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可視化ライブラリ
ろうサルベージ5
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ひとこと言い返してやろうと振り返ったところで、押さえつけるようにタオルで包まれた。
頭からすっぽりとタオルをフードのようにかぶされて視界が遮られる。
目の前の白さに根源的な恐怖が湧いて。両手を闇雲に振り回したのが悪かったのか。
「だから暴れるなって。ケガすんだろ」
あっという間に組み敷かれて、僕はリビングの床に頬を擦らせていた。
何でこんなに人を押さえつけるのに手馴れているの?
過去にこうやって無理やり押し倒した経験を繰り返していなきゃ出来ない手際の良さ。
やってることが全然ヒーローじゃない。もはやヴィラン。荒事に慣れた悪役。
「圭にはオレからきつく言っとくから。佐倉が怒ってる理由も説明するし。アイツそれで納得するか知らねぇけど、やっちゃいけないコトだって理解はするだろうから。それで許してくれ」
まるで自分は悪くないかのように言っている。
でも僕は君にも怒っているんだよ。
「僕は君にも幻滅してるんだよ。ヒーローになって守ってくれるって言ったのに。僕のプライバシーを守ってはくれなかった。うそつきじゃないか」
似非ヒーローはお断り。
僕はもう君を信じない。
とにかく離せと暴れるのに経験値と体格差で負けてしまう。
それでもバタバタとみっともなく足掻いていた。
そこに呆れた様子の声がしたんだ。
「何をやっているのかな?」
仕事から帰ってきた鈴村さんがリビングの床でもみ合う僕らを見下ろしてきた。
「若い君達がひとつ屋根の下で過ごしていてお盛んになるのは理解できるよ。 でもね、今は我慢してくれるかな? ちょっと問題が起きてしまってね。悪いけどすぐに服を着てくれるかい」
僕達がSEXをはじめているように見えるの?
それはとても失礼な勘違いですよ。
ムッとしてつい言い返してしまった。
「嫌です」
「君、盛ると見境無くなるタイプかい? 意外だね。それなら今度私も付き合ってあげるから。今は大人しく服を着てくれ」
僕だって好き好んで裸のままでいるわけじゃない。
普通にお風呂上がりに体を拭いて服を着たかった。
それを妨害してるのはあなたの養い子達なのだけど。
「あなたに服を着ろと言われる筋合いはないでしょう」
母親面するんじゃない。
魔女見習いはビジネス親子だろ。
母親なんて言ったところで所詮は嘘の間柄。
「僕に服なんて不要なんですよ。隠しておきたいものは全て暴かれるんだから」
もう僕はヒトですらない。
四六時中カメラで録られて観察される動物園のケモノや愛玩用のペットみたいな存在なんだ。
起床から就寝まで。食事内容。余暇の過ごし方。交尾の有無まで記録される。そんな動物。
「先に僕の自由に干渉して、尊厳を奪い、踏みにじったのは誰?」
あなた達だ。
「服を着せたいのなら殴ってでも言うことを聞かせたらいいじゃん。僕は暴力に慣れていないから数発殴られでもしたら大人しくなるでしょうね。簡単に脅しに屈するよ」
別に虚勢を張る気はない。
僕が荒事に弱いことは事実だ。
今だって身体の一部を的確に押さえられているせいで玲司君の下から逃げ出せないでいる。
力の使い方を知らない僕は闇雲に暴れて無駄に体力を削っているだけ。
「だけど、そんなことをされたら僕は絶対に忘れないでしょうね」
肉体は好きにしたらいい。
こんなものただの器だ。
傷付けられても治せばいい。
跡が残ってもかまわない。
でも心だけは守らなきゃいけない。
最後の砦をゆるしてはいけないんだ。
心の傷跡はどれだけ時間が経っても時折顔をのぞかせて疼くから。
「佐倉は20年前の事件のこと知ったばっかりなんだよ。頼むからこれ以上刺激すんな。今夜はもう休ませてやろうぜ。圭もバグってフリーズしてるし。面倒事は明日でいいだろ?」
似非ヒーローが僕の可哀想な事情を説明してくれる。
そうだね。僕には休息が必要だ。
誰にも干渉されない檻でも用意してくれるのかな?
