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初陣アプレンティス
フェーズいこう1
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断続的な爆発音。
横転したミニバンから漏れたガソリンに引火したために起きた火災は何台もの消防車によって懸命な消火活動が行われている。
僕は離れた場所から、それを見ているしかできなかった。
へなへなと腰が抜けて歩道の片隅に座り込んだ僕を染井さんが支えてくれる。
「怪我人はどちらに?」
救急隊員さんが慌てた様子で走ってきた。
消火活動を優先するために救急車は少し離れたところに止めてあるのかな。
「こっちや。この子が頭打っとる。他にも身体も痛めとるかもしれん」
染井さんの言葉に救急隊員さんの雰囲気がピリついた。
やっぱり頭打っちゃうとそうなりますよね。
心配してくれるのはありがたいんですけど、僕全然平気なんですよ。
車が燃えてるせいで派手な事故のように見えますが、シートベルトのお陰で僕は軽くぶつけただけ。
とっても軽傷です。
大丈夫だと話しているのに、救急隊員さんはテキパキと僕の全身を確認する。
そして首にコルセットを巻き、担架に乗せて、身体が揺れないようにとテープで固定された。
誰も僕の話を聞いてくれない。
でも名前や年齢は何度も聞かれる。
「佐倉唯です。大佐の佐、米倉の倉、唯我独尊の唯。平成10年7月23日生まれの24歳。男です」
男って答えてるのに、何度も性別を復唱される。ちょっと迷わないで。
僕は心身共に男ですから。
紛らわしい名前でごめんなさい。
規制線に張られたトラテープをくぐるように僕の担架が運ばれる。
無数のスマホが向けられるけど、体を動かせなくされているから顔を隠すこともできない。
不快感だけが溜まる。
勝手に僕を撮らないで。
繁華街の大通りでの交通事故。
夜の街に遊びに来た人達が興味本位で集まってきてるんだ。
僕の処置に並行して染井さんももう1台の救急車の中で問診を受けているらしい。
染井さんも腕や足にアザが出来ているというので救急車で運ばれることになった。
救急隊員さん達が夜間救急で対応ができる搬送先を探してくれる。
いくつもの候補の中から僕達はここから近い尾張大学病院に搬送されることが決まった。
行き先が決まれば即走り出す救急車。
車内で血圧測ったりあれこれ処置が始まって。
僕は成されるがままに頭や顔、体のアチコチを触られてその度に痛くないと何度も答えた。
「この痣で痛くないのは逆に気になりますね。骨に異常はなさそうだけど」
救急隊員さんが膝に出来た痣に触れて難しい顔をしている。
痣が目立つだけでそんなに重症じゃないんですよ。
痛くないから痛くないって言ってるのに。
余計に心配されちゃうのはなんで?
長い一日がようやく終わるっていうのに僕はなにをやってんだろう。
車の火は無事に消えたのかな。
身体も頭も動かしちゃいけないって言われたから、救急車の天井を見てるしかできない。
爆発してたけど、消防士さん達や集まってきていた野次馬の皆さんは怪我をしていないと良いな。
そんなことを思っていたら病院に到着して。
先に降りた救急隊員さんが病院の人達に僕の状態を伝えてくれる。
お手間おかけしてすみません。
最小限の揺れに抑えるように細心の注意を払って救急車から降ろされた。
救急車の担架から病院のベットにスライドするように移される。
ここで救急車は帰るみたい。
救急隊員の皆さん、本当にありがとうございました。
病院の救急の先生達もお騒がせしてごめんなさい。
とにかく僕はどこも痛くないし平気なので。
すぐに帰りますから。お気になさらずに。
横転したミニバンから漏れたガソリンに引火したために起きた火災は何台もの消防車によって懸命な消火活動が行われている。
僕は離れた場所から、それを見ているしかできなかった。
へなへなと腰が抜けて歩道の片隅に座り込んだ僕を染井さんが支えてくれる。
「怪我人はどちらに?」
救急隊員さんが慌てた様子で走ってきた。
消火活動を優先するために救急車は少し離れたところに止めてあるのかな。
「こっちや。この子が頭打っとる。他にも身体も痛めとるかもしれん」
染井さんの言葉に救急隊員さんの雰囲気がピリついた。
やっぱり頭打っちゃうとそうなりますよね。
心配してくれるのはありがたいんですけど、僕全然平気なんですよ。
車が燃えてるせいで派手な事故のように見えますが、シートベルトのお陰で僕は軽くぶつけただけ。
とっても軽傷です。
大丈夫だと話しているのに、救急隊員さんはテキパキと僕の全身を確認する。
そして首にコルセットを巻き、担架に乗せて、身体が揺れないようにとテープで固定された。
誰も僕の話を聞いてくれない。
でも名前や年齢は何度も聞かれる。
「佐倉唯です。大佐の佐、米倉の倉、唯我独尊の唯。平成10年7月23日生まれの24歳。男です」
男って答えてるのに、何度も性別を復唱される。ちょっと迷わないで。
僕は心身共に男ですから。
紛らわしい名前でごめんなさい。
規制線に張られたトラテープをくぐるように僕の担架が運ばれる。
無数のスマホが向けられるけど、体を動かせなくされているから顔を隠すこともできない。
不快感だけが溜まる。
勝手に僕を撮らないで。
繁華街の大通りでの交通事故。
夜の街に遊びに来た人達が興味本位で集まってきてるんだ。
僕の処置に並行して染井さんももう1台の救急車の中で問診を受けているらしい。
染井さんも腕や足にアザが出来ているというので救急車で運ばれることになった。
救急隊員さん達が夜間救急で対応ができる搬送先を探してくれる。
いくつもの候補の中から僕達はここから近い尾張大学病院に搬送されることが決まった。
行き先が決まれば即走り出す救急車。
車内で血圧測ったりあれこれ処置が始まって。
僕は成されるがままに頭や顔、体のアチコチを触られてその度に痛くないと何度も答えた。
「この痣で痛くないのは逆に気になりますね。骨に異常はなさそうだけど」
救急隊員さんが膝に出来た痣に触れて難しい顔をしている。
痣が目立つだけでそんなに重症じゃないんですよ。
痛くないから痛くないって言ってるのに。
余計に心配されちゃうのはなんで?
長い一日がようやく終わるっていうのに僕はなにをやってんだろう。
車の火は無事に消えたのかな。
身体も頭も動かしちゃいけないって言われたから、救急車の天井を見てるしかできない。
爆発してたけど、消防士さん達や集まってきていた野次馬の皆さんは怪我をしていないと良いな。
そんなことを思っていたら病院に到着して。
先に降りた救急隊員さんが病院の人達に僕の状態を伝えてくれる。
お手間おかけしてすみません。
最小限の揺れに抑えるように細心の注意を払って救急車から降ろされた。
救急車の担架から病院のベットにスライドするように移される。
ここで救急車は帰るみたい。
救急隊員の皆さん、本当にありがとうございました。
病院の救急の先生達もお騒がせしてごめんなさい。
とにかく僕はどこも痛くないし平気なので。
すぐに帰りますから。お気になさらずに。
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