【R-18】呪いを解かない神官ちゃん

右折坊太郎

文字の大きさ
上 下
18 / 19
呪いの発現編

18、眠り

しおりを挟む
「ミューさん、ごめんね……」
 呪いが落ち着いたユーリは、顔を赤らめたまま、ミューに謝罪した。

「い、いえ……大丈夫です」
 そう答えるミューも同様に顔が赤く、彼の顔を見ることが出来ずにいる。

 行為が終わり、二人とも衣服を整え、ベッドの上に並んで座っていた。

 ミューは自身の下腹部に手を当て、魔法を発動させる。

 紫色の魔法陣が光り輝き、すぐに発光は治まる。

 その光景を見ていたユーリは、何をしているのか気になったようで、
「その魔法は……?」と尋ねた。

 ミューは眉を下げ、困ったような笑みを浮かべる。
「これは『避妊魔法』です。妊娠しないように、しないといけませんから……」

 妊娠という単語に、ユーリは罪悪感を覚え、背筋に冷や汗が流れた。

 そんな彼の心境を知らずに、ミューは続きを話す。
「簡単な魔法ですよ。魔法職じゃない人でも、覚えられますし……。女性の冒険者は、盗賊やモンスターに襲われる危険があるので。冒険者同士でも、酔った勢いで肉体関係を持つ方も多いと聞きますから……」

「そんな魔法あるんだ……初めて知ったよ」

「ユーリさんは男の人ですから、知らなくて当然ですよ。まさか自分が、この魔法を使うことになるなんて……思いもしませんでした」
 赤らんだ顔のまま、ミューは精液を出し終え、元通りに小さくなった自身の下腹部を撫でた。

 嬉しそうに、目を細めている。

(ユーリさんの赤ちゃん……いつか欲しいですねっ♡)

 ユーリは冒険者として成功している為、子どもを育てられる金銭はあろうが、ミューは冒険者として未熟な身。

(立派な冒険者になった、その時には――)
 ユーリの子を孕んだ光景を頭に浮かべ、ミューは頬を緩めた。

 柔らかな雰囲気になったミューに、ユーリも緊張を解く。
「ミューさん、呪いのせいでこんなことになっちゃったけど――本当にありがとう」

 ユーリの笑顔は、ミューにとって、以前より距離が近くなったように感じられた。
「い、いえ……ユーリさんのお力になりたかったですから。そ、そそそ……それにユーリさんが初めての相手で、良かったです……っ」

 今度のミューは、視線を少し逸らしたりもしたが、最後にはユーリの顔を見て、言うことが出来た。

「ミューさん……」
 ミューの健気さに、ユーリは胸を打たれる。

 二人は互いへの愛おしさから、あれだけ身体を求め合ったというのに、再び劣情が湧いてきているようだった。

 呪いとは関係がない、愛情を与えあうだけの性行為。

 今すぐそれに及びたい気持ちはあったが、そこへ踏み出すには、まだ二人とも勇気がなかった。

 ユーリは感情を振り切る様に、視線を逸らしながらも明るい声を出す。
「も、もう夜も遅いし……寝ようかっ!?」

「そ、そうですね……っ!」
 ミューも臆病さが顔を出し、同意した。

 深夜を過ぎ、もう朝に近い時間帯。
 二人は、一緒のベッドで横になった。

 明かりを消した室内で、やがて暗闇に目が慣れてくる。

 互いの顔が近くにある状況で、ミューは心底楽しそうな笑みを浮かべる。
「これからも、よろしくお願いしますね……ユーリさんっ♡」

 ユーリも、ミューとの絆が深まったことを、感じていた。
「うん、よろしくね」

 共に笑い、眠りにつく。

 心地よい疲労と、これまでにない幸福を感じながら、瞼を閉じ、二人は意識を手放した――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...