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恋愛サティスファクション
召しませゴクドー10
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「そろそろ終いにしようか」
鈴村さんが声をかけてきた。
だけど『うん。分かった』と頷く前に、新しいお客さんが来ちゃった。
「もう終いなんて早くないですか? 私はまだ遊んでないですけど」
「遊びたかったのなら、もっと早くに来るべきでしたね」
「3回ぐらいなら良いですよね? 彼も遊び足りない顔してますよ?」
お客さんが玲司君を指差す。
『あの、玲司君をゲームに誘うのはやめてください。ひたすら負けるだけなんで。あと3回なら僕は平気です。遊びましょう』
「お嬢さんは優しい子ですね」
『優しくはないよ。だから3回だけね』
最後のお客さんは丁寧な口調でダンディが服着て歩いてますって感じのロマンスグレイなおじ様。
着てるのは渋い紺鼠色の着物だけど。
きっと圭介さんがもっと年を重ねたらこんな感じになるんだろうな。
そう考えたら、声もどことなく似ている気がしてきた。
……まさかね?
取り合えずダンディなおじ様にも座ってもらって。
いまゲームに参加してるのは玲司君とおじ様とあと2人。
合わせて4人。ゲームの適正人数だ。
それでは始めようか。
皆の顔をぐるりと一通り見て、軽く頷く。
これが開始の合図。
カードの山から1枚引いて、チラリと確認。
今回のカードはダイヤのA。
カードを見たら、襟の合わせに刺して。
適当に置いていて風でめくれたらゲームにならないからね。
さて、皆さま。予想はどちらになさいます?
奇数だと思われる方は松の柄に。
偶数だと思われる方は桜の柄に。
どうぞ、お手持ちの菓子をお乗せください。
身ぶり手振りだけでも伝わるから、このゲームは好きだな。
手話で会話っていってもジェスチャーみたいに見れば意味が分かるものも多いし。
さて、おじ様はどっちだと思う?
3回だけって約束だけど、最初は見てるだけにする?
おじ様は少し考えたあと、お菓子の入った桐の箱を松の上に一つ、桜の上に二つ置いた。
そういう予想の仕方する人いるよね。
玲司君は散々迷って松に1箱。
他の2人は手持ちのお菓子を全部桜に置いた。
一度置いたら変更は禁止だよ。
それではカードのオープンです。
『ダイヤのA』
正解したのは玲司君と、いちおうおじ様もだね。
ハズレた2人はどうする?
手持ちのお菓子なくなっちゃったけど、成瀬さんに言えばお菓子を用意してくれるよ。
それともこのまま終わりにする?
そっか。これで終わりにして帰るんだね。
バイバイ。また機会があったら遊んでください。
お見送りは笑顔でね。
それでは、場を整えまして。次のゲームを始めよう。
参加は玲司君とおじ様だけで良いかな?
今度のカードはスペードの7。ラッキーセブン。
玲司君とおじ様が悩んでいる間に。
僕はさっきから気になっているお菓子の箱に手を伸ばす。
お行儀悪いかなとも思ったけど。
このゲーム、けっこう待ち時間多くて手持ち無沙汰になるんだよ。
そんな時にお菓子に囲まれてたら食べたくなるのも仕方ないじゃん。
お腹がすいているのも紛れる。
一口ずつ摘まみ食いしても怒られないし。
駄目なら鈴村さんが叱ってくれるでしょ。
おじ様が持ってきた桐の白木の箱は初めて見るお店の物。
小ぶりな
お弁当サイズの箱を1つ、両手で持つ。
おっ。見た目よりずっしりしてる。重たい。
中身はなんだろう?
桐のお重なんだし、和菓子なのかな。
包みを開いて、蓋をパカっと開けたら。
中に並んでいるのは、お団子?
色とりどりの綺麗な淡い色をした真ん丸なそれを1つ摘まんでみる。
ふんわりした触感。
一口で食べられる大きさだけど、女の子のふりをして、二口で食べよう。
お団子だと思ったら、餡子を丸めたお菓子だった。
餡子だけなのに甘さがくどくない。
あっさりしたこし餡が口の中でホロリと溶けて。
ほのかに桜の香りがするのは食べたのが薄いピンク色のやつだからかな。
緑の餡子は別の味?
「美味しいですか?」
『うん。とっても』
「気に入ってもらえて良かったです。若い方の口に合うか心配だったのですよ」
『美味しいお菓子に年齢は関係ないと思います。見た目も綺麗で落ち着いた味だから、甘いものが得意でない方でも大丈夫そうだし』
「下の段には別の菓子も入っているから。それも食べなさい」
おじ様に勧められて、重なってる上段をはずすと。
下の段には花の形にくりぬかれた寒天のお菓子。
キラキラしてて可愛い。
さっそく1ついただきます。
外側がシャリシャリした砂糖に包まれた寒天は、あっさりとした甘味でとっても大人向け。
これは本日のベストお菓子かも。
あーでも、さっき食べたショコラも美味しかったし、芋羊羮にジャムクッキー。
ポップな猫の缶に入ってたグミもジューシーで美味しかったな。
「本日のベストスイーツがたくさんありすぎて選べないのは分かったから。そろそろカードの表見せろよ。佐倉待ちだぞ」
しまった。ゲームの最中だったのを忘れてた。
玲司君に言われなかったら、もう一つ寒天を食べてたよ。
おじ様も待たせちゃってごめんなさい。
鈴村さんが声をかけてきた。
だけど『うん。分かった』と頷く前に、新しいお客さんが来ちゃった。
「もう終いなんて早くないですか? 私はまだ遊んでないですけど」
「遊びたかったのなら、もっと早くに来るべきでしたね」
「3回ぐらいなら良いですよね? 彼も遊び足りない顔してますよ?」
お客さんが玲司君を指差す。
『あの、玲司君をゲームに誘うのはやめてください。ひたすら負けるだけなんで。あと3回なら僕は平気です。遊びましょう』
「お嬢さんは優しい子ですね」
『優しくはないよ。だから3回だけね』
最後のお客さんは丁寧な口調でダンディが服着て歩いてますって感じのロマンスグレイなおじ様。
着てるのは渋い紺鼠色の着物だけど。
きっと圭介さんがもっと年を重ねたらこんな感じになるんだろうな。
そう考えたら、声もどことなく似ている気がしてきた。
……まさかね?
取り合えずダンディなおじ様にも座ってもらって。
いまゲームに参加してるのは玲司君とおじ様とあと2人。
合わせて4人。ゲームの適正人数だ。
それでは始めようか。
皆の顔をぐるりと一通り見て、軽く頷く。
これが開始の合図。
カードの山から1枚引いて、チラリと確認。
今回のカードはダイヤのA。
カードを見たら、襟の合わせに刺して。
適当に置いていて風でめくれたらゲームにならないからね。
さて、皆さま。予想はどちらになさいます?
奇数だと思われる方は松の柄に。
偶数だと思われる方は桜の柄に。
どうぞ、お手持ちの菓子をお乗せください。
身ぶり手振りだけでも伝わるから、このゲームは好きだな。
手話で会話っていってもジェスチャーみたいに見れば意味が分かるものも多いし。
さて、おじ様はどっちだと思う?
3回だけって約束だけど、最初は見てるだけにする?
おじ様は少し考えたあと、お菓子の入った桐の箱を松の上に一つ、桜の上に二つ置いた。
そういう予想の仕方する人いるよね。
玲司君は散々迷って松に1箱。
他の2人は手持ちのお菓子を全部桜に置いた。
一度置いたら変更は禁止だよ。
それではカードのオープンです。
『ダイヤのA』
正解したのは玲司君と、いちおうおじ様もだね。
ハズレた2人はどうする?
手持ちのお菓子なくなっちゃったけど、成瀬さんに言えばお菓子を用意してくれるよ。
それともこのまま終わりにする?
そっか。これで終わりにして帰るんだね。
バイバイ。また機会があったら遊んでください。
お見送りは笑顔でね。
それでは、場を整えまして。次のゲームを始めよう。
参加は玲司君とおじ様だけで良いかな?
今度のカードはスペードの7。ラッキーセブン。
玲司君とおじ様が悩んでいる間に。
僕はさっきから気になっているお菓子の箱に手を伸ばす。
お行儀悪いかなとも思ったけど。
このゲーム、けっこう待ち時間多くて手持ち無沙汰になるんだよ。
そんな時にお菓子に囲まれてたら食べたくなるのも仕方ないじゃん。
お腹がすいているのも紛れる。
一口ずつ摘まみ食いしても怒られないし。
駄目なら鈴村さんが叱ってくれるでしょ。
おじ様が持ってきた桐の白木の箱は初めて見るお店の物。
小ぶりな
お弁当サイズの箱を1つ、両手で持つ。
おっ。見た目よりずっしりしてる。重たい。
中身はなんだろう?
桐のお重なんだし、和菓子なのかな。
包みを開いて、蓋をパカっと開けたら。
中に並んでいるのは、お団子?
色とりどりの綺麗な淡い色をした真ん丸なそれを1つ摘まんでみる。
ふんわりした触感。
一口で食べられる大きさだけど、女の子のふりをして、二口で食べよう。
お団子だと思ったら、餡子を丸めたお菓子だった。
餡子だけなのに甘さがくどくない。
あっさりしたこし餡が口の中でホロリと溶けて。
ほのかに桜の香りがするのは食べたのが薄いピンク色のやつだからかな。
緑の餡子は別の味?
「美味しいですか?」
『うん。とっても』
「気に入ってもらえて良かったです。若い方の口に合うか心配だったのですよ」
『美味しいお菓子に年齢は関係ないと思います。見た目も綺麗で落ち着いた味だから、甘いものが得意でない方でも大丈夫そうだし』
「下の段には別の菓子も入っているから。それも食べなさい」
おじ様に勧められて、重なってる上段をはずすと。
下の段には花の形にくりぬかれた寒天のお菓子。
キラキラしてて可愛い。
さっそく1ついただきます。
外側がシャリシャリした砂糖に包まれた寒天は、あっさりとした甘味でとっても大人向け。
これは本日のベストお菓子かも。
あーでも、さっき食べたショコラも美味しかったし、芋羊羮にジャムクッキー。
ポップな猫の缶に入ってたグミもジューシーで美味しかったな。
「本日のベストスイーツがたくさんありすぎて選べないのは分かったから。そろそろカードの表見せろよ。佐倉待ちだぞ」
しまった。ゲームの最中だったのを忘れてた。
玲司君に言われなかったら、もう一つ寒天を食べてたよ。
おじ様も待たせちゃってごめんなさい。
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