117 / 469
可視化ライブラリ
そうだ名古屋に行こう6
しおりを挟む
「鞘間組って大きい組だから幹部の人達はみんなその傘下にある組の長を兼任されてるって思っていいよ。うちの宮野会の会長は鞘間組の組長直系の舎弟頭でもあるし」
「舎弟って下っ端なんじゃないの?」
「経理部部長が関連子会社に出向すると外部取締役になるみたいな話だよ」
ほほう。下っ端とか言っちゃ駄目なんだな。気をつけよ。
「あとはグループ経営っていってもこの縦線の流れが大事なんだ。横も関係性はあるけど大事なのは上下のライン。僕は宮野会、若頭の多菊さんに付いてる。さっきアイスを奢ってくれた人が多菊さんだよ」
そう説明されたから、ぴょこんと顔をのぞかせて、ぺこりと頭を下げておく。
新幹線のスゴクカタイアイス、ご馳走様でした。
あと先日はフルーツタルトもご馳走様でした。
細身のイタリースーツでインテリメガネのフルーツタルトは多菊さん。
壁やんの職場の上司。覚えておこう。
「そうなんだ。いろいろ繋がってて大変そう。ねえ。ヤクザの仕事って何するの? 地上げ?」
ついでだしいろいろ聞いとこ。社会勉強だ。
「今どき地上げとかないよ。警察に怒られる。仕事って一言では言い表せないな。うーん。たとえば僕はいま太陽光発電のパネルを販売してる」
ヤクザ=地上げ。めっちゃ偏見でした。ごめんなさい。
太陽光発電の話は前にも聞かせてくれたよね。
営業がんばってるんでしょ?
「他にも不動産管理とか浄水器の販売とか人材派遣をやってるとこあるな。本当にいろいろ。これだけの人間がいるからね。それぞれのシマでやれることをやれる人がやれる範囲でって感じだよ。僕は多菊さんに教わってる最中のペーペーだけどね」
壁やんがペーペーなら、ニートの僕はプーじゃん。
やっぱり仕事はしたいな。職種はなんでもいいから働きたい。
「僕はいまスマホや財布を持ってなくて。身分を証明するものは何一つないんだけど。それでも働くことって出来るかな?」
旅の恥はかき捨て。コネクションは積極的に使っていこう。
壁やん、仕事を紹介して。
人材派遣に登録できない?
「ちょっと待って。えーっと。日雇いの仕事なら?」
めちゃくちゃ悩んで絞り出してくれたのが日雇い派遣のお仕事。
壁やんありがとう。僕、日雇いで頑張るよ。
「日雇いでも全然大丈夫。まずは自活したい」
パンツもコーヒーもアイスも奢ってもらってる生活に慣れてしまう前に。
ちゃんと自分の足で立たないと。
上司に確認させてと言う壁やん。
それならお隣にいるよ。
違う? もっと上?
やっぱり仕事は簡単に紹介できないものだよね。
無理言ってごめん。前向きに検討よろしく。
ちなみに、日雇いってどんな仕事があるの? って教わっていたら。
車内のアナウンスがもうすぐ名古屋に着くことを知らせてくれる。
「定刻通りに三河安城を通過しました。次は名古屋に到着です」
僕は京都までだからまだしばらくはこの車内に缶詰なんだよな。
壁やんは? 博多まで?
じゃあもうしばらく一緒だねって話してた。
鈴村さんが降りる支度始めてて。
ボーッとしてたら置いていくとまで言われて。
「京都までじゃないんですか?」
「私が京都に行くと言ったか?」
言ってないけど。渡されたチケットは京都行きだ。
「旅は道連れだ。そこの若いのも借りていくよ」
鈴村さんは多菊さんに壁やんも連れていく了承を勝手に取り付けた。
壁やんいいの? これから博多で営業の仕事じゃないの?
「多菊さんが行けっていうし。もうしばらく一緒だね」
僕も壁やんが一緒なのは心強いけど。
縦社会ってやつは本当なんだね。
上司の言うことは絶対じゃん。
でもそれなら多菊さんすら従ってる鈴村さんって一体何者?
さっきまで見せてもらってたヤクザ組織の簡略図。
宮野会さんよりも上のどこかに鈴村さんがいるってこと?
謎が謎を呼ぶ。
僕の頭の中がどれだけグルグルしていても。
新幹線は時間通りに名古屋に到着する。
到着を告げるチャイムの音に促され、壁やんに付き添われるようにシートから立ち上がる。
名前の通り、壁みたいなんですけど。
そんなにピッタリくっついてボディガードじゃないんだから。
「僕は警備スタッフとして徴用されてるから、さっくんは僕から離れないでね」
えっ? 壁やんはボディガードなの?
そういう理由で鈴村さんから同行するよう指名された?
たしかに知らない人に守られるより、友達の壁やんのが信頼できる。
だけど僕に特別な警備って必要?
品川から名古屋まで短い時間でいろんなことがあった。
ヤクザだらけの新幹線。
壁やんとの再会。
鞘間組についての速習。
あっという間の1時間半。
名古屋駅の新幹線ホーム。無事に下車いたしました。
僕と鈴村さん、夏目さんに壁やん。それと強面さんがいっぱい。
おいおい。9号車内の半分くらいが名古屋で降りてるよ。
圧がやばい。他のお客さんに避けられてる。
壁やんはなんでそんなに普通にしてるの?
慣れ? 僕もこれに慣れなきゃ駄目?
人の壁に埋もれるように改札を抜けて。
広場みたいなところに意外な人が立っていた。
めっちゃサプライズ。
僕のキャパシティはそろそろ限界です!
「舎弟って下っ端なんじゃないの?」
「経理部部長が関連子会社に出向すると外部取締役になるみたいな話だよ」
ほほう。下っ端とか言っちゃ駄目なんだな。気をつけよ。
「あとはグループ経営っていってもこの縦線の流れが大事なんだ。横も関係性はあるけど大事なのは上下のライン。僕は宮野会、若頭の多菊さんに付いてる。さっきアイスを奢ってくれた人が多菊さんだよ」
そう説明されたから、ぴょこんと顔をのぞかせて、ぺこりと頭を下げておく。
新幹線のスゴクカタイアイス、ご馳走様でした。
あと先日はフルーツタルトもご馳走様でした。
細身のイタリースーツでインテリメガネのフルーツタルトは多菊さん。
壁やんの職場の上司。覚えておこう。
「そうなんだ。いろいろ繋がってて大変そう。ねえ。ヤクザの仕事って何するの? 地上げ?」
ついでだしいろいろ聞いとこ。社会勉強だ。
「今どき地上げとかないよ。警察に怒られる。仕事って一言では言い表せないな。うーん。たとえば僕はいま太陽光発電のパネルを販売してる」
ヤクザ=地上げ。めっちゃ偏見でした。ごめんなさい。
太陽光発電の話は前にも聞かせてくれたよね。
営業がんばってるんでしょ?
「他にも不動産管理とか浄水器の販売とか人材派遣をやってるとこあるな。本当にいろいろ。これだけの人間がいるからね。それぞれのシマでやれることをやれる人がやれる範囲でって感じだよ。僕は多菊さんに教わってる最中のペーペーだけどね」
壁やんがペーペーなら、ニートの僕はプーじゃん。
やっぱり仕事はしたいな。職種はなんでもいいから働きたい。
「僕はいまスマホや財布を持ってなくて。身分を証明するものは何一つないんだけど。それでも働くことって出来るかな?」
旅の恥はかき捨て。コネクションは積極的に使っていこう。
壁やん、仕事を紹介して。
人材派遣に登録できない?
「ちょっと待って。えーっと。日雇いの仕事なら?」
めちゃくちゃ悩んで絞り出してくれたのが日雇い派遣のお仕事。
壁やんありがとう。僕、日雇いで頑張るよ。
「日雇いでも全然大丈夫。まずは自活したい」
パンツもコーヒーもアイスも奢ってもらってる生活に慣れてしまう前に。
ちゃんと自分の足で立たないと。
上司に確認させてと言う壁やん。
それならお隣にいるよ。
違う? もっと上?
やっぱり仕事は簡単に紹介できないものだよね。
無理言ってごめん。前向きに検討よろしく。
ちなみに、日雇いってどんな仕事があるの? って教わっていたら。
車内のアナウンスがもうすぐ名古屋に着くことを知らせてくれる。
「定刻通りに三河安城を通過しました。次は名古屋に到着です」
僕は京都までだからまだしばらくはこの車内に缶詰なんだよな。
壁やんは? 博多まで?
じゃあもうしばらく一緒だねって話してた。
鈴村さんが降りる支度始めてて。
ボーッとしてたら置いていくとまで言われて。
「京都までじゃないんですか?」
「私が京都に行くと言ったか?」
言ってないけど。渡されたチケットは京都行きだ。
「旅は道連れだ。そこの若いのも借りていくよ」
鈴村さんは多菊さんに壁やんも連れていく了承を勝手に取り付けた。
壁やんいいの? これから博多で営業の仕事じゃないの?
「多菊さんが行けっていうし。もうしばらく一緒だね」
僕も壁やんが一緒なのは心強いけど。
縦社会ってやつは本当なんだね。
上司の言うことは絶対じゃん。
でもそれなら多菊さんすら従ってる鈴村さんって一体何者?
さっきまで見せてもらってたヤクザ組織の簡略図。
宮野会さんよりも上のどこかに鈴村さんがいるってこと?
謎が謎を呼ぶ。
僕の頭の中がどれだけグルグルしていても。
新幹線は時間通りに名古屋に到着する。
到着を告げるチャイムの音に促され、壁やんに付き添われるようにシートから立ち上がる。
名前の通り、壁みたいなんですけど。
そんなにピッタリくっついてボディガードじゃないんだから。
「僕は警備スタッフとして徴用されてるから、さっくんは僕から離れないでね」
えっ? 壁やんはボディガードなの?
そういう理由で鈴村さんから同行するよう指名された?
たしかに知らない人に守られるより、友達の壁やんのが信頼できる。
だけど僕に特別な警備って必要?
品川から名古屋まで短い時間でいろんなことがあった。
ヤクザだらけの新幹線。
壁やんとの再会。
鞘間組についての速習。
あっという間の1時間半。
名古屋駅の新幹線ホーム。無事に下車いたしました。
僕と鈴村さん、夏目さんに壁やん。それと強面さんがいっぱい。
おいおい。9号車内の半分くらいが名古屋で降りてるよ。
圧がやばい。他のお客さんに避けられてる。
壁やんはなんでそんなに普通にしてるの?
慣れ? 僕もこれに慣れなきゃ駄目?
人の壁に埋もれるように改札を抜けて。
広場みたいなところに意外な人が立っていた。
めっちゃサプライズ。
僕のキャパシティはそろそろ限界です!
2
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる