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くらげ

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たいようアコースティック2

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「僕がやってた太陽光パネルの営業っていうのは昔からよくある押し売りのシノギ。今は無理やり売ってもクーリングオフされて無駄骨になるから、きちんと説明して納得した上で買ってもらったよ」
「じゃあ、何も悪いことはしてないね」
「うーん。どうなんだろう?」

契約上の問題はないんじゃないの?

「僕が売ってるのは純国産の太陽光パネルで、他社が扱う中国産の物より販売価格が高いんだ。その分、品質が良いって話をして実際高品質な物ではあるんだけど」

なら良くない?
国産品は海外製の物より値段が高くなるのはよくある話だし。

「同等の品質の物の約2倍ぐらいで売ってたんだよね」

さすがにそれはぼったくりすぎでは。
だから壁やんも何も悪いことしてないって言いにくいのか。
言葉を濁してしまうのは金額のせい?

「保証期間は10年だけど、この秋に倒産予定で、僕はその手伝いで博多に行っていた。最後の売り尽くしで無茶な施工もしてる」

無責任な販売方針。
それを壁やんは恥じているように感じた。
納得してヤクザになっていても、割り切れるわけではない。良心。

「しかも仕入れ価格はそのへんの中国産より安くて」
「国産なのに?」
「とある仏教系の宗教法人が信者の人達に奉仕活動の尊さを説いてタダ働きで作らせたパネルだから」

宗教の奉仕活動。仏教なら労働は徳を積む為か、修行の為か。そんな感じの理由になるのだろう。
そうして作られた太陽光パネル。
何かの犯罪かと聞かれたら該当する罪は無さそう。
だって信者の人達は徳を積む為に働けて幸せなんでしょ?
その労働力をどう使うかは宗教団体の上の方の人が決めることだ。
そう考えたら物作りは健全な修行?

「鞘間がケツ持ちする代わりに安く納品させてたんだ。元の人件費はタダだから向こうも買い叩かれたところで懐は痛まない」
「でも信者の人達は無償奉仕だと生活が成り立たないよ」

生きていくのにはお金がかかる。
僕だって一人暮らしをするために働いてお給料をもらってたよ。

「そうだね。パネルの製造は無償奉仕。それ以外の活動の中には少額の報酬がもらえるものもあって。金額は学生のアルバイトぐらいかな。あと、教団は信者を集団生活をさせるんだ。1箇所に集めた方が低予算で生きていけるし。管理も楽だし」

まるで世界史で学んだ奴隷の生活みたいな考え方。
生きていけるけど生きているだけ。
そこに信じる宗教があれば本人は満足?
でももし家族がいたら? 家族も同じ宗教を信じていたら平気?
信じていなかったら、そこは仏の道ではなく地獄の沙汰じゃないのか。

「いちおう家族とか子供まで巻き込まれて不幸にならないように、保さん達みたいな福祉チームがフォローしてるよ。納得して活動しちゃう子達はどうしようも無いけど、親と離れたい意志を示したら保護して学習や就労の支援をしていくことになる」

子供が巻き添えになるのはさけてるみたい。
そこは最後の良心?

「それだって使えそうな駒を無能な親からパージして自分達好みに育てているだけとも言えるがね」

鈴村さんが鼻で笑う。

「現状に不満を持ち変化を求められる賢さがある者だけ拾い上げて、不平不満を口にしながら何もしない者は見捨てるのだろう
?」

青田買いした人材の育成計画みたいな話になってきた。
ある程度選別してから育てているみたい。
全ての子供を宗教から救うわけではない?
日本には信仰の自由があるから、全員を無理矢理に親や宗教から離すのも違うのか。
宗教が絶対悪ってわけでもないし。難しい。

だけど宗教にもヤクザの息がかかっているとしたら。そこから保護するといってもマッチポンプなんじゃ。
自作自演の福祉活動。

お義父さんの慈善活動家という肩書きもヤクザの生業の一環だとしたら。
僕はどこまでを信じて、どこからを疑ったら良い?
1人でも助かる人がいればそれは善行?
そもそも困っている人がいなければ助ける必要もない。
困っている人を作り出す仕組みから準備しているとしたら、それは慈善ではなく欺瞞。
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