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田舎編

コンビニ

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 ピンポーンピンポーン♪
「のわ――っ!?」
 コンビニの自動入り口が突然開いたことと、電子音にビックリし、ミコは跳び上がった。

 コンビニに無事、到着した二人。
 入店時に、ミコが驚くようなことがあったが、落ち着きを取り戻し、店内に入っていく。

 店内は空調が効き、外と比べ、遥かに涼しく過ごせる。

 初めてのコンビニに、ミコは瞳をキラキラさせ、視線をあちこちへと飛ばしている。
「これが……コンビニっ!? 涼しくて、沢山の見慣れぬものがあるぞっ!!」
「うん。何か気になるもの、ある?」
「えっとな、えっとなぁ……っ!」興味をそそられる物が多すぎて、ミコは思考が追いついていないようだ。

 店内には他の客はおらず、年齢は学と変わらないぐらいだろうか、若く美しい雰囲気の女性店員が、ひとりいるだけだった。

 学は店員をチラリと見て、
(こんな田舎でも、あんな若い人が店員やってるんだな……)と感心している。

 その視線に気づかない店員の方はというと、ミコの姿を見て、
(コンビニであんなにはしゃぐなんて、可愛い子ね――)とニヤニヤしていたが、視線を降ろしていき、目を見開く。

(えっ!? 小学生くらいかと思ったけど、胸があんなに大きいなんてっ!? それに金髪!? 海外の人かしら……?)
 店員の胸も大きい方ではあったが、それよりも一回り以上、ミコのモノは上回っている。

(何だか、負けた気分だわ……)と自身の胸に手を当てながら、勝手に、敗北感に打ちひしがれていた。

 一方、ミコの方はそんな店員に目もくれず、
「学っ! こっちの棚には、料理がいっぱいあるぞっ!!」と興奮していた。

 それからは、店内を二人で隅々まで、見て回った。

 ミコはお菓子やスイーツの種類、飲み物やお酒の豊富さ、完成した料理、冷凍食品などに驚きを隠せなかった。

 店内にトイレが備えてあるのにも感動し、その後は、雑誌コーナーを見回す。
 そして、その中の一冊を手に取ると、
「学、ここにある本は何故、中身が読めないようになっておるのだ?」と素朴な疑問をぶつける。

 彼女が持っていたのは、際どい水着を着用した女性が表紙を飾る、成人向けの本であった。

 学はどう返答したら良いか、しばらく考えたが、誤魔化すのは良くないと結論に至り、
「ミコさん、それは大人向けのエッチなヤツだよ」と小声で囁いた。
「エッチ……――っ!?」
 意味を悟ったミコの顔が、一気に紅潮する。
「そ、そうであったか……な、なら、ワシは大人じゃし? ……買っても問題ないはずじゃのう」
「えっ!? 買うのっ!?」
「だ、ダメかのう? 今の時代のそういう知識も、色々と仕入れておきたいのじゃが……」
「うっ……」
 
 彼女は恥ずかしそうにしつつも、チラチラと助けを求めるように、学の顔色をうかがっている。

「わ、わかったよ……。他に、買いたいものは?」
「それならば――」

 二人は目当ての物を取り、レジに持っていく。
 アイス、ジュースなどの冷たい飲み物、お菓子、そして――エロ本。

 レジにて対応する、二人を見て、女性店員は内心、動揺していた。
(この二人、どういう関係かしら? それに、この男の人……エッチな本を買うつもりのようだし――)

 気まずげに視線を逸らす学。その後ろで、会計が済むのをウキウキとした様子で待っている、小さいミコ。

(親戚同士? きっと仲が良いのね。でも、コンビニでエッチな本を買うということは――)

 店員は一度、ミコの方へと視線を向け、彼女の容姿を、それとなく見る。

 背丈は小さいにも関わらず、発育の良い、胸と尻、太もも。
 女性としての魅力を、これでもかというほど、周囲に撒き散らしている。 

 そう認識した時、店員は不思議な電波を受信し、ある考えに至った。

(なるほど、あんな身体つきがエッチな子がいつも隣にいると、大変よね。きっとよくひっついて、甘えてくるんでしょう。うんうん、幼い子に、性欲を向ける訳にはいかないものね。ここは田舎。性欲を発散するための、娯楽がないから、このお兄さんは、ここでエッチな本を買うしかなかったんだわっ! 親戚の子を悲しませないために、これから帰って、一人で慰めるのね……っ!)

 店員は、これから学がするであろう行為を、勝手に妄想し、興奮していた。

 会計を済ませ、彼女はお釣りを手渡す。そして、
「大変でしょうけど、頑張ってくださいねっ!♡」と小声で学に囁く。
「えっ――!?」
 店員の突飛な行動に、学は驚く。相手が美しい女性なだけに、ドキッとしている。

 その反応を見ていたミコは、嫉妬し、頬を少し膨らませた。

「ありがとうございました――」

 店員の声を背に、コンビニを後にする二人。

 ミコは、念願の買い物をしたというのに、不機嫌なようで、
「さっきは、あの店員に何を言われたのじゃ?」と問いかける。
「いや、それがよくわかんないんだけど……『頑張ってください』って応援されて」
「惚れられでも、したのかのう……?」
「それは流石に……ないんじゃないかな」

 ミコの心が、湧きあがった嫉妬で、ヒリヒリと焼ける。
 その嫉妬を落ち着けるように、アイスの袋を破り、中身を開けると、ソーダ味のアイスキャンディーを口に含んだ。

「うむ、美味いなっ! 冷たいのに、甘くて、酸っぱくも心地よい――爽やかで、いい気分じゃ」
 口に広がる、アイスキャンディーの味に感動し、機嫌が直る。

 学は、そんなミコを見て、コンビニに連れてきて良かったのだと心底、安心するのだった――。
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