181 / 446
可視化ライブラリ
おいたちラプソディ10
しおりを挟む
「それで栞奈ちゃんは今どこにいるんですか?」
安奈さんと一緒にいるんでしょ?
その安奈さんは今どこにいるのかな? 元気にしてる?
圭介さんが高校生の時の子なら、栞奈ちゃんは中学生になってるよね。お年頃じゃん。
「俺には分からない。生まれてすぐに養子に出したから」
「養子って。安奈さんが育ててるんじゃないんですか?」
家族が欲しくて、大変な思いをしてまで産みたいって決めたんじゃないの?
「安奈がそうするって決めたんだ。自分の顔はLittle WOMENにバレている。見つかったら子供にまで危害を加えられるかもしれないって心配して。たしかに、あそこまで安奈のことを探してるLittle WOMENが、産まれたからって諦めてくれるとは思えなかった」
それじゃあ。安奈さんはLittle WOMENのせいで子供と離れ離れになってしまったんじゃないか。
本当、徹底的にエネミー。
「安奈は家族が欲しくて子供を産みたがったのに、子供を守るために親子の縁を切るって決めたんだ。どこから栞奈の存在がバレるか分からなかったから。安奈はやれること全部やったよ。身バレしている親とは戸籍を別にして、最後の繋がりになる氏名すら捨てて」
本来、親子の戸籍をそれぞれに分けて分籍したとしても、親子関係が変わる訳では無い。
けれども、児童保護の観点から弁護士等を利用して家庭裁判所に申請すると親から子を探すことを出来なくすることが可能。
そういった親から虐待を受けている子供を守るための制度を活用したそうだ。
杏奈さんは両親からネグレクトを受けていたと申し立てて家族の縁を切った。
あながち嘘ではないのが悲しい。
さらに養子縁組と改名手続きをすれば安奈さんが安奈さんだった痕跡が消える。
家族の繋がりを表す苗字も親から貰った名前も捨てる決意をさせるぐらいにLittle WOMENが執拗に彼女を探していた。
こんな悲しい決断ってないよ。
「俺は何とか安奈が子供を育てられないかってしたんだけど。ガキに何ができる訳でもない。とにかく無力だって思い知らされたね」
高校生じゃ何も出来なくて普通なんだよ。
無力感を味わう必要なんてないはずなのに。
有能過ぎるせいでしなくてもよい苦しみを背負い過ぎている。
「それともうひとつ理由があって。俺、金だけは持ってたじゃん。それが怖かったんだって」
お金が怖い?
「安奈がひとりで育てるとしても俺は栞奈を認知する。そうしたら事ある毎に俺から金をせびる自分が想像出来て嫌だって。娘を金蔓として育てたくないって」
子供を育てるための養育費は父親なら払うものだよ。
それを金蔓だなんて。
「安奈自身が両親の離婚時に養育費や児童手当貰うための金蔓として母親に引き取られたあと。母親のストレスの捌け口に使われていたから。小学校に入学した頃、母親が再婚して半分血の繋がらない妹が産まれると小間使いとして扱われた。そんな家庭環境だったから子育てのビジョンが見えなかったんだと思う」
小間使い。ヤングケアラーのような生活だったんだろうか。
まだ親を頼りたい年頃なのに、家族として数えてもらえていないような言い方。
「俺もろくな環境で育ってないから家族のなり方なんて分かんないし。父親としての役割なんて言われても金渡すぐらいしか思いつかなくて。それで俺達じゃ栞奈を育てられないってなったんだ」
圭介さんだけじゃなくて、安奈さんもとても賢い人なんだと思う。
だからふたりで未来を予想して、その結果を憂いて、栞奈ちゃんを人に託す事に決めた。
これが目の前の欲求に素直な子だったら栞奈ちゃんを自分の手元から離さなかっただろう。
その結果がどうなろうとも。
「親父がツテを使って、これ以上ないってくらい良い縁を持ってきてくれたよ。夫婦それぞれに病気が理由で子供が持てない。けれども子供が大好きだっていう人達。母親は小児心理を専攻として学んでいて幼稚園の教師の資格も所持。家庭的な面もあり、子育ての為に家庭に入ることは可能。そして子煩悩で経済力のある父親。親族も特別養子縁組に対して偏見のないクレバーな祖父母や叔父叔母。養親としてこれ以上ない完璧な家族」
お義父さんは栞奈ちゃんのために本気出したんだろうな。
それもまた祖父の愛。
「これだけしっかりした家庭を用意されたら、自分が育てるよりも安心だって、安奈は泣いてたよ。それが安堵なのか、別れに対する悲しみなのか、俺には分からなかったけど。腹の中の子がたくさんの人に歓迎されて産まれてくることを、ふたりで喜んだ」
産まれてくることをたくさんの人達から待ち望まれていた栞奈ちゃん。
みんなに愛されて産まれてきたんだ。
「養親は優しい人達で、子供の名前を俺達で決めていいって言ってくれたから。俺と安奈で相談して、栞奈って名前に決めた。名付けのプロってぐらい子供に名前つけまくってる親父にも相談して、変じゃないか聞いた」
お義父さんは自分の子供だけじゃなくて、頼まれて人の子供にも名付けてそうだもんね。
「カンナの花は大きくて華やかだから儂は好きだなーって。全然役に立たないふざけた答えだったけど」
お義父さんらしい。
「産まれてくる栞奈は、退院と同時に養親に引き取られることになっていたから。俺達は産まれてから退院までの6日間だけ親子だったけど。病室で羽みたいに軽い栞奈を抱いた時、俺の母親もこんな気持ちだったのかなって思って。親父に会ってすぐの頃に、怒りに任せてアルバム捨てたのを、少し後悔したんだ」
それがいまここにある写真。
捨てたはずのものをお義父さんは大事に残しておいてくれたんだ。
「親父が残しておいてくれたことは、まあ感謝しとくかな。隠しておかないで、もっと早くに渡せよとは思うけど」
「きっと、渡すタイミングが掴めなかっただけで。これからは僕が大切に保管します」
だからもう間違って捨てることもないよ。
安奈さんと一緒にいるんでしょ?
その安奈さんは今どこにいるのかな? 元気にしてる?
圭介さんが高校生の時の子なら、栞奈ちゃんは中学生になってるよね。お年頃じゃん。
「俺には分からない。生まれてすぐに養子に出したから」
「養子って。安奈さんが育ててるんじゃないんですか?」
家族が欲しくて、大変な思いをしてまで産みたいって決めたんじゃないの?
「安奈がそうするって決めたんだ。自分の顔はLittle WOMENにバレている。見つかったら子供にまで危害を加えられるかもしれないって心配して。たしかに、あそこまで安奈のことを探してるLittle WOMENが、産まれたからって諦めてくれるとは思えなかった」
それじゃあ。安奈さんはLittle WOMENのせいで子供と離れ離れになってしまったんじゃないか。
本当、徹底的にエネミー。
「安奈は家族が欲しくて子供を産みたがったのに、子供を守るために親子の縁を切るって決めたんだ。どこから栞奈の存在がバレるか分からなかったから。安奈はやれること全部やったよ。身バレしている親とは戸籍を別にして、最後の繋がりになる氏名すら捨てて」
本来、親子の戸籍をそれぞれに分けて分籍したとしても、親子関係が変わる訳では無い。
けれども、児童保護の観点から弁護士等を利用して家庭裁判所に申請すると親から子を探すことを出来なくすることが可能。
そういった親から虐待を受けている子供を守るための制度を活用したそうだ。
杏奈さんは両親からネグレクトを受けていたと申し立てて家族の縁を切った。
あながち嘘ではないのが悲しい。
さらに養子縁組と改名手続きをすれば安奈さんが安奈さんだった痕跡が消える。
家族の繋がりを表す苗字も親から貰った名前も捨てる決意をさせるぐらいにLittle WOMENが執拗に彼女を探していた。
こんな悲しい決断ってないよ。
「俺は何とか安奈が子供を育てられないかってしたんだけど。ガキに何ができる訳でもない。とにかく無力だって思い知らされたね」
高校生じゃ何も出来なくて普通なんだよ。
無力感を味わう必要なんてないはずなのに。
有能過ぎるせいでしなくてもよい苦しみを背負い過ぎている。
「それともうひとつ理由があって。俺、金だけは持ってたじゃん。それが怖かったんだって」
お金が怖い?
「安奈がひとりで育てるとしても俺は栞奈を認知する。そうしたら事ある毎に俺から金をせびる自分が想像出来て嫌だって。娘を金蔓として育てたくないって」
子供を育てるための養育費は父親なら払うものだよ。
それを金蔓だなんて。
「安奈自身が両親の離婚時に養育費や児童手当貰うための金蔓として母親に引き取られたあと。母親のストレスの捌け口に使われていたから。小学校に入学した頃、母親が再婚して半分血の繋がらない妹が産まれると小間使いとして扱われた。そんな家庭環境だったから子育てのビジョンが見えなかったんだと思う」
小間使い。ヤングケアラーのような生活だったんだろうか。
まだ親を頼りたい年頃なのに、家族として数えてもらえていないような言い方。
「俺もろくな環境で育ってないから家族のなり方なんて分かんないし。父親としての役割なんて言われても金渡すぐらいしか思いつかなくて。それで俺達じゃ栞奈を育てられないってなったんだ」
圭介さんだけじゃなくて、安奈さんもとても賢い人なんだと思う。
だからふたりで未来を予想して、その結果を憂いて、栞奈ちゃんを人に託す事に決めた。
これが目の前の欲求に素直な子だったら栞奈ちゃんを自分の手元から離さなかっただろう。
その結果がどうなろうとも。
「親父がツテを使って、これ以上ないってくらい良い縁を持ってきてくれたよ。夫婦それぞれに病気が理由で子供が持てない。けれども子供が大好きだっていう人達。母親は小児心理を専攻として学んでいて幼稚園の教師の資格も所持。家庭的な面もあり、子育ての為に家庭に入ることは可能。そして子煩悩で経済力のある父親。親族も特別養子縁組に対して偏見のないクレバーな祖父母や叔父叔母。養親としてこれ以上ない完璧な家族」
お義父さんは栞奈ちゃんのために本気出したんだろうな。
それもまた祖父の愛。
「これだけしっかりした家庭を用意されたら、自分が育てるよりも安心だって、安奈は泣いてたよ。それが安堵なのか、別れに対する悲しみなのか、俺には分からなかったけど。腹の中の子がたくさんの人に歓迎されて産まれてくることを、ふたりで喜んだ」
産まれてくることをたくさんの人達から待ち望まれていた栞奈ちゃん。
みんなに愛されて産まれてきたんだ。
「養親は優しい人達で、子供の名前を俺達で決めていいって言ってくれたから。俺と安奈で相談して、栞奈って名前に決めた。名付けのプロってぐらい子供に名前つけまくってる親父にも相談して、変じゃないか聞いた」
お義父さんは自分の子供だけじゃなくて、頼まれて人の子供にも名付けてそうだもんね。
「カンナの花は大きくて華やかだから儂は好きだなーって。全然役に立たないふざけた答えだったけど」
お義父さんらしい。
「産まれてくる栞奈は、退院と同時に養親に引き取られることになっていたから。俺達は産まれてから退院までの6日間だけ親子だったけど。病室で羽みたいに軽い栞奈を抱いた時、俺の母親もこんな気持ちだったのかなって思って。親父に会ってすぐの頃に、怒りに任せてアルバム捨てたのを、少し後悔したんだ」
それがいまここにある写真。
捨てたはずのものをお義父さんは大事に残しておいてくれたんだ。
「親父が残しておいてくれたことは、まあ感謝しとくかな。隠しておかないで、もっと早くに渡せよとは思うけど」
「きっと、渡すタイミングが掴めなかっただけで。これからは僕が大切に保管します」
だからもう間違って捨てることもないよ。
3
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
初恋の幼馴染の女の子の恰好をさせられメス調教もされて「彼女」の代わりをさせられる男の娘シンガー
湊戸アサギリ
BL
またメス調教ものです。今回はエロ無しです。女装で押し倒されいますがエロはありません
女装させられ、女の代わりをさせられる屈辱路線です。メス調教ものは他にも書いていますのでよろしくお願いいたします
お兄ちゃんは今日からいもうと!
沼米 さくら
ライト文芸
大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。
親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。
トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。
身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。
果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。
強制女児女装万歳。
毎週木曜と日曜更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる