【R-18】呪いを解かない神官ちゃん

右折坊太郎

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呪いの発現編

10、帰還

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 ミューが奉仕を続けた結果、呪いは一応、治まった。

「何とか、治まりましたね……」
「そ、そうだね、助かったよ。本当にありがとう……!」
「い、いえ……当然のことを、したまで……ですからっ」

 二人は魔法で身綺麗にすると、回収物をまとめ、遺跡を出る。
 時刻も既に夕方となり、オレンジ色の夕陽が二人を照らす。

 お互い顔が赤く、先ほどの興奮を引きずっているのか、どこかソワソワした雰囲気であった。
 行為は手と口だけで終わり、その先には、いっていない。

 ユーリの身体は少しの落ち着きを見せているが、呪いとは全く関係のないミューの方は、身体が火照ったままである。

 両者とも、身体を重ねたいと思いつつも、呪いが治まった為、建前を無くしている現状。

(もし、次に呪いが発動すれば、その時は……)と二人とも、同じ気持ちでいる。

 そんな中、雰囲気を変えようと、ユーリは努めて明るい声を出す。
「と、とにかく、依頼の報告に戻ろう。ローザさん達にも伝えておきたい情報もあるし!」
「そ、そうですねっ!」

 気まずさのせいか、帰路を行く二人の間に、言葉は少ない。
 街に戻り、酒場の中に入ると、カウンターでローザが笑って二人を迎えた。

「おかえり! 遺跡は、どうだった?」
「あ、実は――」

 二人の顔が赤いのに気付き、ローザはいぶかし気な目を向ける。
 ユーリが重々しく口を開き、遺跡で起きた出来事を、掻い摘んで説明する。



「ほう……『サキュバスの呪いで、発情する』ねぇ?」
「……はい」

 二人を気遣ったのか、カウンターの奥にある別室で、ローザは事情を聞いてくれた。

 ローザの私室のひとつだろう、小さな部屋のテーブルを三人は囲んでいる。

(なるほど、道理で……二人の様子が変なわけだ)
 ローザは二人の顔が赤いことから、その呪いのせいで何かあった事を、見通していた。

 ユーリがいつもと違う、歯切れの悪い口を開き、
「それで、ミューさんが呪いを解けるような腕前になるのを、待つつもりなんですが……。これ、実は解けたりしませんよね?」とローザに問う。

 彼女はユーリに近付き、彼の身体に手をかざすと、ミューがしたように呪いを調べ始める。

「うーん、相当に強い呪いのようだね。普通は、身体に呪いを示す紋様が刻まれるもんだけど、それも巧妙に不可視になるよう隠されてる。対象以外の解呪を受け付けないように出来るなんて、大したサキュバスだよ。強力な聖水や術者だろうと、解くのは止めておいた方が賢明だろうね。強引に解呪した場合は、別の問題が起きることだって有りえる……」
「そうですか……」

 気落ちするユーリの肩に、ローザは手をかけ、
「まぁ、当分は大変だろうけど、ミューが解いてくれるようになるまで、頑張んな!」とカラカラと笑う。

 そして、意味ありげな視線を、ミューに向ける。

 ――見透かされている。

 ミューは直感で、そう思った。
 自身が呪いを解ける力を持っていることを、きっとローザは見抜いているのだろう。

 そのことを彼女がユーリに話し、バレてしまわないか、ミューは背筋に寒気を感じ、身を硬くする。

「――大丈夫だよ、安心しな」
 ローザは、そう言った。

 これは、ユーリに向けて言った言葉だが、ミューに対しての意味も含んでいる。
 ローザはチラリとミューを見て、ウィンクした。

 秘密にしといておくよ――という意思表示のようだ。

「さて、他に何か情報はあるかい? 特に、そのサキュバスについてとか」
「そういえば、呪いをかける以外には、攻撃してこなかったんですよね……」とローザとユーリが会話を続ける。

 ミューは肩を撫でおろすと、その会話の続きに参加した。
「たしか、自分のことを、『善良なサキュバス』って言ってましたよね……」

「善良なサキュバス? もしかしたら――」
 暫く考えこんだローザが、何か思い出したのか口を開いた――。
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