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くらげ

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バレンタインぱーりーぴーぽー9

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「そんなに圭が好きかよ」

うん。好きだ。
だけど男同士の恋愛は駄目かな? 気持ち悪い?
玲司君とは仲良くなりたかったから、ちょっと凹む。
でも、これが僕だから。
こんな僕では玲司君の友達になれないかな。

「佐倉がダメなんじゃねえ。あんな趣味悪いヤツはやめて、オレにしとけってハナシ」

もう。冗談はほどほどにして。
お友達になるつもりだったのが、いきなり恋愛対象とかジョークが過ぎるよ。

って、腰を撫でないで。腕の中に抱き寄せないで。耳元で囁くの禁止。
耳たぶ甘噛みはギルティです!
玲司君がRoi君だって分かってから、そのギャップで余計にドキドキなんだから。
僕で遊ぶのはやめてっ。
こういう仲良くなり方は求めてない。

「にしても、圭遅いな。佐倉はもうそろそろ帰った方がいいだろ。朝までいる気か?」

玲司君の言葉を受けて時計を確認すると、すでに深夜0時を過ぎている。
明日も仕事だ。
いつまでもここにはいられない。
帰るべきなんだろう。

だけど、圭介さんとはまだ連絡がとれない。
会いたかった相手に会えるつもりでいたのに会えないのは、会えないって分かっているときに会えないのより寂しい。

「そんな顔すんなよ。帰るのは圭の家で良いか?」

うん。

「オレも一緒に行ってやるから。案外忘れて寝てるだけかも知れねぇし」

うーん。だと良いけど。

帰り支度の前にご飯を食べ終わったから帰りますと連絡しておく。
すれ違いは嫌だからね。

「もう帰るんですか? 圭さん来てないですよ」
「来ねぇ方が悪いんだよ。これ以上、ウサギを置いとくわけにもいかねぇから圭の家まで届けとく」
「ちゃんと送り届けてくださいよ」
「へいへい」

入るときに会ったハデな髪型のお兄さんが席まで来て、玲司君とお話中。
玲司君とはYESとNOでお話出来るようになったけど、スタッフのお兄さんとは難しいかな。
黙って2人の会話を聞いておく。

だいたい、今日のDJの人の盛り上げ方がどうとか、バレンタインイベント用に特別な飾り付けにしたフロアのこととか。
僕にはさっぱり分かんないから。
強いて言えばハートがいっぱいで可愛いってぐらいだけど、それも圭介さんがいないから寂しさ倍増。
普段の様子を知っている玲司君は良いところとそうでもないところをスタッフのお兄さんに話してる。
すごいな。遊び慣れてる感じだ。

「入り口にタクシー呼んでおくんで行きましょう」

そう言ったスタッフのお兄さんが耳につけたインカムで他のスタッフさんに指示を出した。
へぇ。スタッフさんに頼むとタクシーを呼んでおいてくれるの?
すごいね。ホテルのコンシェルジュみたい。

来たときよりも人がいっぱいなクラブの中をスタッフのお兄さんと玲司君に挟まれて移動する。
人が多すぎて、場慣れしてない僕は玲司君にがっしり掴まれてないと、どこかに流されてしまいそうだ。

玲司君にしがみついて何とか見覚えのあるエントランスにたどり着いた。
あの分厚い扉が閉まると、音が遮断されてホッとする。
なんでフロアを歩くだけで疲れるの?
階段使ってないよ。エレベーターだったよ。
あの音と光が僕には合わないのかもしれない。

「ウサギちゃんもまた遊びに来てくださいね。今日は玲司さんに付き合ってご飯食べただけで終わっちゃったでしょ? もっと楽しいこといっぱいあるから、いつでも歓迎しますよ」

クラブの名前が印刷された紫色のカードを受け取る。
同じようなものを今日も持ってきたけど、こっちには日付とかイベントの名前は書いてない。

「あー。そんなもん渡して」
「なんですか? また遊びに来てくださいと言ってるだけですよ」
「言葉通りに受け取って、こいつ独りでノコノコ来たらどうすんだよ」
「もちろんサービス満点のおもてなしで歓迎します」
「ケーキの花火でビビってるウサギに何する気だよ」
「えー!? フォンダンショコラの花火ダメでした? 席に置いておいたメガネかけるとハート型に見えるって女の子のウケが結構良いんですけど」
「そんなメガネあったか?」

どうだろう? 僕に聞かないで。

「マジですか」

ごめんなさい。次はハートの花火も楽しみたいと思います。

ごめんなさいのジェスチャーにもらったカードを指先で指し、最後に指でハートを作る。
僕がクラブでの正しい楽しみ方を知らなかっただけで、スタッフのお兄さんは悪くないから。
そんなに落ち込まないで。
うん。お兄さんもハデめで僕の好みとは違うけど格好良いんだから、ヘコんでる顔より笑ってる方が良いよ。

「是非とも次は完璧なおもてなしをさせてくださいね。お待ちしています」

はい。ご丁寧にありがとうございます。

スタッフのお兄さんともジェスチャーでお話出来そうだし、次は玲司君のフォローがなくても大丈夫かな。
でも、このお兄さんが次の時もいるとは限らないか。
居てくれると来やすいんだけど。
やっぱり、知ってる顔がいる方が安心だよね。

「オレ、知ーらね」

僕がもらったカードを鞄に仕舞っていると、玲司君がこう言ってたけど。
どうしたの? 僕、クラブの雰囲気から浮いてた? やっぱり、もう来ない方が良い?

「まあ、遊びたくなったら来れば良いんじゃね。飯も旨いし」

うん。ご飯美味しかった。

「ただし、来るときは圭に言ってから来いよ。それかオレが一緒のときか」

うん。圭介さんに内緒で来るわけないじゃん。次は圭介さんと来たい。

「じゃあ、OK。そろそろタクシーも着いてるだろ。オレら行くから。またなー。ごちそーさん」

玲司君に腰を抱かれながら階段を上がる。
スタッフのお兄さんもお見送りで外まで来てくれた。
タクシーに乗って、窓越しに手を振ってバイバイ。
すごいなぁ。VIPなチケットだとお見送りまでついてくるとか、三ツ星ホテルみたいだ。
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