恋愛サティスファクション

くらげ

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アビスの入口2

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お風呂でさっぱりしたら。
さっきまで気が重かった紙袋の山も片付けようって気持ちになれた。
鈴村さんが好きにしていいっていうから。
紙袋は一番使わなそうな書斎に押し込んだ。

リビングの立派すぎるソファじゃなくて。
窓際に置かれていた一人がけのソファにオットマンやフカフカのクッションをいい感じにセッティング。
体動かしてたらお腹も空いてきたからカツサンドとミネストローネ、夜だからノンカフェインのハーブティをルームサービスで頼む。
ホットハーブティーは冷めないようにポットに入って届いた。
おもてなしの精神。ありがとうございます。

部屋まで運んでくれたのは僕の代わりに廊下で受け取ってくれた警備の方なので、ホテルの人には直接のお礼を言えなかったけど。
サイドテーブルにセッティングしてくれる警備さんにその分もお礼をしっかり伝える。
合わせて、ドアを開けて目があった時に無言で部屋に戻っちゃったことも謝った。

「さっきはきちんと挨拶しないでドア閉めちゃってごめんなさい。ルームサービスのこととか、他にもいろいろありがとうございます」
「我々のことはお気になさらず。ゆっくりとお寛ぎください」

失礼な態度を許してくれる心の広い警備の方で良かったよ。
これからもよろしくお願いします。
もし圭介さん達がやってきても意地悪なことはしないでね。
普通に僕を呼んでくれたら嬉しいな。

ルームサービス頼むときに鈴村さんも何か食べるかなって聞いたけど。
なにもいらないって。
夕方、外にでかけてたときに食べてきたのかな?
僕は遠慮なくいただきます。

カツサンドを片手にスマホの検索ウィンドウを開く。
お義父さんの名前をエゴサして何が出てくるの? って気軽に調べたら。
出てきました! ウィキペディア!
お義父さんはウィキでまとめられるほどの人だったの!?

『田中保・日本の慈善活動家。元ヤクザ』

元ヤクザ!
一行目からパワーワード炸裂。

今年で83歳なんだー、お誕生日はいつかなって、まったり読むんじゃなくて。
折りたたまれた来歴を確認。めちゃくちゃ長い! 生い立ちからとか超有名人じゃん。

『名古屋市中村区出身。戦災孤児。親族を頼って岐阜に行くも保護されず。名古屋市中区で自警団として活動していた、のちの裏柳組の世話になる。』

戦争でご両親を亡くして、自分達のことで精一杯だった親族は子供だったお義父さんのことを助けることができなくて。
今みたいに児童保護の仕組みもなかった時代。
ヤクザにならなきゃ生きられなかった子供。それがお義父さん。

裏柳組は売春、風俗が主な資金源。
田中保は新しいものが好きな気風でデリバリーヘルス、アダルトサイトの運営、ガールズバー、コンセプトカフェなどの新業態への参入も早かった。
お義父さん、売ってるものがアレなんだけど経営者として褒められている?

裏柳組の組長と並行して、鞘間組でも幹部になって若頭補佐になって幹事長にっていうのは、組織の中で順調に出世しているということだろうか。
鞘間組内でも裏柳組の組長としても、かなりのやり手ヤクザとして書かれているのに。
それなのになんで今は元ヤクザ?

その疑問の答えもウィキペディアに載ってた。

『上前津抗争』
それは今から20年前に起きた鞘間組の内部抗争。
関東圏で活動する小峠会とお義父さんが組長をしている裏柳組の間で起きた小さな揉め事。
それが鞘間組全体を巻き込む争いへとつきすすんでいくさまが、まるで小説のように描かれている。
抗争の名前になっている上前津は銃撃事件が起きた地名から。
地図を確認したら、今僕がいるところからすぐ近く。
こんな街中で銃撃事件が起きていたなんて。危ない。
通りすがりの一般人が巻き込まれなくて本当に良かった。

銃撃で怪我をしたのは裏柳組の若い構成員一名。当時未成年のため名前は公表されず。
お義父さんは騒動の責任をとってヤクザを辞め、裏柳会も解散することになったらしい。

『裏柳組の解散をもって抗争は集結。歴史に名を残す平和的解決』

お義父さんがヤクザを辞めて。
お義父さんに連なる人達も連帯責任でヤクザを除籍となって。
壁やんが新幹線で教えてくれた組織図を当てはめると鞘間組の幹事長だったお義父さんの下にはどれだけの人がいたんだ。
組の規模から考えて数百人はくだらない。
メンツが大事だというヤクザがそれだけの人数で全面降伏するなんて。
トップダウン方式のヤクザだったとしても、それを納得させられるだけの人望がなきゃ離反されて終わる話だ。

そして敵対していた小峠会は逆にこの抗争で鞘間組内の勢力を広めていった。
此処から先の鞘間組の話は次の機会に。
この話、掘り始めたら徹夜コースだ。

お義父さんがヤクザをやめたあとのことも読む。
これまた長いな。
いくら章立てているとはいえ。ウィキも分割したらいいんじゃない?
田中保ヤクザ編と田中保慈善活動家編。

鞘間組から離脱し、4年間の服役を終えたあと福祉の道へ進む。
2010年障害者支援を主な活動とする一般社団法人かなりあを設立。
同2010年一般財団法人三貞を設立。
この財団は田中保と共に鞘間組を除籍となり生活に困窮した元構成員達を支援するために立ち上げたという説もある。

元ヤクザの人達のための財団。ヤクザをやめたあとも部下達を見捨てないってこと?
仁義ってやつなのかな。

その後、発達障害児の早期支援を行う一般社団法人ONEIROを設立。
ここから本格的に福祉支援の活動がはじまっていく。
法人立ち上げ、基金の設立、福祉にまつわる法案の会議に参加。などなど。
なんかすごい人とお寿司食べてたんだなー。
80歳過ぎて未だ現役とかパワフルだなー。
ぶっちゃけ、見慣れない文字の羅列は目が滑ります!

ヤクザなんて危ない仕事じゃなくて最初から人の役に立つ仕事を始めていたら良かったんじゃない?
普通なら定年してる年齢からさらに人のために働くなんて。
でも、戦争を経験してヤクザになって服役した経験があるから福祉の大切さにも気づけたのかな。
時間があったらそのあたりのことを本人に聞いてみたい。
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