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こうどうマーチ6
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「そんな下心が駄目だったんだろうね。高3の夏の大会。みんなで一緒に野球ができる最後の公式戦。県大会の決勝で負けたあとOBの人に言われたんだ。僕みたいにチャラついた奴が記録員としてベンチに居たから負けたんだって」
昔、夏の甲子園で優勝した時の選手だった人。
よく試合を見に来ては叱咤激励してくれた。
そんな人が怒るのだから負けた原因のひとつは僕だったんだろう。
「みんなが揃いの丸刈りにするなか、僕は短髪にしてたとはいえ、野球部的には長かったし。チャラついて見えたんだと思う。開会式の前日、気合い入れだってみんなが髪の毛をバリカンで刈り上げるのが羨ましくて。僕も一緒に坊主にしようとしたんだ。でも平間君に止められちゃった。丸刈りは似合わないからやめとけって。それ言われると絶対に似合わないのは中学の時に試して分かってたから出来なくて」
中学の入部したての頃。
皆と同じように丸刈りにしたら尼寺と言われ。
体操服で校舎の外周走ってたら、虐められた女子生徒と間違えられて学校に通報もされた。
たしかに声変わり前の僕は他の子達より体も小さくて今よりもさらに女子に間違われることが多かったけど。
坊主にしたのにまだ女子に間違えらるのかとショックだった。
部の規約から髪型の記述がなくなったのはそのすぐ後。
父母会のお母さん達が野球部らしくて僕に似合う髪型を考えてくれたっけ。
美容師をしているお母さんがスタイリングも一緒に決めてくれたんだ。
襟足はスッキリ刈り上げて、前髪は短く。
それでも時々女の子に間違えられたのは苦い思い出。
「僕は見た目も中身も浮ついていたから、スタジアムの廊下で怒鳴られても仕方がないことだった。別に父兄やOBが怒鳴るなんてよくあることだし。それはそんなに気にしなくていいことなんだ。どうでもいいこと」
本当に取るに足らない。
よくある怒りっぽいOBに会った。その程度の出来事。
「でも学校に帰ってきて。道具を片付けたりしてるときに、いつもの癖で平間君のプロテインを用意しちゃって。それで帰る前に飲んでもらおうと探してたら」
プロテインなんて自分で飲んでしまえば良かったのに。馬鹿な僕。
「見ちゃったんだ。校舎の影で平間君が彼女とキスしてるの。彼女がいることは知ってたよ。ブラバンのトランペットが可愛いって1年の頃から相談受けて、2年の文化祭で告白するときになんて言うか一緒に考えたのも僕だし。でも登下校は別で昼ごはんも部室で食べてて本当に付き合ってるの? みたいな状況だったから。忘れてたんだ。彼らが正しく男女で付き合っていたことを」
僕は平間君の隣にいたつもりでいたけど。
本当に隣にいたのは僕じゃない女の子。
「すごくショックで。そうやって傷ついてる自分がすごく嫌で。決勝戦に負けた時でも泣かなかったのに。たかだかキスのひとつで馬鹿みたい」
泣いてしまう自分が心底嫌だった。
そして泣いてる姿を誰にも見られたくはなかった。
「学校の裏に走り込みに使う河川敷があって、いつも水とか置く決まった橋の下があるんだけど。そこで隠れて泣いた。時間を忘れて泣いていたら父さんから電話かかってきて」
帰ってこないのを心配した父さんが車で迎えにきてくれることになった。
昔、夏の甲子園で優勝した時の選手だった人。
よく試合を見に来ては叱咤激励してくれた。
そんな人が怒るのだから負けた原因のひとつは僕だったんだろう。
「みんなが揃いの丸刈りにするなか、僕は短髪にしてたとはいえ、野球部的には長かったし。チャラついて見えたんだと思う。開会式の前日、気合い入れだってみんなが髪の毛をバリカンで刈り上げるのが羨ましくて。僕も一緒に坊主にしようとしたんだ。でも平間君に止められちゃった。丸刈りは似合わないからやめとけって。それ言われると絶対に似合わないのは中学の時に試して分かってたから出来なくて」
中学の入部したての頃。
皆と同じように丸刈りにしたら尼寺と言われ。
体操服で校舎の外周走ってたら、虐められた女子生徒と間違えられて学校に通報もされた。
たしかに声変わり前の僕は他の子達より体も小さくて今よりもさらに女子に間違われることが多かったけど。
坊主にしたのにまだ女子に間違えらるのかとショックだった。
部の規約から髪型の記述がなくなったのはそのすぐ後。
父母会のお母さん達が野球部らしくて僕に似合う髪型を考えてくれたっけ。
美容師をしているお母さんがスタイリングも一緒に決めてくれたんだ。
襟足はスッキリ刈り上げて、前髪は短く。
それでも時々女の子に間違えられたのは苦い思い出。
「僕は見た目も中身も浮ついていたから、スタジアムの廊下で怒鳴られても仕方がないことだった。別に父兄やOBが怒鳴るなんてよくあることだし。それはそんなに気にしなくていいことなんだ。どうでもいいこと」
本当に取るに足らない。
よくある怒りっぽいOBに会った。その程度の出来事。
「でも学校に帰ってきて。道具を片付けたりしてるときに、いつもの癖で平間君のプロテインを用意しちゃって。それで帰る前に飲んでもらおうと探してたら」
プロテインなんて自分で飲んでしまえば良かったのに。馬鹿な僕。
「見ちゃったんだ。校舎の影で平間君が彼女とキスしてるの。彼女がいることは知ってたよ。ブラバンのトランペットが可愛いって1年の頃から相談受けて、2年の文化祭で告白するときになんて言うか一緒に考えたのも僕だし。でも登下校は別で昼ごはんも部室で食べてて本当に付き合ってるの? みたいな状況だったから。忘れてたんだ。彼らが正しく男女で付き合っていたことを」
僕は平間君の隣にいたつもりでいたけど。
本当に隣にいたのは僕じゃない女の子。
「すごくショックで。そうやって傷ついてる自分がすごく嫌で。決勝戦に負けた時でも泣かなかったのに。たかだかキスのひとつで馬鹿みたい」
泣いてしまう自分が心底嫌だった。
そして泣いてる姿を誰にも見られたくはなかった。
「学校の裏に走り込みに使う河川敷があって、いつも水とか置く決まった橋の下があるんだけど。そこで隠れて泣いた。時間を忘れて泣いていたら父さんから電話かかってきて」
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