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呪いの発現編
3、きっかけ
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『なるほど。それで、解呪が得意で、ある程度戦闘もこなせる仲間が欲しい――と?』
「はい……そういう人、いませんか?」
黒い長髪に、切れ長の燃えるように赤い瞳。
美しく、色香溢れる顔つき。
高い背丈に褐色の肌、豊かな胸と、思わず手を伸ばして触りたくなる、ヒップ。
若くして現役を退いてなお、厳しい鍛錬を欠かしていないことは、彼女の引き締まった身体つきでわかる。
これが、かつて冒険者として最高位のSランク冒険者であり、この酒場の女主人ローザだ。
彼女はユーリの相談を受け、何かを思いついたのか、一度目を見開くと、ニンマリと笑う。
「そうさねぇ、良さげなのが一人いるよ。お前さんと歳も近い、神官の子がね」
「……詳しく聞かせてください」
「あいよっ! 要望通り、神官だから解呪も出来るし、アンデッドの対処も出来る。軽くアタシが手合わせしたから、戦闘に関しても、それなりに戦えるのは確認済み。性格は気弱で、人見知りだけど優しい子だよ。ただ――」
「ただ……?」
「――まだ、誰とも組んだことがない。初心者さ」
「なるほど。才能や技術はあっても、経験不足と?」
「そう。アタシとしても、ああいう前途有望な冒険者は、大事にしたい。だから、信頼出来るヤツと組ませたいんだ」
「お世辞でも、そう思ってもらえて光栄です」
「事実さ。あの子、田舎から出てきた子で、騙されやすそうだからね。交渉も苦手そうだし、金にうるさいヤツと組ませたりなんかしたら、分け前もロクにもらえなくなるのは、目に見える。ちなみに――あの子だよ」
ローザが指差し、そちらを見る。
そこには、酒場の隅にちょこんと座り、視線を落とし、落ち込んだ様子で、テーブルの上の飲み物をじっと見つめるミューの姿があった。
「……可愛い子ですね」
「だろう?」
「……えぇ」
重ためな前髪をしていてもわかる、可愛らしい顔立ちに、ユーリの心は浮つく。
見られているミューはというと、近くの席で、突然大声を出して笑った冒険者パーティーに驚き、身体を硬直させていた。
(確かに、気が弱そうだ……)
肩身が狭そうにしている姿から、自分に自信がないタイプなのは間違いない、とユーリは推測した。
明らかに問題を抱え、困っている。
そんな人を、彼は放っておけるタイプではなかった。
「さっきの話、受けてもいいですか?」
「もちろんだよ」
ローザは、最初からこうなることをわかっていたように、ニヤリと笑った。
「ありがとうございます」
「あいよ。頑張んなっ!」
ユーリは席を立ち上がる。
冒険者の群れをすり抜け、ミューの元へと近づいていく――。
「はい……そういう人、いませんか?」
黒い長髪に、切れ長の燃えるように赤い瞳。
美しく、色香溢れる顔つき。
高い背丈に褐色の肌、豊かな胸と、思わず手を伸ばして触りたくなる、ヒップ。
若くして現役を退いてなお、厳しい鍛錬を欠かしていないことは、彼女の引き締まった身体つきでわかる。
これが、かつて冒険者として最高位のSランク冒険者であり、この酒場の女主人ローザだ。
彼女はユーリの相談を受け、何かを思いついたのか、一度目を見開くと、ニンマリと笑う。
「そうさねぇ、良さげなのが一人いるよ。お前さんと歳も近い、神官の子がね」
「……詳しく聞かせてください」
「あいよっ! 要望通り、神官だから解呪も出来るし、アンデッドの対処も出来る。軽くアタシが手合わせしたから、戦闘に関しても、それなりに戦えるのは確認済み。性格は気弱で、人見知りだけど優しい子だよ。ただ――」
「ただ……?」
「――まだ、誰とも組んだことがない。初心者さ」
「なるほど。才能や技術はあっても、経験不足と?」
「そう。アタシとしても、ああいう前途有望な冒険者は、大事にしたい。だから、信頼出来るヤツと組ませたいんだ」
「お世辞でも、そう思ってもらえて光栄です」
「事実さ。あの子、田舎から出てきた子で、騙されやすそうだからね。交渉も苦手そうだし、金にうるさいヤツと組ませたりなんかしたら、分け前もロクにもらえなくなるのは、目に見える。ちなみに――あの子だよ」
ローザが指差し、そちらを見る。
そこには、酒場の隅にちょこんと座り、視線を落とし、落ち込んだ様子で、テーブルの上の飲み物をじっと見つめるミューの姿があった。
「……可愛い子ですね」
「だろう?」
「……えぇ」
重ためな前髪をしていてもわかる、可愛らしい顔立ちに、ユーリの心は浮つく。
見られているミューはというと、近くの席で、突然大声を出して笑った冒険者パーティーに驚き、身体を硬直させていた。
(確かに、気が弱そうだ……)
肩身が狭そうにしている姿から、自分に自信がないタイプなのは間違いない、とユーリは推測した。
明らかに問題を抱え、困っている。
そんな人を、彼は放っておけるタイプではなかった。
「さっきの話、受けてもいいですか?」
「もちろんだよ」
ローザは、最初からこうなることをわかっていたように、ニヤリと笑った。
「ありがとうございます」
「あいよ。頑張んなっ!」
ユーリは席を立ち上がる。
冒険者の群れをすり抜け、ミューの元へと近づいていく――。
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