頭からすっぽりとタオルをフードのようにかぶされて視界が遮られる。
目の前の白さに根源的な恐怖が湧いて。両手を闇雲に振り回したのが悪かったのか。
「だから暴れるなって。ケガすんだろ」
あっという間に組み敷かれて、僕はリビングの床に頬を擦らせていた。
何でこんなに人を押さえつけるのに手馴れているの?
過去にこうやって無理やり押し倒した経験を繰り返していなきゃ出来ない手際の良さ。
やってることが全然ヒーローじゃない。もはやヴィラン。荒事に慣れた悪役。
「圭にはオレからきつく言っとくから。佐倉が怒ってる理由も説明するし。アイツそれで納得するか知らねぇけど、やっちゃいけないコトだって理解はするだろうから。それで許してくれ」
まるで自分は悪くないかのように言っている。
でも僕は君にも怒っているんだよ。
「僕は君にも幻滅してるんだよ。ヒーローになって守ってくれるって言ったのに。僕のプライバシーを守ってはくれなかった。うそつきじゃないか」
似非ヒーローはお断り。
僕はもう君を信じない。
とにかく離せと暴れるのに経験値と体格差で負けてしまう。
それでもバタバタとみっともなく足掻いていた。
そこに呆れた様子の声がしたんだ。
「何をやっているのかな?」
仕事から帰ってきた鈴村さんがリビングの床でもみ合う僕らを見下ろしてきた。
「若い君達がひとつ屋根の下で過ごしていてお盛んになるのは理解できるよ。 でもね、今は我慢してくれるかな? ちょっと問題が起きてしまってね。悪いけどすぐに服を着てくれるかい」
僕達がSEXをはじめているように見えるの?
それはとても失礼な勘違いですよ。
ムッとしてつい言い返してしまった。
「嫌です」
「君、盛ると見境無くなるタイプかい? 意外だね。それなら今度私も付き合ってあげるから。今は大人しく服を着てくれ」
僕だって好き好んで裸のままでいるわけじゃない。
普通にお風呂上がりに体を拭いて服を着たかった。
それを妨害してるのはあなたの養い子達なのだけど。
「あなたに服を着ろと言われる筋合いはないでしょう」
母親面するんじゃない。
魔女見習いはビジネス親子だろ。
母親なんて言ったところで所詮は嘘の間柄。
「僕に服なんて不要なんですよ。隠しておきたいものは全て暴かれるんだから」
もう僕はヒトですらない。
四六時中カメラで録られて観察される動物園のケモノや愛玩用のペットみたいな存在なんだ。
起床から就寝まで。食事内容。余暇の過ごし方。交尾の有無まで記録される。そんな動物。
「先に僕の自由に干渉して、尊厳を奪い、踏みにじったのは誰?」
あなた達だ。
「服を着せたいのなら殴ってでも言うことを聞かせたらいいじゃん。僕は暴力に慣れていないから数発殴られでもしたら大人しくなるでしょうね。簡単に脅しに屈するよ」
別に虚勢を張る気はない。
僕が荒事に弱いことは事実だ。
今だって身体の一部を的確に押さえられているせいで玲司君の下から逃げ出せないでいる。
力の使い方を知らない僕は闇雲に暴れて無駄に体力を削っているだけ。
「だけど、そんなことをされたら僕は絶対に忘れないでしょうね」
肉体は好きにしたらいい。
こんなものただの器だ。
傷付けられても治せばいい。
跡が残ってもかまわない。
でも心だけは守らなきゃいけない。
最後の砦をゆるしてはいけないんだ。
心の傷跡はどれだけ時間が経っても時折顔をのぞかせて疼くから。
「佐倉は20年前の事件のこと知ったばっかりなんだよ。頼むからこれ以上刺激すんな。今夜はもう休ませてやろうぜ。圭もバグってフリーズしてるし。面倒事は明日でいいだろ?」
似非ヒーローが僕の可哀想な事情を説明してくれる。
そうだね。僕には休息が必要だ。
誰にも干渉されない檻でも用意してくれるのかな?
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