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田舎編

家族

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「まさか、ミコちゃんが神様だったなんて――」
 事情を聞いた学の母、智が頬に手を当て、驚きを隠せずにいた。

 あれから、祖父は家族全員にミコのことを話した。
 突拍子もないことにも関わらず、皆、意外とすんなり受け止めていた。

 祖母であるサチは、元々、祖父から話しを聞いていたのか、特に驚く様子も見せず微笑むと、丁寧にお辞儀だけすませ、祖父と共に自室に帰っていった。

 現在、居間に残っているのは、学の父、いさみと智、学とミコの四人だけだ。
 皆、畳の上に腰を降ろし、話しを続けている。

「黙っていて、すまぬ……」
 ミコは居心地が悪そうに、狐耳を垂らしていた。

「いいのよぉ。人間じゃないことにはちょっと驚いたけど、こんな可愛い娘が欲しかったから嬉しいわっ」
 智がギューっと強くミコに抱き着き、ほっぺたをスリスリと擦りつけ、愛情を伝えている。

「母さん、神様が困ってるじゃないか……。すみませんね、こんな騒がしい妻で」
 父親の勇が、ミコに軽く頭を下げる。

「そんなに畏まらずともよい。むしろ、くだけた感じで接してくれる方が、ワシは嬉しい。それにこうしておると――母上を思い出す」
 ミコは目を伏せ、智に抱かれたまま、彼女の温もりに安らぎを見出している。

「ミコさんのお母さんは、今どうしてるの?」
 学の問いに、ミコは、
「旅に出ておる。別れてから、もう百年とはいわず、随分と長いこと経っているはずじゃ。何処かで元気にしておるとは思うのじゃが……」と遠い目をしている。

 すると、智は胸を打つものがあったようで、
「寂しい想いをしていたのね、ミコちゃん。私のこと、本当のお母さんだと思って……甘えていいのよ?」と優しく抱きしめる。

「智殿……っ」
 ミコは涙を浮かばせ、智の背中に手を回し、抱きしめる。

 しばらく、二人が抱き合っている光景を、学と勇は、ただ黙って温かく見守っていた。
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