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田舎編

繋がった先に

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 事を終えた二人は、社の中、衣服を整えた。

「――しかし、凄かったのう……♡」
 激しい行為によって、汚れに汚れた社はミコの能力によって、綺麗になっていた。

「我慢できなくって、ごめん……」
「いつも、お主は謝ってばかりじゃのう……よいのじゃ。あれほど、嬉しくも激しい初体験はあるまい」
 学の謝罪に、ミコはクククと笑う。

「にしても――じゃ。どうしようかのう……これは?」
 ミコは、愛おしそうに自身の下腹部を撫でる。
 すっかり膨れていた腹は今、小さくなったものの、彼女の子宮には、未だ沢山の子種が残っている。

「孕まぬようにと最初は思っていたのじゃが……。ワシの力で、今すぐ孕むことも出来るぞ? それとも、子は授かり物というし、そのまま、成り行きに任せても良い。お主は、――どうしたいのじゃ?」

 学は、唾を飲み込んだ。
 判断を委ねられている。
 今ここで、彼が「子どもが欲しい」と言えば、ミコは妊娠し、子どもを産んでくれることだろう。

 愛している女性が、自分の子を産んでくれるという確信。

 彼は、胸に芽生える愛情と興奮で、鼓動が速まっていく。

 そして、落ち着くためにゆっくりと息を吸い、吐き出す。
 自分がどうしたいのか、考えをまとめると、彼は口を開いた。

「子どもは……まだ早いかな」
「そ、そうか……」
 ミコは狐耳を垂らし、ションボリとしている。否定されたようにでも、感じたのだろう。
「いや、ミコさんとの子どもが、欲しくないわけじゃなくて! 欲しいんだけど、まだ俺って学生だし……しっかり一人前になってからじゃないと、生まれてくる子どもに対しても、申し訳ないというか……」

「ククッ、そうか」
 ミコは笑い、学が自分との将来について、真剣に考えていることがわかって、ホッとする。
 続けて、学は言う。
「それに、子どもが出来たら――ミコさんと二人っきりじゃなくなるから……独占出来ないのって、寂しいなぁって……」
 頬を掻き、彼は照れている。

「学よ、どれだけワシを惚れさせるんじゃ、お主は?」
 ミコは彼に近寄ると、服をギュっと掴み、熱に浮かされた瞳で見上げてくる。
 彼女の纏う雰囲気から、このままではまた、淫らな行為に繋がってしまいかねない。

 だが、時は既に夕暮れ。
 こんな自然しかないような田舎で、遅くまで帰ってこなければ、学の家族は心配することだろう。

「ミコさん、ストップっ! 残念だけど……続きは、また今度にしよう」
「そう、じゃな……。うぅむ……、そうじゃっ! 夜に、お主の部屋を訪ねても良いかのう?」
「いや、他にも家族がいるし……」
「大丈夫じゃ。ワシの能力で、姿をお主にだけ見えるようにすればよい。それに、壁を通り抜けることも出来るからのう。空に浮いて、直接お主の部屋を訪れるようにすれば、何も問題ないじゃろう」
 名案を閃いたとばかりに、ミコは何度も頷いた。

「ミコさんが、俺の部屋に……」
 学は自身の部屋に、ミコがいる光景をイメージする。
 隣を見れば、可愛らしい彼女が自分に笑いかけてくれる光景を。
 そして、容易に想像出来た。
 我慢が出来なくなり、抱き合い、身体を重ねる展開になることが。

(きっと、夜通しエッチなことするんだろうなぁ……)

 互いに肉欲に溺れるのは、回避不可能のようだった。

「ミコさん、魅力的な提案だけど、今日は止めとこう。多分、我慢出来ずにエッチなことをして、眠れなくなる未来が見える……」
「うぅっ……」
 学の発言に、ミコも同じ想像が出来てしまったのだろう。

「学よ、すまぬな……つい、お主に心労をかけてしまう」
「それだけ、好きになってくれてるってことだから、俺は嬉しいよ……」

 学は柔らかく微笑み、ミコの頭を優しく撫でてやる。
 心地良さそうに彼女は目を細めるも、しばらくして、学の手は離れていってしまった。

「あっ……」
「大丈夫、明日も来るから。今日は帰るね……」
「そうじゃな、続きは明日にするとしよう……」
 名残り惜しくも、二人は距離を空ける。

「またね……」
「うむ……」
 学は手を振り、ミコに背を向けて、歩き出す。

 その背中に、ミコは声をかけたくなるのを、グッとこらえた。

 学は振り返りたくなる気持ちを抑え、そのまま社を後にする。

 彼の姿が見えなくなった後、ミコは自身の顔を手で覆い、身体をくねらせた。

「ワシは一体、何をしておるんじゃ……っ! 幾ら好いておるとはいえ、年下の学をあのように困らせるなど……っ!!」
 冷静になれなかった自身を恥じ、反省するばかりだった。

「じゃが――幸せな時間じゃった……」
 これまで過ごしてきた時間の中で、感じたことのない幸福。
 人を愛し、愛されるという実感。

 今なら、心から「こうなって良かった」と彼女は言える。

「学……まなぶ、か……」
 愛しい人の名を呼ぶだけで、心が温かくなる。

「明日がこんなに待ち遠しいのは、初めてじゃのう……」
 温かな夕陽が、ミコの横顔を照らした。

 社の屋根にとまっていた一羽の小鳥が、夕暮れの空へ飛び立っていく。

「しかし、もっと自制せんといかんのう……年上として、妻になる者として」
 表情を引き締め、両の拳をギュっと握り、気合を入れるミコであった――。
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