186 / 442
可視化ライブラリ
めいめいオリジナル5
しおりを挟む
「人は贅沢を覚えると生活の質を落とせなくなるどころかより高みを目指すらしい。理事達が新しい金稼ぎに手を出したのが、発達障害児童向けに新しく開発された薬の治験だよ。海外で開発された物だったのだけど、治験の為だと特例で国内での使用を許可されて。施設の子供達に投与された。その見返りの金を理事達は子供達に還元せず懐に隠したのだ」
新薬の治験。
対象になったのは発達障害がある子供。
そんなに都合よく発達障害の子がいたのか?
「子供なんて興味が向くものを目の前に置かれたらじっとしてなどいられないものだろう。ましてや、ろくな躾も受けていない子供達なら余計にね。それを衝動性が抑えられない多動だと診断を付けて薬を与えるなんて酷い話だよね」
意図的な誤診ってこと?
「そうして玲司が小学校に入学したタイミングで治験が始まった。当時を覚えていないのも、無精子症なのも。その薬が原因だ」
「そんな危ない薬、子供に飲ませちゃ駄目です」
「そうだよね。何故そんな当たり前のことを製薬会社で新薬を開発できるくらいに賢い者達が分からないのだろうね」
分かっていてやっていたら。
功名心が高まり、手柄を立てたいと言う気持ちが先走ったのだとしたら。
正しい判断が下せない集団に成り下がる。
「私が渋谷の公園通りに面したビルとビルの狭間で倒れている玲司を見つけたのは本当に偶然だよ。野良猫の通り道みたいに細い隙間に玲司はいたのだ。試験薬を過剰摂取したショック症状で意識を失っていたところを見つけられたのは不幸中の幸いか」
なによりも鈴村さんに見つけてもらえた幸運。
「玲司の健康被害が明るみに出たことで施設にいる他の子供達も一斉に検査することとなり。施設はがらんどうになった。子供がいなくなれば世話をする大人もいなくなる。そうして人気の無くなったはずの建物から真夜中に火が出てね」
誰もいないところから火が出ることがあるのか。
誰かがわざと火をつけたんじゃ。
「施設は全焼。その時に玲司の思い出になるような物も写真も全て焼けてしまったよ。代表理事は運が悪く建物の中にいたようでね。事故死だそうだ」
「それって自殺したんじゃ」
「あれは自殺をするようなタマじゃない。現世に醜くしがみついてでも生き延びようとするタイプだ」
とてもよく知る人を話しているかのような口ぶり。
鈴村さんの交友関係がどこまで広がっているのか見通せない。
「証拠は何もないよ。でも私は奴が消されたのだと思っている。死人に口なし。治験に関しては厚労省も絡んだ事業だ。新薬の危険性が認められた為、治験は中止。児童養護施設は燃えて無くなったから運用していた法人は解体。子供達は全国に散らして証拠隠滅」
「代表の人が死んだからって、はい終わりって変ですよ。だってその人以外にも子供達の為のお金で贅沢してた理事の人達がいたんでしょう。それに厚生労働省が出した治験の許可の責任は?」
だれも玲司君の健康被害の責任を取ってない。
「そうだよね。世の中おかしいよね。悪いことをした人達が康らかに健やかに過ごしていて。被害にあった者ばかりが辛い思いをするなんて」
「オレ、ツライとか思ってねえから」
鈴村さんの言葉を遮るように玲司君がサラリと言った。
「何度も言うけど、マジで覚えてねえんだよ。記憶にねえことをツライとか思うわけねえじゃん。オレは鈴村に拾われてラッキーだと思ってるぐらいだし」
終わり良ければ全て良し。そんなふうに思えるものなのだろうか。
そう思える玲司君って実はとっても凄いんじゃないか。
「毎日好きなことやってても許される生活。美味い肉食い放題。サイコーじゃん」
玲司君の生活の基準はお肉。それで良いのか。それだから良いのか。
「だからさ、勝手にオレのこと被害者扱いすんなよ。気持ちわりぃ」
そうだ。玲司君の心の傷を僕が勝手に決めつけちゃいけない。
僕の感じた痛みを彼の感情だと勘違いして押し付けちゃいけない。
鈴村さんも同じことを思ったようで、小さな声で玲司君に謝った。
僕はうまく言葉に出来なくて。
誤魔化すように抱きついたら玲司君は強く抱き締め返してくれた。
簡単に許してくれて玲司君は優しすぎるよ。
言葉遣いは乱暴なのに本当はとっても穏やかな人。
「せっかくだし五十嵐元区長についてだけど。彼は比較的癖のない男で、好きな物は蝋燭と鞭だよ。あと赤いピンヒールで踏まれるのも好んでいたね」
「癖強すぎですよ!」
それのどこが癖のない人?
SMプレイが好きな変態じゃん!
玲司君の腕の中に心地よく抱きしめられていたのに、ガバッと身を起こして叫んじゃった。
なんで鈴村さんってこのままいい感じに話を終わらせようとする時に余計な一言を投げてくるの!
「ちょっと鈴さん! 俺、五十嵐の息子と仕事で会うことあるんだけど。変な情報教えないでよー」
「仕事で会うなんて他人じゃねぇか。俺なんて苗字同じなんだけど。うわー。サイアク。五十嵐やめてぇ」
圭介さんと玲司君も唐突な個人情報の暴露に抗議してる。
知りたくないことまで言わなくていい。
それなのに鈴村さんは悪い事をしたと欠けらも思って無い様子。
ちょっとは反省の色を見せなさい!
新薬の治験。
対象になったのは発達障害がある子供。
そんなに都合よく発達障害の子がいたのか?
「子供なんて興味が向くものを目の前に置かれたらじっとしてなどいられないものだろう。ましてや、ろくな躾も受けていない子供達なら余計にね。それを衝動性が抑えられない多動だと診断を付けて薬を与えるなんて酷い話だよね」
意図的な誤診ってこと?
「そうして玲司が小学校に入学したタイミングで治験が始まった。当時を覚えていないのも、無精子症なのも。その薬が原因だ」
「そんな危ない薬、子供に飲ませちゃ駄目です」
「そうだよね。何故そんな当たり前のことを製薬会社で新薬を開発できるくらいに賢い者達が分からないのだろうね」
分かっていてやっていたら。
功名心が高まり、手柄を立てたいと言う気持ちが先走ったのだとしたら。
正しい判断が下せない集団に成り下がる。
「私が渋谷の公園通りに面したビルとビルの狭間で倒れている玲司を見つけたのは本当に偶然だよ。野良猫の通り道みたいに細い隙間に玲司はいたのだ。試験薬を過剰摂取したショック症状で意識を失っていたところを見つけられたのは不幸中の幸いか」
なによりも鈴村さんに見つけてもらえた幸運。
「玲司の健康被害が明るみに出たことで施設にいる他の子供達も一斉に検査することとなり。施設はがらんどうになった。子供がいなくなれば世話をする大人もいなくなる。そうして人気の無くなったはずの建物から真夜中に火が出てね」
誰もいないところから火が出ることがあるのか。
誰かがわざと火をつけたんじゃ。
「施設は全焼。その時に玲司の思い出になるような物も写真も全て焼けてしまったよ。代表理事は運が悪く建物の中にいたようでね。事故死だそうだ」
「それって自殺したんじゃ」
「あれは自殺をするようなタマじゃない。現世に醜くしがみついてでも生き延びようとするタイプだ」
とてもよく知る人を話しているかのような口ぶり。
鈴村さんの交友関係がどこまで広がっているのか見通せない。
「証拠は何もないよ。でも私は奴が消されたのだと思っている。死人に口なし。治験に関しては厚労省も絡んだ事業だ。新薬の危険性が認められた為、治験は中止。児童養護施設は燃えて無くなったから運用していた法人は解体。子供達は全国に散らして証拠隠滅」
「代表の人が死んだからって、はい終わりって変ですよ。だってその人以外にも子供達の為のお金で贅沢してた理事の人達がいたんでしょう。それに厚生労働省が出した治験の許可の責任は?」
だれも玲司君の健康被害の責任を取ってない。
「そうだよね。世の中おかしいよね。悪いことをした人達が康らかに健やかに過ごしていて。被害にあった者ばかりが辛い思いをするなんて」
「オレ、ツライとか思ってねえから」
鈴村さんの言葉を遮るように玲司君がサラリと言った。
「何度も言うけど、マジで覚えてねえんだよ。記憶にねえことをツライとか思うわけねえじゃん。オレは鈴村に拾われてラッキーだと思ってるぐらいだし」
終わり良ければ全て良し。そんなふうに思えるものなのだろうか。
そう思える玲司君って実はとっても凄いんじゃないか。
「毎日好きなことやってても許される生活。美味い肉食い放題。サイコーじゃん」
玲司君の生活の基準はお肉。それで良いのか。それだから良いのか。
「だからさ、勝手にオレのこと被害者扱いすんなよ。気持ちわりぃ」
そうだ。玲司君の心の傷を僕が勝手に決めつけちゃいけない。
僕の感じた痛みを彼の感情だと勘違いして押し付けちゃいけない。
鈴村さんも同じことを思ったようで、小さな声で玲司君に謝った。
僕はうまく言葉に出来なくて。
誤魔化すように抱きついたら玲司君は強く抱き締め返してくれた。
簡単に許してくれて玲司君は優しすぎるよ。
言葉遣いは乱暴なのに本当はとっても穏やかな人。
「せっかくだし五十嵐元区長についてだけど。彼は比較的癖のない男で、好きな物は蝋燭と鞭だよ。あと赤いピンヒールで踏まれるのも好んでいたね」
「癖強すぎですよ!」
それのどこが癖のない人?
SMプレイが好きな変態じゃん!
玲司君の腕の中に心地よく抱きしめられていたのに、ガバッと身を起こして叫んじゃった。
なんで鈴村さんってこのままいい感じに話を終わらせようとする時に余計な一言を投げてくるの!
「ちょっと鈴さん! 俺、五十嵐の息子と仕事で会うことあるんだけど。変な情報教えないでよー」
「仕事で会うなんて他人じゃねぇか。俺なんて苗字同じなんだけど。うわー。サイアク。五十嵐やめてぇ」
圭介さんと玲司君も唐突な個人情報の暴露に抗議してる。
知りたくないことまで言わなくていい。
それなのに鈴村さんは悪い事をしたと欠けらも思って無い様子。
ちょっとは反省の色を見せなさい!
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男
湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです
いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です
閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします
俺、メイド始めました
雨宮照
恋愛
ある日、とある理由でメイド喫茶に行った主人公・栄田瑛介は学校でバイトが禁止されているにもかかわらず、同級生の倉橋芽依がメイドとして働いていることを知ってしまう。
秘密を知られた倉橋は、瑛介をバックヤードに連れて行き……男の瑛介をメイドにしようとしてきた!?
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる