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くらげ

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ぼくらのプロフィール5

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馴れ初めエピソードはムービーに必要だけど。
玲司君のプロフィール用の写真がまったく無いのも駄目だ。

そういえば、昨日のお義父さんからもらったアルバム。
圭介さんの青いアルバムは見たけど、もう1冊のオレンジのアルバムはまだ見てない。
もしかしたら。あれは。

玲司君の膝の上から立ち上がって、ゲストルームのすみっこに作った僕の荷物コーナーからオレンジ色のアルバムを取ってくる。
そしてまた玲司君の膝にすとんと戻ったら。

「これきっと玲司君のアルバムだよ」

お義父さん、玲司君のことも大好きだもん。
ちゃんと写真を残してくれてるよ。

表紙をめくった1ページ目。
そこには西友のチラシが1枚。
あれ? 玲司君のアルバムじゃない。がっかりだ。
だけど玲司君にはとても思い入れがあるチラシだったみたい。

「なんでこんなもん残してんだよ。親父っさんバカじゃね。ウソだろ。キモっ」

めっちゃ悪口。でも本当に怒ってるわけじゃなくて。照れ隠しで口が悪くなってるだけ。
このチラシ、玲司君にとっては恥ずかしいものなの?
そう考えてよくよく見てみれば。
子供服のセールを伝える写真のモデルが玲司君!

「わあっ! かっこいい! これってもしかして玲司君のキッズモデル時代? すごい! お宝グッズだ!」
「お宝じゃなくてゴミだろ。マジで捨てとけよ。緊張で顔ひきつってんじゃん。へたくそすぎる」
「えー。そうかな。すごくカッコイイよ。無表情なのもクールで。ねえねえ。これって初めてのお仕事?」

アルバムの1ページ目に残すってそういうことだよね?

「ああ。鈴村の仕事についてったら、その場の流れで服着て撮ることになって」
「じゃあ本当にこれが玲司君のモデルデビューのお仕事なんだ」
「デビューっていうほど立派なもんでもねえし。コネだから褒められたもんじゃねえよ」
「スタートがコネだとしても今の玲司君の活躍は玲司君の実力だよ」

僕、玲司君のRoi君モード大好きだよ。
雰囲気があって洋服をより素敵に見せてくれるから。
玲司君は骨格が西洋的で均整のとれた筋肉があって、一般的な細身のモデルとは違う魅力がある。
野性味溢れるワイルドな色気。
それは持って生まれた天性の才能だから。
僕は玲司君がモデルしてるの天職だと思うもん。
本人は片手間の副業って扱いだけど。

アルバムの2ページ目からはモデルのお仕事のオフショット。
雑誌のお仕事かな?
女の子と一緒に写ってるのもある。
玲司君はモテたんだろうな。
こんなにカッコよくてモテないはずがない。

この頃はゴシックな皇子様ではなく普通のファッション誌のお仕事。
キッズモデルとして活躍していたみたい。
卒業式用のスーツを着て休憩時間にコーラ片手にポテトチップスを食べている。

リラックスした様子でフォーマルスーツを着た子供玲司君いい。
サッカーユニフォーム風のカジュアルウェアを着ている姿もいい。
玲司君がカッコ良すぎて僕の語彙力が消失しちゃう。

「オレは昔からカッコイイだろ」
「うんっ。この頃の写真もムービーに使おうよ。みんなに玲司君のカッコいいところを見てもらお」

これを僕だけが楽しむのはイケメン独占禁止法で捕まっちゃう。
カッコいいものはみんなで共有するべきだ。

アルバムのページをめくると今度はプライベートの玲司君。
お肉食べてる写真ばっかり。
バーベキュー。すき焼き。しゃぶしゃぶ。
あの、目の前のお皿にお肉しか入ってないんだけど。野菜も食べさせないと。
玲司君が野菜を食べないのは子供の頃の食習慣のせいでは?
鈴村さんは親代わりに育てることにしたなら野菜も食べるように指導しなきゃ。

でもすごく美味しそうに食べてるから。
ついついお肉食べさせちゃったのも仕方ない?
こんなにニコニコ食べてたら、どんどん食べてって追加のお肉も焼いてしまうかも。
僕もつい甘やかしてお肉食べさせちゃうからな。気をつけよ。

次はどんな写真だろう。
アルバムのページをめくるのが楽しくて。ワクワクが止まらない。

「これって。洋服を作っているところ?」

布を手にして、ちょっと眉間に皺を寄せてる玲司君。
カメラを向けられるのが嫌なのか。不満気な顔をしてる。

「そうだな。モデルの仕事してないときはだいたい服作って暇つぶしてたし、その時のだろ。つまんねえ写真撮りやがって。これ撮ったの鈴村だな」
「つまらなくないよ。これも玲司君の大事な思い出だ。でも、この写真の頃ってまだ中学生くらいじゃないの? 学校は?」

さっきからプライベートな写真ばかりで学校で撮ったものがない。
普通なら修学旅行とか卒業式とかの写真くらい残ってない?

「オレ、施設出てからは学校行ってねえぞ。義務教育だっていうんで、一応の籍はあったらしいけど面倒で行かなかった」

不登校の理由が面倒だからって。それでいいの?

「今思うと学校行ってた方がぜってぇラクだったな。家にいたら鈴村にあれやれこれやれって押し付けられて、サボると飯抜きだし」

鈴村さんの直接指導。絶対スパルタ。
働かざる者食うべからずって言って本当にご飯抜きにしそうだし。
それは学校の勉強のが楽だったっていうのも頷ける。

「それでも、なんか無理だったんだよな。行ってみたこともあるけど、たるくて。なんていうの。時間無駄じゃね。他の誰かを待って、オレが待たせることもあって。ああいう何もしない時間ってオレ苦手」

集団行動が壊滅的に苦手ってことか。
玲司君は自由人だからな。
しかもその性質を鈴村さんの教育で強化、むしろ悪化させてる。
協調性って集団の中でしか育たないやつだよ。
僕も野球部でたくさん学ばせてもらった。

「まあいいじゃん。最低限の勉強は圭が教えてくれて。暇つぶしの服作りは鈴村が教えてくれて。モデルの仕事もしてたから引きこもりでもなくて。成人した今はちゃんと社会で生きてけてるんだし」

たしかに。今は立派に社会人として働いている。
無職の僕が何か言える立場でもない。

「圭介さんは玲司君に勉強を教えてくれてたんだ」
「一緒にいるオレが物を知らな過ぎると自分まで舐められるって。鈴村もやべぇけど圭もやべぇからな。アイツら自分基準で教えてくるから一般人は死ぬっての」
「僕からしたら玲司君も十分ヤバいからね。なんで僕の周りには凄い人ばかりなんだよ」

ただでさえ底辺な自信がさらに無くなる。
落ち込みかけた僕の気分を紛らわすように玲司君がアルバムをめくった。
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