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おいたちラプソディ1
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壁やんを見送ったら重たいプレゼントを抱えてリビングに戻る。
ソファに座って結び目を解いて包みを開いてみれば。
青色とオレンジ色をした2冊のアルバム? 誰の写真?
分からないなら中身を見たらいい。
まずは1冊目。青い色のアルバムを膝にのせてめくる。
「かわいー」
アルバムの1ページ目。
真っ白いおくるみに包まれた赤ちゃんを抱っこするお母さん。
病室のベットに腰掛けた女の人。
若くて、すごくキレイな人だ。
生まれたてって感じ。赤ちゃんって本当に肌が赤いんだな。
ちっちゃーい。ふわふわしてるー。
抱いている女の人の幸せそうな顔。
この赤ちゃんがとても愛されているって伝わってくる。
ページをめくると赤ちゃんが少しづつ成長していく。
ハイハイして。立ち上がって。歩き出した。
写真が部屋の中から外に出ていく。
春はたんぽぽの綿毛を吹き、夏は公園の噴水で水遊び、秋はどんぐりを拾い、冬は雪遊び。
毛糸の帽子を被り霜焼けた真っ赤な頬をしながらカメラを見上げて笑う子供。
幼いけれども感じる面影。
クシャって笑うこの仕草。
「圭介さんだ」
そう。このアルバムは圭介さんのもの。
それならこれは僕にではなく圭介さんへのプレゼントだよ。
僕が貰っていいものじゃない。
「圭君の写真。保さんが残しておいてくれたのだね。本人は捨てたつもりでいたけれど」
隣に座る鈴村さんが指先でそっと写真の赤ちゃんの頭を優しく撫でる。
圭介さんが写真を捨てたの? なんで? 大事なものなのに。
写真の中の圭介さんはどんどん大きくなっていく。
これは幼稚園の運動会かな? かけっこ1番だ。
芋堀遠足。泥だらけの圭介さんも可愛い。
僕も幼稚園の時に行ったよ。掘った芋は焼き芋にしたんだ。
でも圭介さんが通ってたのは保育園だ。
運動会の写真のゲートに『さいたまにしほいくえん にゅうじょうぐち』と書いてある。
写真に残された日々。
七夕。プール遊び。餅つき。お遊戯会に卒園式。
子供の頃から圭介さんは華があるな。
隠しきれないイケメンの片鱗。
小さな圭介さんは今よりひょうきんな雰囲気で可愛い。
次の写真は入学式。
満開の桜の花びらが舞う校門の前。
『ご入学おめでとうございます』と書かれた看板の前に立つ圭介さん。
そして圭介さんと一緒に写ってる女の人は産まれたての圭介さんを抱っこしてた人だ。
7年の年月を感じさせない。若い雰囲気。
もともと若かったからそんなに変わらないのかも。
やっぱりこの人が圭介さんのお母さん?
圭介さんは緊張しているみたい。
表情が少し硬い。けど入学式で知らない人がたくさんいたら小さな子供はこんな顔にもなるだろう。
お母さんはニッコニコで息子の入学が心から嬉しいのだと分かる。
それはそうだ。子供の入学式なんだもん。
でもなんだろう。この写真から覚える違和感。
入学式。
そうか。この写真の2人。入学式なのに普段着なんだ。
ランドセルを背負った圭介さんはトレーナーと半ズボン。
お母さんもカジュアルなカットソーのワンピース。
校門の後ろの方を歩いている親子はフォーマルな服装なのに圭介さん達だけ浮いてる。
でも別に服装に決まりなんてないし。
この後の予定があったのかもしれない。
気になってアルバムを巻き戻る。
一緒に写っているのはお母さんらしき人と保育園のお友達や先生。
お義父さんと写っているものが1枚もない。
お誕生日やクリスマスといったイベントの写真も保育園で撮ったもので、家で家族と撮った写真がない。
そういったイベント事、お義父さんは大好きそうなのに。
それに圭介さんの小学校入学式にお義父さんも一緒に行っていたら。
僕にスーツをオーダーで仕立ててくれるように、小さくて可愛い圭介さんにもスーツを用意したはずだ。
圭介さんの入学式なら絶対に服装にもこだわる。
もちろんお母さんにも。
だって写真の中のお母さんはとっても綺麗な人だから。
着飾ったらもっと素敵になる。
着物だって似合うだろう。
それなのにこんな適当な服装で入学式に参加するのはなぜ?
よくよく見てみれば。保育園の写真の服もシミがあったり、シャツの襟ぐりが伸びていたり。
遊んで汚れてもいいようにっていう理由にしてもボロくない?
なんだろう。心がゾワゾワする。
このお母さんはきっとすごく圭介さんのことを大切にしてる。
写真越しにも愛が伝わってくる。
けれども、どこかチグハグなアルバム。
「ゴミ捨て場から拾ってきて、わざわざ保管しておくなんて。大人って嫌だねー」
圭介さんの声が頭の上から降ってきた。
思わず見上げて目が合う。
圭介さん、いつからそこに?
