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田舎編

カミサマ

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「はぁ……疲れた」
 学は実家の縁側に座り、一息ついていた。

 時刻は夜となり、虫たちの声や、近くを流れる川のせせらぎが聞こえてくる。

 ミコを歓迎する宴は終わり、押しかけていた人たちは、それぞれ帰っていった。
 ミコはというと、智の薦めもあり、今日はこの家に泊まることになったようだ。

 今、彼女は浴室で風呂を借りている。
 先ほどまで、ミコのフォローに回っていた疲れから、学はぐったりしつつも、ぼーっとしていた。

 そんな時、
『学……少しいいか?』
 穏やかで、しわがれた声がした。

「爺ちゃん……どうしたの?」
 学が振り向いた先には、祖父であるたかしがいた。

 六十歳を超えても、真っすぐな背筋と、学に似た大きな身体。
 若い頃よりは細くなったであろうにも関わらず、身体には、未だしっかりと筋肉をつけている。

 そして、何よりいつも穏やかで優しい人柄の彼が、学は小さい頃から大好きだった。

「ちょっと話したいことがあってな」
 しわの増えた顔をニンマリと歪ませ、学の隣に腰掛ける。
「いいけど……どうしたの?」
「あぁ……それはな――」
 祖父は、学の目をスッと見つめ、こう口を開いた。

「――神様のことは、好きか?」
「うん…………うんっ!?」
 学は一度頷いたが、すぐにオカシイことに気付くと、祖父を二度見してしまった。

「ははは、そんなに緊張しなくていい」
 祖父は愉快そうに笑う。
 学は、急に出た『神様』という単語に、冷や汗をかいていた。

「え、えっとぉ……」
「誤魔化さなくていいんだ。私はあの人が神様だと、知ってるんだよ……」
「どういう、こと……?」

「昔、会ったことがあるんだ……」
 祖父の目線が、学を離れ、夜空へと向く。
「あれは、私が九歳の頃だった――」

 そして、彼は語りだした――。
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