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初陣アプレンティス
ふれんどハイシン5
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屋敷に戻ると広いお座敷に今日のお祝いの席が用意されていた。
座卓の上には大きな寿司桶。オードブルの盛り合わせ。
それに吉野さんも一緒に座ってくれてる。
「今日は吉野さんも一緒にご飯食べられるんですね」
いつも僕達の食事の支度をするからとキッチンにいる吉野さんが今日は一緒にご飯を食べられる。
ずっと気になっていたんだ。
吉野さんだけ後から一人でキッチンにあるテーブルでご飯を食べているの。
その方が楽だからと説明されて、何も言えなくなっちゃった。
だけど今日は屋敷にいるみんなで一緒に食べられるような形に用意してくれた。凄く嬉しい。
「吉野さんは何を飲みますか? とりあえずビールですか?」
成瀬さんが冷蔵庫から冷えた瓶ビールを数本持ってきてくれたから。
乾杯はビールなのかなって思ったんだけど。
「自分は弱いので」
吉野さんはお酒に弱いらしくてお茶にするみたい。
僕もお茶かな。
「サクちゃんは飲まんのか?」
「飲みたいけど」
お義父さんが栓を開けたビール瓶を僕の方に向けてくるけど。
退院してから怪我に良くない気がしてお酒は控えてるんだ。
「少しぐらいええだろー。なぁ二上」
「飲み過ぎなければ大丈夫でしょう」
二上さんの許可が降りたので。ありがたくお義父さんにお酌をしてもらう。
お返しに僕も注ぐね。
それでは皆様、カンパーイ。
ひと仕事終えたあとのビールって最高。
吉野さんのお寿司も美味しい。
今日の主役は僕だから好きなものを食べていいと言われたのでサーモンは全て僕のものだ。
って他のものも食べたいから玲司君も一緒にサーモン食べよ。
オードブルのエビフライをもぐもぐしてたら。
冷たいものばっかりなのも味気ないと、お義父さんが言い出した。
それを聞いた圭介さんがホットプレートを用意する。
焼きそばでも作るのかと思ったら。
「チーズフォンデュしよー。唯好きでしょ?」
「うん。すきー」
チーズが良い感じに溶けるのを見守りながら枝豆を食べて待機。
圭介さんって本当に器用だよな。
料理の手際で分かる。あっという間に出来ちゃった。
トロリとしたクリームイエローのチーズが鮮やかな橙色のニンジンにからむ。
「熱いから気をつけて」
圭介さんがフォークに刺したニンジンを渡そうとしてくれてるけど。受け取りたくないな。
今日の僕はもう疲れたから箸すら持てない。食べさせて欲しい。
あーんと大きな口を開けて待ってたら、圭介さんがフーフーして食べさせてくれた。
これはいい。楽チンで美味しい。素晴らしい。
ねえねえ。玲司君はここ座って。
この前みたいに僕が膝に座るから。
今日は玲司君の膝が僕の席ね。
だって今日の主役は僕だもん。
一番良い席に座るんだ。
圭介さんにミニトマトとパプリカを続けて食べさせてもらっていたら。
お義父さんがチーズフォンデュに合うというお酒を用意してくれた。
「これとかどうだ? 冷でいけ」
勧められたのは辛口の日本酒。
普段あまり辛口のお酒は飲まないんだけど。
チーズのまろやかさと野菜の甘さが引き立つキリッとした飲み口。
「おいしー」
「そうだろー」
思わず美味しいと叫んでしまった僕にお義父さんはニコニコと他の酒も良いぞと酒瓶を出してくる。
ウイスキーやブランデー、自家製梅酒。
小さなグラスに少しずつ注いで僕の前に並べられた。
こうやって飲み比べるのははじめて。
唇を湿らせる程度。順番に舐めてみる。
いつもチーズフォンデュのときはワインやシャンパンを飲んでいたから新鮮だ。
「これが好きです」
たくさん並んだ琥珀色の中で赤みがかった色のお酒を選んだら、お義父さんが面白いと笑った。
駄目だった? 僕の好み変?
「これは鈴さんが味醂で漬けた梅酒だよー」
圭介さんが僕が好きだと言ったお酒について教えてくれた。
「梅酒にもいろんな種類があるんですね」
手の中の小さな硝子のグラスを光にかざす。
味醂って料理に使うものじゃないの?
こうやって飲めるんだ。知らなかった。
「来年は僕も梅酒を作ってみようかな」
お婆ちゃんが梅酒を作る時は梅のヘタを取るのを手伝ってたんだよ。
梅干しの土用干しをひっくり返すのは僕の仕事だった。
懐かしいなぁ。あの塩っ辛い梅干しはもう食べられないんだ。
お爺ちゃんのお米とお婆ちゃんの梅干しで作ったおにぎり。もう一度食べたい。
「佐倉さん、お誕生日おめでとうございます。ケーキもありますよ。食べられそうですか?」
黄金色の田んぼを見ながら食べた新米のおにぎりを思い出してしんみりしていたら。
成瀬さんが大きな白い箱を持ってきた。
「甘いものは別腹だから大丈夫!」
誕生日のお祝いにと出されたのはツヤツヤと輝く黄緑が目にも鮮やかなメロンのショートケーキだった。
2と5の数字のロウソクに火がつけられ目の前に置かれる。
ハッピーバースディソングを歌ってもらって。
歌の終わり。僕の呼び方がみんなバラバラなのが面白くて。
笑いながらロウソクを吹き消した。
鈴村さんの梅酒を飲みながら。メロンのショートケーキを頬張って。
口元に付いたクリームは圭介さんに拭いてもらう。
玲司君とホットプレートで焼いたお肉を食べて。
お腹いっぱい。もう食べられないよ。
あー。たのしい。おいしい。しあわせだあ。きもちがふわふわする。
このままずっと。こうしていたい……。
座卓の上には大きな寿司桶。オードブルの盛り合わせ。
それに吉野さんも一緒に座ってくれてる。
「今日は吉野さんも一緒にご飯食べられるんですね」
いつも僕達の食事の支度をするからとキッチンにいる吉野さんが今日は一緒にご飯を食べられる。
ずっと気になっていたんだ。
吉野さんだけ後から一人でキッチンにあるテーブルでご飯を食べているの。
その方が楽だからと説明されて、何も言えなくなっちゃった。
だけど今日は屋敷にいるみんなで一緒に食べられるような形に用意してくれた。凄く嬉しい。
「吉野さんは何を飲みますか? とりあえずビールですか?」
成瀬さんが冷蔵庫から冷えた瓶ビールを数本持ってきてくれたから。
乾杯はビールなのかなって思ったんだけど。
「自分は弱いので」
吉野さんはお酒に弱いらしくてお茶にするみたい。
僕もお茶かな。
「サクちゃんは飲まんのか?」
「飲みたいけど」
お義父さんが栓を開けたビール瓶を僕の方に向けてくるけど。
退院してから怪我に良くない気がしてお酒は控えてるんだ。
「少しぐらいええだろー。なぁ二上」
「飲み過ぎなければ大丈夫でしょう」
二上さんの許可が降りたので。ありがたくお義父さんにお酌をしてもらう。
お返しに僕も注ぐね。
それでは皆様、カンパーイ。
ひと仕事終えたあとのビールって最高。
吉野さんのお寿司も美味しい。
今日の主役は僕だから好きなものを食べていいと言われたのでサーモンは全て僕のものだ。
って他のものも食べたいから玲司君も一緒にサーモン食べよ。
オードブルのエビフライをもぐもぐしてたら。
冷たいものばっかりなのも味気ないと、お義父さんが言い出した。
それを聞いた圭介さんがホットプレートを用意する。
焼きそばでも作るのかと思ったら。
「チーズフォンデュしよー。唯好きでしょ?」
「うん。すきー」
チーズが良い感じに溶けるのを見守りながら枝豆を食べて待機。
圭介さんって本当に器用だよな。
料理の手際で分かる。あっという間に出来ちゃった。
トロリとしたクリームイエローのチーズが鮮やかな橙色のニンジンにからむ。
「熱いから気をつけて」
圭介さんがフォークに刺したニンジンを渡そうとしてくれてるけど。受け取りたくないな。
今日の僕はもう疲れたから箸すら持てない。食べさせて欲しい。
あーんと大きな口を開けて待ってたら、圭介さんがフーフーして食べさせてくれた。
これはいい。楽チンで美味しい。素晴らしい。
ねえねえ。玲司君はここ座って。
この前みたいに僕が膝に座るから。
今日は玲司君の膝が僕の席ね。
だって今日の主役は僕だもん。
一番良い席に座るんだ。
圭介さんにミニトマトとパプリカを続けて食べさせてもらっていたら。
お義父さんがチーズフォンデュに合うというお酒を用意してくれた。
「これとかどうだ? 冷でいけ」
勧められたのは辛口の日本酒。
普段あまり辛口のお酒は飲まないんだけど。
チーズのまろやかさと野菜の甘さが引き立つキリッとした飲み口。
「おいしー」
「そうだろー」
思わず美味しいと叫んでしまった僕にお義父さんはニコニコと他の酒も良いぞと酒瓶を出してくる。
ウイスキーやブランデー、自家製梅酒。
小さなグラスに少しずつ注いで僕の前に並べられた。
こうやって飲み比べるのははじめて。
唇を湿らせる程度。順番に舐めてみる。
いつもチーズフォンデュのときはワインやシャンパンを飲んでいたから新鮮だ。
「これが好きです」
たくさん並んだ琥珀色の中で赤みがかった色のお酒を選んだら、お義父さんが面白いと笑った。
駄目だった? 僕の好み変?
「これは鈴さんが味醂で漬けた梅酒だよー」
圭介さんが僕が好きだと言ったお酒について教えてくれた。
「梅酒にもいろんな種類があるんですね」
手の中の小さな硝子のグラスを光にかざす。
味醂って料理に使うものじゃないの?
こうやって飲めるんだ。知らなかった。
「来年は僕も梅酒を作ってみようかな」
お婆ちゃんが梅酒を作る時は梅のヘタを取るのを手伝ってたんだよ。
梅干しの土用干しをひっくり返すのは僕の仕事だった。
懐かしいなぁ。あの塩っ辛い梅干しはもう食べられないんだ。
お爺ちゃんのお米とお婆ちゃんの梅干しで作ったおにぎり。もう一度食べたい。
「佐倉さん、お誕生日おめでとうございます。ケーキもありますよ。食べられそうですか?」
黄金色の田んぼを見ながら食べた新米のおにぎりを思い出してしんみりしていたら。
成瀬さんが大きな白い箱を持ってきた。
「甘いものは別腹だから大丈夫!」
誕生日のお祝いにと出されたのはツヤツヤと輝く黄緑が目にも鮮やかなメロンのショートケーキだった。
2と5の数字のロウソクに火がつけられ目の前に置かれる。
ハッピーバースディソングを歌ってもらって。
歌の終わり。僕の呼び方がみんなバラバラなのが面白くて。
笑いながらロウソクを吹き消した。
鈴村さんの梅酒を飲みながら。メロンのショートケーキを頬張って。
口元に付いたクリームは圭介さんに拭いてもらう。
玲司君とホットプレートで焼いたお肉を食べて。
お腹いっぱい。もう食べられないよ。
あー。たのしい。おいしい。しあわせだあ。きもちがふわふわする。
このままずっと。こうしていたい……。
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