないこともたくさんあるよ。お願いしても良い?」
「僕に出来ることなら何でも」
平凡な僕が有能な圭介さんにしてあげられることある?
「膝枕してよ。たしかに今日はちょっと疲れた。衣笠さんとの約束までまだ30分くらいはあるよね? 唯の膝で寝かせて」
「そんなことでいいの?」
「唯にしか出来ないことだよ。そして今俺が一番してほしいこと」
そう言うなら。
膝枕する?
圭介さんが横になれるようにソファのすみに深く腰掛けて。はい、どうぞ。
フワッフワのパニエで膨らませたスカートに埋もれちゃうけど寝にくくない?
平気? 30分たったら声かけるね。
「圭介さん、おやすみなさい」
僕の太ももに頭を乗せて、仰向けに横になると。胸のあたりで手を組んで圭介さんは目を閉じた。
そして、あっという間に夢の中。寝付き良いな。
圭介さんはスイッチを切るように眠ってしまった。
しばらく圭介さんの穏やかな寝顔を見ていたら。
ピコンと音を立てて、圭介さんが眠る前にセッティングしていたパソコンにメッセージが届いた。
薄ピンクのウィンドウの中。衣笠大臣からの短いメッセージ。
『少し早いが始められるか?』
予定より早い。どうしよう。
こんなに気持ちよさそうに寝てるのを起こせないよ。
圭介さんに膝枕してる状態でテーブルの上のパソコンには手が届かない。
仕方がないので、手元に置いていた僕のスマホで直接メッセージを送ろう。
『ごめんなさい。いま圭介さんが眠っていて。午前のお仕事が大変だったみたいです。約束の14時には起こすつもりだったんですけど』
『構わないよ。そういうことなら寝かせておきなさい。圭君は休める時に休ませないと眠らないから』
『お昼寝をするのは珍しいけど、夜は普通に寝てますよ?』
『あんまり寝ない子だろう?』
あれ? 噛み合わない。
また僕の知らない圭介さんがいる。
『君と一緒に過ごすようになっていろいろ変わったようだね。彼は眠らない子だったんだよ』
『ショートスリーパーっていうやつですか?』
『そうだね。1日に3時間も寝たら長く寝たというくらいに』
そうだったんだ。
もしかして僕の睡眠リズムに無理して合わせてた?
いや、圭介さんのことだ。
真夜中に起きて僕の寝顔を見て過ごしていたな。
寝ている時の無防備な顔は誰にでも見られるものではない。
僕も今、圭介さんの寝顔がカワイイなって思って見てるし。
意外と寝てる姿は見ていて飽きないものだ。
でも、変な寝言とか聞かれてたらどうしよう。
よだれをたらした、だらしない寝顔とかも見られてたかも。
これからは別の部屋で寝るようにしようかな。
いまも別々に寝てるし、これからもそうすればいいだけ。
圭介さんとリビングのソファに並んで座る。
食休みもかねて聞きたいことがあったから。
「あんなことをいつもしていたんですか?」
圭介さんへの糾弾会は時間になったからと強制的に終了した。
そうしないと終わらなかったから。
入れ代わり立ち代わり、圭介さんを非難する人が現れて。
その度に圭介さんは同じことを繰り返し伝えた。
僕はそれを圭介さんの足元で見ているしか出来なかった。
「いつもじゃないけど、まあ、それなりに? 俺は泰葉さんみたいに誰かに寄り添ったりとかいう直接的な支援は出来ないから」
けろりとした様子の圭介さんを見ると、これが初めてではないと分かる。
誰かに文句を言いたいクレーマーの相手を普段からしていたんだ。
「唯も言ってたじゃん。俺には共感力がないって。その分、今日みたいに聞くだけの仕事は得意だから」
「共感力がないのと、自分が言われて傷付かないのは違うし」
ツラくないの? 僕は聞いてるだけで悲しくなった。
圭介さんがサンドバッグにされる理由はないよ。
「怒ってるのは聞き流せばいい。使えそうな意見は採用して、不要なものは切り捨てればいい。俺、そういう取捨選択得意だから。今日とか唯の方が嫌な思いたくさんしたでしょ? ごめん。コーヒー欲しいって言っちゃって。聞かせないほうが良かった」
「コーヒーは僕が圭介さんのために何かしたくて淹れたんです。そのまま圭介さんのそばにいたのも僕がしたかったからです」
本人は平気だと言うけれど。
僕が圭介さんをひとりにはしておけなかった。
自己満足だけど、その場に寄り添うことを選んだ。
「矢面に立つ圭介さんを見て、何も出来ない自分の不甲斐なさが嫌になる」
圭介さんを感情的に批判している人達には、もう少し落ち着いて物事を判断しようよと思う。
でも、あんなふうに興奮して手がつけられなくなってしてしまった人達にどうやったら分かってもらえるのか。
何も知らない。何もできない。
無能な自分に一番腹が立つ。
「唯にしか出来ないこともたくさんあるよ。お願いしても良い?」
「僕に出来ることなら何でも」
平凡な僕が有能な圭介さんにしてあげられることある?
「膝枕してよ。たしかに今日はちょっと疲れた。衣笠さんとの約束までまだ30分くらいはあるよね? 唯の膝で寝かせて」
「そんなことでいいの?」
「唯にしか出来ないことだよ。そして今俺が一番してほしいこと」
そう言うなら。
膝枕する?
圭介さんが横になれるようにソファのすみに深く腰掛けて。はい、どうぞ。
フワッフワのパニエで膨らませたスカートに埋もれちゃうけど寝にくくない?
平気? 30分たったら声かけるね。
「圭介さん、おやすみなさい」
僕の太ももに頭を乗せて、仰向けに横になると。胸のあたりで手を組んで圭介さんは目を閉じた。
そして、あっという間に夢の中。寝付き良いな。
圭介さんはスイッチを切るように眠ってしまった。
しばらく圭介さんの穏やかな寝顔を見ていたら。
ピコンと音を立てて、圭介さんが眠る前にセッティングしていたパソコンにメッセージが届いた。
薄ピンクのウィンドウの中。衣笠大臣からの短いメッセージ。
『少し早いが始められるか?』
予定より早い。どうしよう。
こんなに気持ちよさそうに寝てるのを起こせないよ。
圭介さんに膝枕してる状態でテーブルの上のパソコンには手が届かない。
仕方がないので、手元に置いていた僕のスマホで直接メッセージを送ろう。
『ごめんなさい。いま圭介さんが眠っていて。午前のお仕事が大変だったみたいです。約束の14時には起こすつもりだったんですけど』
『構わないよ。そういうことなら寝かせておきなさい。圭君は休める時に休ませないと眠らないから』
『お昼寝をするのは珍しいけど、夜は普通に寝てますよ?』
『あんまり寝ない子だろう?』
あれ? 噛み合わない。
また僕の知らない圭介さんがいる。
『君と一緒に過ごすようになっていろいろ変わったようだね。彼は眠らない子だったんだよ』
『ショートスリーパーっていうやつですか?』
『そうだね。1日に3時間も寝たら長く寝たというくらいに』
そうだったんだ。
もしかして僕の睡眠リズムに無理して合わせてた?
いや、圭介さんのことだ。
真夜中に起きて僕の寝顔を見て過ごしていたな。
寝ている時の無防備な顔は誰にでも見られるものではない。
僕も今、圭介さんの寝顔がカワイイなって思って見てるし。
意外と寝てる姿は見ていて飽きないものだ。
でも、変な寝言とか聞かれてたらどうしよう。
よだれをたらした、だらしない寝顔とかも見られてたかも。
これからは別の部屋で寝るようにしようかな。
いまも別々に寝てるし、これからもそうすればいいだけ。
2
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男
湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです
いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です
閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
俺、メイド始めました
雨宮照
恋愛
ある日、とある理由でメイド喫茶に行った主人公・栄田瑛介は学校でバイトが禁止されているにもかかわらず、同級生の倉橋芽依がメイドとして働いていることを知ってしまう。
秘密を知られた倉橋は、瑛介をバックヤードに連れて行き……男の瑛介をメイドにしようとしてきた!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる