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水星会編
30.制服の縁
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その日の講義を受け終わった怜央はシエロを連れて服屋にきていた。
そこでは異世界中から集めたと思われるありとあらゆる種類の服が扱われていた。
アリータが好みそうな煌びやかなドレスやコバートの来ている民族衣装、日本にもありそうな和服、誰が欲しがるのかわからないようなボロ布の服まであった。
「わぁー、すごい! 色々な服があるんですね!」
「この世界は他の世界に行き来する人が多いからね。俺も来るのは初めてだけど、ある意味納得のラインナップって感じだな」
ここに来たのはシエロの服、特に寝巻きなどを買いに来た訳だが怜央には別の目的もあった。
それは、学ランの予備を見つけることである。
依頼をこなしていて怜央が思ったのは、近いうちに学ランもボロボロになるのではないかということ。
ゴブリンと戦った時もそうだし、テミスと茂みに隠れていた時もそうだ。
ボロボロになりやすい環境にあることを考えると、同じような服が何着かあってもいい。
そう考えて怜央は予備の服が欲しかったのだ。
シエロが服を漁っているのを見守りながら、怜央もそれらしき服がないか探していた。
「夏目様! この服なんてどうでしょうか? 私に似合いますか?」
シエロが自分に重ねたのは皮と布で出来た動きやすい服である。
何処と無くハンター感が滲む服であったが、シエロの特性を考えるとちょうど良いのかもしれない。
怜央は本人が選んだことも尊重し、無難に賛成した。
「うん、良さそうだね」
するとシエロは嬉しそうにして、
「ほんとですか!? じゃあこれにします!」
と即決で決めてしまった。
「えっ、もっと他のを見てもいいよ? 時間には余裕あるし」
「いえ、夏目様からのお墨付きも頂きましたしこの服はこう……なんといいますか、ぐっと来るものがありました! それにりーずなぶるです!」
「ん? ああ、お金のことなら心配しないでいいからね? 無理に来て貰ったのはこっちの我儘だしそれくらいはね」
「居候の身としてはこれ以上夏目様の負担を増やす訳にはいきませんから! 例えいいとは言われてもそれは夏目様がお優しいからで、それに甘える訳にはいきません!」
「んんー……」
やたらと持ち上げられて少し照れくさい怜央は頭を掻いた。
「そんなに遠慮しないでいいんだけどなあ……。とりあえず、他にもほしいのがあれば買っていいからね? あっ、寝巻きは買って。相部屋だと流石にちょっと不味いからね」
「夏目様がそう仰るのなら……そうします」
シエロは少し残念そうに了承し、私服と寝巻き、下着を必要最低限買った。
◆◇◆
「あれ、夏目様は帰られないんですか?」
紙袋を持ったシエロは店から出ない怜央に尋ねた。
「ああ、俺は少し捜し物があるから先に帰ってて」
「私も一緒に探しましょうか?」
「いやいいよ、それより先に帰ってリヴィアを手伝ってあげて」
シエロは頷き了解の意を告げると先に帰って行った。
シエロと歩き回った怜央は未だ学ランを見つけられずにいたが、大半の所は見て回ったので目星は付けていた。
それがあると思しき場所に行って辺りを探していると、マネキンに着せられた状態で飾られている学ランとセーラー服が目に入った。
それはまるで、新学期を迎える前の服屋のようであった。
ようやく見つけたと喜ぶ怜央はそれに近づいて、何気なく材質を確認しようと手を伸ばしたその時、隣のセーラー服に全く同じように手を伸ばした女性がいた。
偶然にもその女性は、怜央と同じく既にセーラー服を身につけている。
髪は黒のストレートヘアで腰ほどの長さがある。
スカートは床スレスレで一昔前の不良を彷彿とさせた。
手には黒い革手袋をはめて、切れ長の目からは威圧感を覚える。
そんな女性も同じく怜央の存在に気づき、声をかけてきた。
「ほう……貴様もわかるのか、この服の良さが」
「ええ、まぁ……」
「この世界には色んな奴がいるが、学ランを着てるやつは初めて見た。制服好きに悪い奴は居ないからな」
「は、はぁ……」
その女性の突飛な理論には、ただただ困惑するばかり。
「私は玲奈。貴様は?」
「夏目と言います。夏目怜央」
「夏目……はて、どこかで聞いた名だな?」
玲奈は顎に手を当てて記憶を漁っているようだが終ぞ思い出せなかった。
「まあいい。見たところ新入生のようだが……もうギルドには入ったか?」
玲奈は怜央の指を見て、新入生であることに気づいた。
「いいえ、まだです」
「それは良かった。これも何かの縁だ。お前がその気なら私のギルドに入れてやらんことも無いぞ」
「え……いや、その――」
「まあ今すぐ決めろってのは酷ってものか。同じ学園に通う者同士、いつかまた会うこともあるだろう。その時答えを聞かせてくれればいい。それとこれは賄賂ってことでもないが、同類のよしみだ」
玲奈は1枚のチケットを怜央に渡した。
それは割引券のようで、どの服でも80%offになるという凄い物だった。
「いやだから、自分は――」
「遠慮しなくていい、受け取れ」
怜央はギルドについて断りを入れようとしたのだが、無理やり押し切られてチケットを受け取ってしまった。
すると玲奈は満足気に別れを告げて、どこかへと去っていった。
一方的だがどこか憎めない、姐さん雰囲気を漂わせる玲奈だった。
そこでは異世界中から集めたと思われるありとあらゆる種類の服が扱われていた。
アリータが好みそうな煌びやかなドレスやコバートの来ている民族衣装、日本にもありそうな和服、誰が欲しがるのかわからないようなボロ布の服まであった。
「わぁー、すごい! 色々な服があるんですね!」
「この世界は他の世界に行き来する人が多いからね。俺も来るのは初めてだけど、ある意味納得のラインナップって感じだな」
ここに来たのはシエロの服、特に寝巻きなどを買いに来た訳だが怜央には別の目的もあった。
それは、学ランの予備を見つけることである。
依頼をこなしていて怜央が思ったのは、近いうちに学ランもボロボロになるのではないかということ。
ゴブリンと戦った時もそうだし、テミスと茂みに隠れていた時もそうだ。
ボロボロになりやすい環境にあることを考えると、同じような服が何着かあってもいい。
そう考えて怜央は予備の服が欲しかったのだ。
シエロが服を漁っているのを見守りながら、怜央もそれらしき服がないか探していた。
「夏目様! この服なんてどうでしょうか? 私に似合いますか?」
シエロが自分に重ねたのは皮と布で出来た動きやすい服である。
何処と無くハンター感が滲む服であったが、シエロの特性を考えるとちょうど良いのかもしれない。
怜央は本人が選んだことも尊重し、無難に賛成した。
「うん、良さそうだね」
するとシエロは嬉しそうにして、
「ほんとですか!? じゃあこれにします!」
と即決で決めてしまった。
「えっ、もっと他のを見てもいいよ? 時間には余裕あるし」
「いえ、夏目様からのお墨付きも頂きましたしこの服はこう……なんといいますか、ぐっと来るものがありました! それにりーずなぶるです!」
「ん? ああ、お金のことなら心配しないでいいからね? 無理に来て貰ったのはこっちの我儘だしそれくらいはね」
「居候の身としてはこれ以上夏目様の負担を増やす訳にはいきませんから! 例えいいとは言われてもそれは夏目様がお優しいからで、それに甘える訳にはいきません!」
「んんー……」
やたらと持ち上げられて少し照れくさい怜央は頭を掻いた。
「そんなに遠慮しないでいいんだけどなあ……。とりあえず、他にもほしいのがあれば買っていいからね? あっ、寝巻きは買って。相部屋だと流石にちょっと不味いからね」
「夏目様がそう仰るのなら……そうします」
シエロは少し残念そうに了承し、私服と寝巻き、下着を必要最低限買った。
◆◇◆
「あれ、夏目様は帰られないんですか?」
紙袋を持ったシエロは店から出ない怜央に尋ねた。
「ああ、俺は少し捜し物があるから先に帰ってて」
「私も一緒に探しましょうか?」
「いやいいよ、それより先に帰ってリヴィアを手伝ってあげて」
シエロは頷き了解の意を告げると先に帰って行った。
シエロと歩き回った怜央は未だ学ランを見つけられずにいたが、大半の所は見て回ったので目星は付けていた。
それがあると思しき場所に行って辺りを探していると、マネキンに着せられた状態で飾られている学ランとセーラー服が目に入った。
それはまるで、新学期を迎える前の服屋のようであった。
ようやく見つけたと喜ぶ怜央はそれに近づいて、何気なく材質を確認しようと手を伸ばしたその時、隣のセーラー服に全く同じように手を伸ばした女性がいた。
偶然にもその女性は、怜央と同じく既にセーラー服を身につけている。
髪は黒のストレートヘアで腰ほどの長さがある。
スカートは床スレスレで一昔前の不良を彷彿とさせた。
手には黒い革手袋をはめて、切れ長の目からは威圧感を覚える。
そんな女性も同じく怜央の存在に気づき、声をかけてきた。
「ほう……貴様もわかるのか、この服の良さが」
「ええ、まぁ……」
「この世界には色んな奴がいるが、学ランを着てるやつは初めて見た。制服好きに悪い奴は居ないからな」
「は、はぁ……」
その女性の突飛な理論には、ただただ困惑するばかり。
「私は玲奈。貴様は?」
「夏目と言います。夏目怜央」
「夏目……はて、どこかで聞いた名だな?」
玲奈は顎に手を当てて記憶を漁っているようだが終ぞ思い出せなかった。
「まあいい。見たところ新入生のようだが……もうギルドには入ったか?」
玲奈は怜央の指を見て、新入生であることに気づいた。
「いいえ、まだです」
「それは良かった。これも何かの縁だ。お前がその気なら私のギルドに入れてやらんことも無いぞ」
「え……いや、その――」
「まあ今すぐ決めろってのは酷ってものか。同じ学園に通う者同士、いつかまた会うこともあるだろう。その時答えを聞かせてくれればいい。それとこれは賄賂ってことでもないが、同類のよしみだ」
玲奈は1枚のチケットを怜央に渡した。
それは割引券のようで、どの服でも80%offになるという凄い物だった。
「いやだから、自分は――」
「遠慮しなくていい、受け取れ」
怜央はギルドについて断りを入れようとしたのだが、無理やり押し切られてチケットを受け取ってしまった。
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