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田舎編

説明

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 それから、回廊に二人並んで座り、会話をしていた。
 
 学は自己紹介を終え、続きを話し終えた。
 内容は、両親と共に一週間ほど、近くの家に滞在すること。
 暇つぶしに、散策している最中に、ここを見つけ、立ち寄ったこと等を話した。
 
 話を聞き終えたミコは、
「ほうほう。都会からここにのう……」
「うん。それで、ミコさんは昔からこの場所に住んでるの?」
「そうじゃ。お主が生まれる遥か昔から、ここに住んでおる。昔は敬われ、供えものも多かったが、人がいなくなり寂れてしまってからは……誰も来ぬようになったのう」と目を伏せる。
 
「そっか……」
「仕方のないことじゃ。時が流れるのは止められぬ。人が変われば社会が変わり、価値観も変わる。ワシのような存在が必要とされなくなるのも、必然じゃ」
 
 目を開いたミコは、青空を見上げる。
 
 一羽の小鳥があてどなく、空中を泳いでいた。
 
 その様子を眺める横顔は、何もかもを諦めているようで、学は胸が締め付けられる思いがした。
 
 学はミコに何かしてあげたい、と思い口を開く。
 
「ここにずっと住んでるってことは、当然、この近くにも詳しいよね?」
「ん……? まぁ、そうじゃが」
「じゃあ、色んなとこ案内してよ。知りたいんだ、この場所のこと」
「お主……っ」
 
 学の真っすぐな瞳が、ミコを見つめている。
 
 必要とされなくなった神が、今、目の前の人間に必要とされている。
 
 とうの昔に忘れていた、必要とされる喜びがミコの胸に現れ、満ちていく。
 
「よし、ワシに任せておけっ!」この日一番の、輝く笑顔を見せ、回廊から跳び降りる。
 綺麗に着地した後、胸を張って、歩き出す。
 
 学も彼女の後に続く。
 
「お主は、優しいんじゃな……」
 
 ミコが呟くように言ったその言葉が、学の耳に聞こえた。
 しかし、彼は気恥ずかしくなったのか、返答することなく、ミコについていくのだった――。
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