ソファに座って結び目を解いて包みを開いてみれば。
青色とオレンジ色をした2冊のアルバム? 誰の写真?
分からないなら中身を見たらいい。
まずは1冊目。青い色のアルバムを膝にのせてめくる。
「かわいー」
アルバムの1ページ目。
真っ白いおくるみに包まれた赤ちゃんを抱っこするお母さん。
病室のベットに腰掛けた女の人。
若くて、すごくキレイな人だ。
生まれたてって感じ。赤ちゃんって本当に肌が赤いんだな。
ちっちゃーい。ふわふわしてるー。
抱いている女の人の幸せそうな顔。
この赤ちゃんがとても愛されているって伝わってくる。
ページをめくると赤ちゃんが少しづつ成長していく。
ハイハイして。立ち上がって。歩き出した。
写真が部屋の中から外に出ていく。
春はたんぽぽの綿毛を吹き、夏は公園の噴水で水遊び、秋はどんぐりを拾い、冬は雪遊び。
毛糸の帽子を被り霜焼けた真っ赤な頬をしながらカメラを見上げて笑う子供。
幼いけれども感じる面影。
クシャって笑うこの仕草。
「圭介さんだ」
そう。このアルバムは圭介さんのもの。
それならこれは僕にではなく圭介さんへのプレゼントだよ。
僕が貰っていいものじゃない。
「圭君の写真。保さんが残しておいてくれたのだね。本人は捨てたつもりでいたけれど」
隣に座る鈴村さんが指先でそっと写真の赤ちゃんの頭を優しく撫でる。
圭介さんが写真を捨てたの? なんで? 大事なものなのに。
写真の中の圭介さんはどんどん大きくなっていく。
これは幼稚園の運動会かな? かけっこ1番だ。
芋堀遠足。泥だらけの圭介さんも可愛い。
僕も幼稚園の時に行ったよ。掘った芋は焼き芋にしたんだ。
でも圭介さんが通ってたのは保育園だ。
運動会の写真のゲートに『さいたまにしほいくえん にゅうじょうぐち』と書いてある。
写真に残された日々。
七夕。プール遊び。餅つき。お遊戯会に卒園式。
子供の頃から圭介さんは華があるな。
隠しきれないイケメンの片鱗。
小さな圭介さんは今よりひょうきんな雰囲気で可愛い。
次の写真は入学式。
満開の桜の花びらが舞う校門の前。
『ご入学おめでとうございます』と書かれた看板の前に立つ圭介さん。
そして圭介さんと一緒に写ってる女の人は産まれたての圭介さんを抱っこしてた人だ。
7年の年月を感じさせない。若い雰囲気。
もともと若かったからそんなに変わらないのかも。
やっぱりこの人が圭介さんのお母さん?
圭介さんは緊張しているみたい。
表情が少し硬い。けど入学式で知らない人がたくさんいたら小さな子供はこんな顔にもなるだろう。
お母さんはニッコニコで息子の入学が心から嬉しいのだと分かる。
それはそうだ。子供の入学式なんだもん。
でもなんだろう。この写真から覚える違和感。
入学式。
そうか。この写真の2人。入学式なのに普段着なんだ。
ランドセルを背負った圭介さんはトレーナーと半ズボン。
お母さんもカジュアルなカットソーのワンピース。
校門の後ろの方を歩いている親子はフォーマルな服装なのに圭介さん達だけ浮いてる。
でも別に服装に決まりなんてないし。
この後の予定があったのかもしれない。
気になってアルバムを巻き戻る。
一緒に写っているのはお母さんらしき人と保育園のお友達や先生。
お義父さんと写っているものが1枚もない。
お誕生日やクリスマスといったイベントの写真も保育園で撮ったもので、家で家族と撮った写真がない。
そういったイベント事、お義父さんは大好きそうなのに。
それに圭介さんの小学校入学式にお義父さんも一緒に行っていたら。
僕にスーツをオーダーで仕立ててくれるように、小さくて可愛い圭介さんにもスーツを用意したはずだ。
圭介さんの入学式なら絶対に服装にもこだわる。
もちろんお母さんにも。
だって写真の中のお母さんはとっても綺麗な人だから。
着飾ったらもっと素敵になる。
着物だって似合うだろう。
それなのにこんな適当な服装で入学式に参加するのはなぜ?
よくよく見てみれば。保育園の写真の服もシミがあったり、シャツの襟ぐりが伸びていたり。
遊んで汚れてもいいようにっていう理由にしてもボロくない?
なんだろう。心がゾワゾワする。
このお母さんはきっとすごく圭介さんのことを大切にしてる。
写真越しにも愛が伝わってくる。
けれども、どこかチグハグなアルバム。
「ゴミ捨て場から拾ってきて、わざわざ保管しておくなんて。大人って嫌だねー」
圭介さんの声が頭の上から降ってきた。
思わず見上げて目が合う。
圭介さん、いつからそこに?
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