4 / 19
呪いの発現編
4、実力
しおりを挟む
「それじゃあ、簡単な依頼から始めてみようか」
「は、はいっ!」
会話を終え、パーティーを組むことになったユーリとミューは、酒場を後にする。
簡単に依頼の手続きを済ませ、外に出た。
時刻は、朝。
天気は良く、雨は降りそうにない。
暖かな春風が吹き、気持ちの良い一日になる予感がしてくる。
受けた依頼は、街の近くにある森に出た、熊の形をしたモンスター、バンディットベア一匹の討伐だった。
農作物を嗅ぎつけたのか、農村近くに出没し、近隣住民が怯えているらしい。
バンディットベアは、体格が大きく、凶暴ではあるが、武器を用いたスキルや魔法が使える冒険者からすれば、そこまでの脅威ではない。
ユーリはローザから聞いていたが、ミューの実力をこの目で見てみたい意図があった。
軽く準備を整えた二人は、農村へ向かい、情報を収集する。
バンディットベアを見た住民から、目撃情報を聞き、該当する場所から始め、捜索した。
「――あれだね」
「……はい」
茂みに隠れた二人は、標的を見つける。
黒い毛皮に覆われ、頭頂部には赤いタテガミを持つ、巨体の熊がいた。
のそのそと歩き、食べ物を探し回っている様子。
「ひとりでやれそう?」
「あ、えっと……はい」
そう答えるミューは、少し緊張しているようだ。
「大丈夫。何かあったら、すぐ俺がフォローするよ。安心して」
「ユーリさん……。わかりました」
酒場で見せた時と変わらない、柔らかなユーリの笑みに、ミューの緊張は解れたようだった。
杖を強く握りしめ、あまり音を立てないよう、バンディットベアの後方30メートルほどの位置に、移動する。
杖を掲げ、魔力で青く発光する魔法陣を浮かび上がらせた。
バンディットベアは、背後にいるミューに気付く様子はない。
――そして、魔法陣が一際強く発光した瞬間。
杖の先端から、無数の氷の杭が放たれた。
異変を感じたのか、バンディットベアは振り返る。
だが、高速で飛来してくる物体を避ける間すらなく、身体を貫かれた。
飛んだ氷の杭は、槍のように鋭く、その全てが全身に命中している。
『グォォオオァアアァッーーッ!?』
断末魔を上げ、血を噴き出しながら、その場に大きな音を出して倒れ、絶命する。
(凄いね……。魔法も素早く使えるし、攻撃魔法の制御も申し分ない。ローザさんの言う通り、腕は確かだ)
周囲の安全を確認し、ユーリはミューに駆け寄る。
「お見事。いやぁ、大したもんだねっ!」
「は、はい……ありがとうございます」
ミューは照れて、顔を赤くしていた。
「それじゃあ、依頼も達成したことだし、村の人達に報告へいこうか」
「……そうですね」
こうして彼らは無事に、バンディットベアの討伐を終えた――。
「は、はいっ!」
会話を終え、パーティーを組むことになったユーリとミューは、酒場を後にする。
簡単に依頼の手続きを済ませ、外に出た。
時刻は、朝。
天気は良く、雨は降りそうにない。
暖かな春風が吹き、気持ちの良い一日になる予感がしてくる。
受けた依頼は、街の近くにある森に出た、熊の形をしたモンスター、バンディットベア一匹の討伐だった。
農作物を嗅ぎつけたのか、農村近くに出没し、近隣住民が怯えているらしい。
バンディットベアは、体格が大きく、凶暴ではあるが、武器を用いたスキルや魔法が使える冒険者からすれば、そこまでの脅威ではない。
ユーリはローザから聞いていたが、ミューの実力をこの目で見てみたい意図があった。
軽く準備を整えた二人は、農村へ向かい、情報を収集する。
バンディットベアを見た住民から、目撃情報を聞き、該当する場所から始め、捜索した。
「――あれだね」
「……はい」
茂みに隠れた二人は、標的を見つける。
黒い毛皮に覆われ、頭頂部には赤いタテガミを持つ、巨体の熊がいた。
のそのそと歩き、食べ物を探し回っている様子。
「ひとりでやれそう?」
「あ、えっと……はい」
そう答えるミューは、少し緊張しているようだ。
「大丈夫。何かあったら、すぐ俺がフォローするよ。安心して」
「ユーリさん……。わかりました」
酒場で見せた時と変わらない、柔らかなユーリの笑みに、ミューの緊張は解れたようだった。
杖を強く握りしめ、あまり音を立てないよう、バンディットベアの後方30メートルほどの位置に、移動する。
杖を掲げ、魔力で青く発光する魔法陣を浮かび上がらせた。
バンディットベアは、背後にいるミューに気付く様子はない。
――そして、魔法陣が一際強く発光した瞬間。
杖の先端から、無数の氷の杭が放たれた。
異変を感じたのか、バンディットベアは振り返る。
だが、高速で飛来してくる物体を避ける間すらなく、身体を貫かれた。
飛んだ氷の杭は、槍のように鋭く、その全てが全身に命中している。
『グォォオオァアアァッーーッ!?』
断末魔を上げ、血を噴き出しながら、その場に大きな音を出して倒れ、絶命する。
(凄いね……。魔法も素早く使えるし、攻撃魔法の制御も申し分ない。ローザさんの言う通り、腕は確かだ)
周囲の安全を確認し、ユーリはミューに駆け寄る。
「お見事。いやぁ、大したもんだねっ!」
「は、はい……ありがとうございます」
ミューは照れて、顔を赤くしていた。
「それじゃあ、依頼も達成したことだし、村の人達に報告へいこうか」
「……そうですね」
こうして彼らは無事に、バンディットベアの討伐を終えた――。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。



サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる