恋愛サティスファクション

初陣アプレンティス

こうとうレポート4

圭介さんの僕に対する思いは本物みたいで。
子供の頃から続く執着は根が深い。
それほどまでに僕を求めていたのに、見ているだけで我慢していたのは不思議。
疑問は残さず解消しておかないと。

「なんでここまでやってるのに、僕に会いに来なかったんですか？」

盗撮、盗聴、ハッキング。
やりたい放題なのに僕に直接なにかをすることはない。
ただ遠くから見てるだけ。

「小学生の頃は大人に言われて従うのも分かるんですけど。高校生くらいになった圭介さんが大人の言うことを素直に聞くとも思えないし」

圭介さんがしてるネットストーカーって制約のある行動なんだ。
その縛りのなかでやりたい放題した結果がこれ。

「鈴さんから言われた。会えば話したくなって、話せば触れたくなる。我慢できないなら最初から会うなって」

我慢できないって、おそらく性的なことについてだよな。

「唯はヘテロだから無理矢理事に及んでしまうと最悪自死するかもしれない。俺は唯が好きだけど、自分がまともじゃないことも分かってる。唯が死ぬのは嫌だから会わないって決めてた」

僕がゲイでも無理矢理は駄目なんだけど。
鈴村さんの説得で圭介さんはリアルにストーカーするのを我慢してくれていた。
それくらい強く駄目だと言えたのに盗撮とかは止められなかったの？
現実の被害を食い止めるために仕方なく許したって感じなのかな。

もしも学生の頃に圭介さんと会っていたら。
きっと自然に僕達の出会いを演出して、僕は大人な圭介さんに惚れていただろう。
それを思い留まったのは僕が異性愛者だと思っていたから。

だけどそれだと歌舞伎町のママの店に僕が通い始めて、圭介さんと会うまでのタイムラグが謎だな。
あそこはオカマなママのやっているビアバー。
インスタでゲイが集まる店を探した時に見つけたお店。
異性愛者であることがネックだったとしても、同性愛者だと分かった時点で対応は変わるはず。
圭介さんと会ったのは僕がバーに通い始めてから半年ぐらい経ってからだよな？

「僕がバーに通うようになったらゲイだって分かりますよね？ ママにも彼氏募集中って相談してたし。それなのに僕達が会ったのは12月。どうしてそんなに時間があいたんですか？」

僕、ひとりで飲むの寂しかったんだよ。
ずっと好きだったと言うならすぐに迎えに来てくれたら良かったのに。
散々ストーカーをしておいて、いざとなったら尻込みするなんて。
不満に思ったのが玲司君に伝わったのか、小さく鼻で笑われた。
笑いたければ勝手に笑え。

「新しい情報与えられたら解析する時間は必要だし」
「解析？」

圭介さんの答えって言葉のチョイスに癖があるなぁ。
僕のことを理解するのに必要な時間ってこと？

「それまでの唯の行動を全部調べ直してたら時間かかった。ヘテロだと思っていたのをゲイなんだって視点で見直すと新しい発見もたくさんあったから。その中で唯の好みも把握して、ファッションやヘアスタイルも変えたよ」
「観察したら好みまで分かるものなんですか？」

僕は過去の片思いについて、壁やんに話すまで誰にも話したことない。
友達とする恋愛トークは適当な女優の名前出して誤魔化したし。
圭介さんのクラシカルなトラッドファッションやナチュラルなオールバックのヘアスタイルがその研究の成果だとしても。
どうやって分かったの？ 僕の好みを僕以上に理解し過ぎてる。