60 / 469
恋愛サティスファクション
彼色わーどろーぶ5
しおりを挟む
「前向け。笑え。顔ひきつってるぞ。膝曲げすぎない。腰使って歩け」
僕の今の服装ではバイクの後ろに乗れないので、地下駐車場には向かわず正面エントランスを目指しているのだけど。
玲司君のスパルタ指導で僕は涙目です。
ロリータを着るときはヒールの低い靴を履いていたから、いきなり9センチのピンヒールなんて難易度高すぎだよ。
それなりに様になってきた頃には回りに人も増えてきて。
さっきまでの華やかなデザイナー軍団とは雰囲気の違うきっちりしたスーツ姿のオジサマとかもいる。
僕、場違いじゃない?
「佐倉、下向くな。堂々としてればイイんだよ。今日のお前はDFのデザイナーに呼ばれたフィッティングモデルなんだから」
本当に?
服たくさん貰っちゃったのも大丈夫なのか心配なんだけど。
「佐倉はビビりすぎ。ビクビクしてる方がムダに怪しまれんだよ。悪いことしてねぇんだから笑ってろ」
玲司君の言葉信じるからね。
何かあったら責任とってよ。
開き直って堂々と歩く。
働いている人の間をこんな派手な格好で歩いて良いのかとか悩んだら負けだ。
イメージはランウェイを歩くモデルさん。
チラチラ見られてる気がするけど気にしないっ。
むしろスマイル0円の心で笑い返してやる。
「良くなってきたぞ。そのまま笑ってろ」
「りょーかい」
玲司君はオプション。兼ガイドライン。
一人じゃ転ぶ自信がある。
ヒールで歩くのってこんなに難しいんだ。
玲司君が腰を支えてくれているから何とか歩けるけど、ふらつかないので精一杯。
正面エントランスのゲートにも警備員さんがいて。
入るときに借りた入館証をお返しする。
そのとき警備員さんから「お疲れさまです」と言われたので、つい「お疲れさまです」って返しちゃって。
警備員さんにビックリされました。そりゃするよね。
セクシーなワンピースに網タイツで中身は男とか驚かないわけがない。
「驚かせちゃってごめんなさい。僕が男なことは内緒でお願いします」
唇に指を当てて「しぃー」ってしたら、警備員さんは元気に「はい」って言ってくれたので口止めは大丈夫そう。
「また無自覚に色気振り撒いて」
玲司君はまたおかしなこと言って勝手に怒ってる。
「僕に振り撒くほど色気なんてないから。ですよね?」
警備員さんに中立な意見を聞かせてもらう。
「はいっ」
ほら。警備員さんもこう言ってるじゃん。
別に言わせたんじゃないし。
だから呆れたって目で見ないで。
入るときは裏からで分からなかったけど、見上げるほどに大きなビル全部が1つの会社とか。
もしかしなくても僕はスゴいところにお邪魔していたようだ。出てから気付く。
玲司君がしれっとしてたから僕も普通にしてたけど。
「んじゃ、飯行くか」
当たり前のようにタクシーを拾って乗り込む玲司君と、それに付いていくのに慣れてしまった僕。
それってどうなんだろう。
僕は友達のつもりでいるけど。
玲司君はお気に入りの相手を自分のテリトリーで連れ回してる感じがする。
それって楽しいのかな?
普段見られない場所に連れて行ってもらえて。
自分なら選ばない服を着せてもらえて。
デザイナーの人達の話も聞けて。
僕は楽しかったけど。
「ここまでヨロシク。道はお任せで」
玲司君がタクシーの運転手さんに渡したのは見慣れた紫のカード。
裏に書かれた住所をカーナビに入力してカードは返された。
カーナビの指示通りにタクシーは走り出した。
街中を走るタクシーの後部座席で僕は太ももや腰を撫でようとする玲司君の手を無言で叩き落とす。
何度ペチリと叩かれても、めげずに触りたがる玲司君は少し懲りてほしい。
なんだか僕が傲慢で狭量な人間みたいじゃないか。
悪いのは個室とはいえタクシーの運転手さんという他者がいる場所で痴漢を働く玲司君だ。
タクシーでの痴態はトラウマなんだよっ。
もぐら叩きのように玲司君の手をペチペチしているうちに、タクシーはオフィス街から繁華街へと移動して。
色鮮やかなネオンの中でタクシーは止まった。
初めて来たときはちょっとビクビクしてたのに。
何の気負いもなく階段を玲司君と一緒に降りていく。
入り口で店長さんが出迎えてくれた。
あっ髪の毛の色が変わってる。
前のブリーチきつめの金髪の似合ってたけどアッシュオリーブも素敵だな。
キツめの印象が和らいで僕はこっちのが好きだ。
「おつかー。飯食いにきたぜ」
「こんばんは」
ここはBGMが煩いし少しぐらいなら話しても大丈夫かな。
って思って小声で挨拶したんだけど。
店長さんは僕を二度見して、あんぐりと口を開けている。
驚き方もオーバーリアクションだなあ。
「えっ? 佐倉さんですか? また一段と化けましたね」
「いろいろありまして」
説明が面倒なので省きます。
「佐倉さんがご一緒なら個室にします?」
「個室なんてあったか?」
「新しく作ったんです。何かと便利ですよ」
「ならそこで。佐倉良かったな」
玲司君が遠慮なく僕の頭をガシガシと撫でる。
ウィッグがずれるのでほどほどでお願い。
「個室なら人の目とか気にせずお話しできるし助かります」
「私も佐倉さんとはもっとお話ししたかったので」
店長さんの案内でクラブの奥にずんずん進む。
この光と音と匂いも慣れてしまえばどうってことないな。
僕を見て口笛を吹いてきた男の人にも余裕をもってニッコリ笑ってバイバイできる。
一昨日来やがれって思いながら極上スマイルを振り撒けば、新しく出来たという個室スペースまですぐだ。
僕の今の服装ではバイクの後ろに乗れないので、地下駐車場には向かわず正面エントランスを目指しているのだけど。
玲司君のスパルタ指導で僕は涙目です。
ロリータを着るときはヒールの低い靴を履いていたから、いきなり9センチのピンヒールなんて難易度高すぎだよ。
それなりに様になってきた頃には回りに人も増えてきて。
さっきまでの華やかなデザイナー軍団とは雰囲気の違うきっちりしたスーツ姿のオジサマとかもいる。
僕、場違いじゃない?
「佐倉、下向くな。堂々としてればイイんだよ。今日のお前はDFのデザイナーに呼ばれたフィッティングモデルなんだから」
本当に?
服たくさん貰っちゃったのも大丈夫なのか心配なんだけど。
「佐倉はビビりすぎ。ビクビクしてる方がムダに怪しまれんだよ。悪いことしてねぇんだから笑ってろ」
玲司君の言葉信じるからね。
何かあったら責任とってよ。
開き直って堂々と歩く。
働いている人の間をこんな派手な格好で歩いて良いのかとか悩んだら負けだ。
イメージはランウェイを歩くモデルさん。
チラチラ見られてる気がするけど気にしないっ。
むしろスマイル0円の心で笑い返してやる。
「良くなってきたぞ。そのまま笑ってろ」
「りょーかい」
玲司君はオプション。兼ガイドライン。
一人じゃ転ぶ自信がある。
ヒールで歩くのってこんなに難しいんだ。
玲司君が腰を支えてくれているから何とか歩けるけど、ふらつかないので精一杯。
正面エントランスのゲートにも警備員さんがいて。
入るときに借りた入館証をお返しする。
そのとき警備員さんから「お疲れさまです」と言われたので、つい「お疲れさまです」って返しちゃって。
警備員さんにビックリされました。そりゃするよね。
セクシーなワンピースに網タイツで中身は男とか驚かないわけがない。
「驚かせちゃってごめんなさい。僕が男なことは内緒でお願いします」
唇に指を当てて「しぃー」ってしたら、警備員さんは元気に「はい」って言ってくれたので口止めは大丈夫そう。
「また無自覚に色気振り撒いて」
玲司君はまたおかしなこと言って勝手に怒ってる。
「僕に振り撒くほど色気なんてないから。ですよね?」
警備員さんに中立な意見を聞かせてもらう。
「はいっ」
ほら。警備員さんもこう言ってるじゃん。
別に言わせたんじゃないし。
だから呆れたって目で見ないで。
入るときは裏からで分からなかったけど、見上げるほどに大きなビル全部が1つの会社とか。
もしかしなくても僕はスゴいところにお邪魔していたようだ。出てから気付く。
玲司君がしれっとしてたから僕も普通にしてたけど。
「んじゃ、飯行くか」
当たり前のようにタクシーを拾って乗り込む玲司君と、それに付いていくのに慣れてしまった僕。
それってどうなんだろう。
僕は友達のつもりでいるけど。
玲司君はお気に入りの相手を自分のテリトリーで連れ回してる感じがする。
それって楽しいのかな?
普段見られない場所に連れて行ってもらえて。
自分なら選ばない服を着せてもらえて。
デザイナーの人達の話も聞けて。
僕は楽しかったけど。
「ここまでヨロシク。道はお任せで」
玲司君がタクシーの運転手さんに渡したのは見慣れた紫のカード。
裏に書かれた住所をカーナビに入力してカードは返された。
カーナビの指示通りにタクシーは走り出した。
街中を走るタクシーの後部座席で僕は太ももや腰を撫でようとする玲司君の手を無言で叩き落とす。
何度ペチリと叩かれても、めげずに触りたがる玲司君は少し懲りてほしい。
なんだか僕が傲慢で狭量な人間みたいじゃないか。
悪いのは個室とはいえタクシーの運転手さんという他者がいる場所で痴漢を働く玲司君だ。
タクシーでの痴態はトラウマなんだよっ。
もぐら叩きのように玲司君の手をペチペチしているうちに、タクシーはオフィス街から繁華街へと移動して。
色鮮やかなネオンの中でタクシーは止まった。
初めて来たときはちょっとビクビクしてたのに。
何の気負いもなく階段を玲司君と一緒に降りていく。
入り口で店長さんが出迎えてくれた。
あっ髪の毛の色が変わってる。
前のブリーチきつめの金髪の似合ってたけどアッシュオリーブも素敵だな。
キツめの印象が和らいで僕はこっちのが好きだ。
「おつかー。飯食いにきたぜ」
「こんばんは」
ここはBGMが煩いし少しぐらいなら話しても大丈夫かな。
って思って小声で挨拶したんだけど。
店長さんは僕を二度見して、あんぐりと口を開けている。
驚き方もオーバーリアクションだなあ。
「えっ? 佐倉さんですか? また一段と化けましたね」
「いろいろありまして」
説明が面倒なので省きます。
「佐倉さんがご一緒なら個室にします?」
「個室なんてあったか?」
「新しく作ったんです。何かと便利ですよ」
「ならそこで。佐倉良かったな」
玲司君が遠慮なく僕の頭をガシガシと撫でる。
ウィッグがずれるのでほどほどでお願い。
「個室なら人の目とか気にせずお話しできるし助かります」
「私も佐倉さんとはもっとお話ししたかったので」
店長さんの案内でクラブの奥にずんずん進む。
この光と音と匂いも慣れてしまえばどうってことないな。
僕を見て口笛を吹いてきた男の人にも余裕をもってニッコリ笑ってバイバイできる。
一昨日来やがれって思いながら極上スマイルを振り撒けば、新しく出来たという個室スペースまですぐだ。
2
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる