恋愛サティスファクション

可視化ライブラリ

ライこうかい6

大学時代がアリなら高校も。
だって僕テレビに出てるし。
春の選抜高校野球は全国放送されているからね。
僕は記録員としてベンチに入れてもらえたからテレビに何度か写ってる。

やっぱりテレビの効果はすごいよ。
選抜でてから学校に届くファンレターの数が激増したもん。
ファンレターのふりをして他校のファンから心無い中傷の手紙も届いたから、中身を先生達がチェックして選手に渡していたけど。
とくにイケメンバッテリーとしてメディアに紹介されたピッチャーの平間君とキャッチャーの住吉君はファンレターの量が半端なかった。

僕にはあの時一通も手紙が届いてないけど。
圭介さんがリアルタイムで僕を見つけたとは限らない。
何年か後にまとめられたヒストリーで僕を知ったのかもしれない。
高校野球の映像なんてフリー素材扱いだ。
さすがに高校時代から思われていたら怖い。
約10年のストーカーとかヤバい以外ない。

ヤバさはさらに上がるけど、中学の時も全国大会の結果は報道されているし圭介さんがそれを見たかもしれない。
中学生と大学生。
年の差は変わらないのに社会人同士の時より若干の犯罪感がするの不思議。
中学生っていう響きが駄目なのかな。

それより前、小学生の頃の僕と圭介さんが出会う可能性はあるのか？

僕が住んでいた川崎市と圭介さんが通っていた学校のある世田谷区。
河を挟んだ隣同士。電車で繋がっている。
二子玉川の109シネマズにはお祖父ちゃんがよく映画を見に連れていってくれた。
大きくなってからはひとりで見に行くようになったし。
その時にすれ違うことはあったかもしれない。

僕は何も覚えていないけど話したりしたのかも？
ひとりで映画を見に行くと、ときどき声をかけられることがあるから。
映画好き同士で話をしたくなる人も多いらしい。

でも圭介さんは映画に興味無い感じなんだよな。
映画館デートもしてくれるけど見る映画はだいたい僕が決めている。

映画館じゃないとすると。中学受験の為に通っていた塾？
学生バイトの先生もいたし。
でも当時の圭介さんは中学生から高校生。
学校と習い事、さらには栞奈ちゃんの事で忙しかったから。
アルバイトをする時間なんてないだろう。
お義父さんから必要なお金は渡されていただろうからバイトをする必要もない。

まさか。
僕は取り違えられた子供だったとか？
人工授精で生まれている僕は本当は違う両親から生まれるはずだった。
それを病院で受精卵の取り違えがあって、誤った母親から生まれていたとして。
それがどう圭介さんに結び付くんだ？

そもそも僕は死んだお祖母ちゃんに瓜二つだし。
お祖父ちゃんがお仏壇に飾ってる写真を見ながら生前のお祖母ちゃんのことを話してくれたから。
僕が産まれる前に死んじゃって会ったことないけど、お祖母ちゃんのこと好きだったもん。
僕が取り違えられた子供なわけないか。
映画じゃあるまいし、もう少し現実的な予想をしよう。

やっぱり街中で見掛けてストーキング説とミスコン説、あとは甲子園で見られてた説の3つが有力候補かな。
他はあんまりピンと来ないし。

だとしても、ここから絞り込む方法は？
圭介さんに聞いても嘘つくかもだし。
そうだ。玲司君に聞いてみよう。

「玲司君、僕達が初めて出会ったのはPMDのショップイベントだけど。その前から僕のことを圭介さんから聞いたりしてた？」

答えたくありませんって顔に書いてあるけど。
答えてくれるまで僕は玲司君の膝の上に居座る気でいるからね。
玲司君が大きく息を吐いた。

「聞いてたよ。嫌ってほど」
「どんなこと言ってたの？」
「何食ってたとか。どんな服着てたとか。今日も可愛いとか。そんなだよ」

それはとってもストーカーなのでは？
やはり。圭介さんは僕のストーカーか。
じゃあいつから？

「それっていつぐらいの話かな？ もしかして何年も前からとか？」

僕の人生をどこまで遡ればいい？
ここまできたら高校生の頃から思われていたと言われても受け入れるから。
お願い。嘘だけはつかないで。

どれだけ待っても玲司君は何も答えてくれなくて。
回答は沈黙。
答え合わせが出来ないまま。
これじゃ埒が明かないよ。