恋愛サティスファクション

くらげ

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初陣アプレンティス

せんせんサバイブ4

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毎朝新聞のデジタル版を読み終わった。
その間、静かに座っていた圭介さんを褒める。
ちゃんと待てられたの偉い。
出来たら褒めてあげるのは躾の基本だよね。
頭なでてあげる。
さあ、次は僕の質問に答えてくれるかな?

「圭介さん、これからいくつか質問をします。答えられない質問には答えられないと言ってもらって構わないので。真実だけを答えてください」

繰り返しのお願いになるけど嘘はつかないで。

「毎朝新聞の記事に書かれているように有識者会議で不真面目な態度や遅延行為を行いましたか?」
「会議は真面目に参加してる。提出した資料も唯に見せたよね? 泰葉さん達と考えて出した提案を俺は遅延行為とは思わない」
「女性支援のあり方。公金を適切に扱うための仕組み。どの提案も僕には正しく思えました」

正し過ぎたからLittle WOMANは圭介さんを無理矢理にバッシングしているんだろう。
金儲けの邪魔にしかならない圭介さんの提案を有識者会議で通すわけにいかなかった。

「それと売春についてですが圭介さんは売春に関わっていますか?」
「俺は売買春に直接関与してない。だけど兄貴が鞘間組傘下の小峠会会長してるだろ。そういう大きい枠組みで考えたら俺も関わってる」
「お義兄さんの仕事は関係ないんじゃ」
「俺がやってる人探し。ホストとかのツケ溜めて逃げた女も対象になるんだ。それで見つかったあと、その女がどうやって借金返すかっていうと。体売るのが手っ取り早い。つまり管理売春の手伝いを俺はしているよ」

お義兄さんに頼まれてしている人探しの仕事。
ヤクザから逃げている人の中にはホストにハマっちゃった子もいるのか。

「それはツケ払いで遊んだ女の子も悪いんじゃ」

お小遣いの範囲で遊べば良かったのに。

「絶対に払えないと分かっててツケを認める店側にも問題はあるよ」

払えない分は体で払えっていう漫画でよくあるヤクザな集金方法。

「何年か前にツケなしでどれぐらい稼げるか成瀬にやらせたけど。手間がかかるんだよね。ホストの太客になるのなんて依存症だからさ。判断力鈍らせてツケ積み上げてウリさせるのがセットなの。それを客の自我保って適切に遊びに来てねってやるのはすごく面倒なんだ。ある程度ホスト側にも理性が必要になって、マニュアル作っても守れない奴もいた」
「成瀬さんが学生時代にホストでバイトしてたのはそれですか」

圭介さんの考える適切なホストの経営を成瀬さんに実験させてた?

「そこまでやっても客が勝手に街金で借りてきたりカードローン組んだり、身の丈に合わない浪費をしちゃうんだよ」
「それでも借金の回収を店側がしなくてすむなら、ツケ払いよりそっちの方が良くないですか?」
「それはそうだけど。俺が出来る範囲で手を尽くして分かったのは、周りが止めてもホストをやめられない奴は救う価値なしってこと。落ちるとこまで落ちていくのを見てるしかない。彼女達に正しさは必要ない」

そう強く言い切る圭介さんは少し寂しそうだった。
亡くなったお母さんに似たものをホストにハマる女の子達に感じたのだろうか。

「虚しくなるだけだった」

圭介さんは優し過ぎるんだ。
あれもこれも助けようと手を伸ばして。
ハイスペックだから実際に手が届いちゃって。
でも支援は受ける側にも努力が必要。
受け身で何もかも助けてもらえるなんて都合が良いものじゃない。
支援する側のリソースだって有限だ。

僕が理想論でMOZUちゃんを助けたいって言った時にあれだけ頑なだったのも。
僕に同じ虚しさを覚えさせたくなかったから。
圭介さんはそれぐらいホスト依存の女の子達に向き合ってきたんだ。
僕は推しに貢いで捨てられたって話がTwitterのDMに届いても軽く返信してすぐに忘れたよ。

「俺も親父のこと言えない。青臭い理想を掲げて疎まれて。無駄に敵作って。唯に不便な生活強いて」
「そこまで分かってて。なんで言い返さないんですか? 言われっぱなしで平気なんですか?」
「平気じゃない。だけどこれ以上目立ったら俺は逮捕される。それは嫌だ。実名で新聞記事書かれるくらいで済むならそれでいい」
「やってもいないこと新聞に書かれるより、正しく逮捕されて罪を償うほうがずっとマシですよ」

今の状況。逮捕はされてないけど、やってもいない罪を被せられて冤罪じゃん。
それならせめて本当にやった犯罪、ハッキングとかで裁かれたほうがいい。
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