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恋人と送る初めての昼休み編
2、食事の時間
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教室を抜け出した真音に手を引かれ、勝はそのまま廊下を歩いていた。
勝の腕を握る指には力が込められ、彼女の必死さが伝わってくる。
「あの、真音? どこに行くつもりかな……?」
勝の問いかけにも答えず、彼女はズンズンと足を進めていく。
すれ違う生徒達が、何事かと二人を見るが、真音は気にしている様子などない。
勝は真音の嫉妬心を嬉しく思いながら、黙って彼女のやりたいようにさせることにした。
やがて、人気のない方へと進んでいくと、一つの空き部屋に辿り着く。
以前、生徒数が今より多かった時期に、教室として一時的に使われていた場所だった。
設計された当初は、教室として使われる予定ではなかった一室。
その為、他の教室と造りが違う。
大きな違いとして、廊下側には窓が一切なく、室内の様子を窺うことが出来ない。
その中へと真音は足を踏み入れ、勝を引き込むと、ドアに内側からカギを掛けた。
――密室に二人っきりの状況。
周囲に誰もいないことを確認した真音は、突然、勝の唇を奪った。
「――ッ!?」
勝は驚きに声も出ず、真音にされるがまま、キスをする。
真音のキスは激しく、すぐに口を開け、互いに舌を絡ませることになった。
「ヒョウくんっ、ヒョウっくぅうん……っ!♡♡」
溢れてくる不安な気持ちを全てぶつけるような、荒々しい口づけに、思考が溶かされていく。
――数分に渡る長い口づけが交わされ、やっと勝は解放された。
「真音……」
勝は蕩けた表情で、真音の瞳を見つめる。
「勝くん、いきなりこんなことして、ごめんね……」
申し訳なさそうに少し目を伏せ、瞳を潤ませている。
「気にしないで。不安になったんだよね……?」
「……うん」
「大丈夫だよ。僕は、真音の彼氏なんだから。何処にも行かないし、ずっと側にいる」
「勝くん……っ♡」
柔らかな笑みを浮かべ、愛を伝えてくれる勝に、真音の不安が取り除かれた。
二人は小さく笑い合い、自然に続きをしようとして、ある事を思い出す。
――ここが学校であることを。
「そ、そういえば、今、昼休みだったよね。お昼どうしよう?」
勝が慌てながらそう言うと、真音は、
「……勝くんの分のお弁当、作って来たから。いつも、購買のパンだったよね……?」
と、持ってきていたカバンの中から、弁当箱を二つ取り出した。
ブルーとピンクの弁当箱が、ひとつずつ。
室内の奥に、詰めて置かれていた机と椅子を引っ張り出し、二人分の席を用意する。
向かい合って席に着いた二人は、お昼を食べることにした。
勝はブルーの弁当箱を開け、中身を見る。
「美味しそう……!」
そこに並んでいたのは、ご飯や玉子焼き、ミニトマト、ミニハンバーグ、ポテトサラダなどが入った、如何にもお弁当らしい、品々だった。
「……勝くん、ハンバーグ好きだったよね?」
「うん! 食べていいんだよね?」
「……うん、お口に合うといいんだけど」
「それじゃあ、いただきまーす!」
真音の料理の腕前を知っている勝は、不安なく、美味しい料理を箸で掴み取ると、食べていく。
「とっても、美味しいよ」
「……良かった」
ニコニコと笑う勝は、彼女の弁当をよく味わう。
真音も、勝が満足した表情をしているのに、緊張を緩めた。
(これが、恋人の手作りお弁当ってヤツか……以前食べた時より、もっと美味しく感じる)
彼は感動で涙が浮かびそうになりながら、ミニハンバーグのジューシーなお肉を噛み締める。
一方、真音はというと、自前のお弁当をパクパクと早めに食べ終え、両手を合わせていた。
(あれ? 真音、いつもより食べるのが早いような……?)
勝が疑問に思う中、真音は席を立つと彼に近付いた――。
勝の腕を握る指には力が込められ、彼女の必死さが伝わってくる。
「あの、真音? どこに行くつもりかな……?」
勝の問いかけにも答えず、彼女はズンズンと足を進めていく。
すれ違う生徒達が、何事かと二人を見るが、真音は気にしている様子などない。
勝は真音の嫉妬心を嬉しく思いながら、黙って彼女のやりたいようにさせることにした。
やがて、人気のない方へと進んでいくと、一つの空き部屋に辿り着く。
以前、生徒数が今より多かった時期に、教室として一時的に使われていた場所だった。
設計された当初は、教室として使われる予定ではなかった一室。
その為、他の教室と造りが違う。
大きな違いとして、廊下側には窓が一切なく、室内の様子を窺うことが出来ない。
その中へと真音は足を踏み入れ、勝を引き込むと、ドアに内側からカギを掛けた。
――密室に二人っきりの状況。
周囲に誰もいないことを確認した真音は、突然、勝の唇を奪った。
「――ッ!?」
勝は驚きに声も出ず、真音にされるがまま、キスをする。
真音のキスは激しく、すぐに口を開け、互いに舌を絡ませることになった。
「ヒョウくんっ、ヒョウっくぅうん……っ!♡♡」
溢れてくる不安な気持ちを全てぶつけるような、荒々しい口づけに、思考が溶かされていく。
――数分に渡る長い口づけが交わされ、やっと勝は解放された。
「真音……」
勝は蕩けた表情で、真音の瞳を見つめる。
「勝くん、いきなりこんなことして、ごめんね……」
申し訳なさそうに少し目を伏せ、瞳を潤ませている。
「気にしないで。不安になったんだよね……?」
「……うん」
「大丈夫だよ。僕は、真音の彼氏なんだから。何処にも行かないし、ずっと側にいる」
「勝くん……っ♡」
柔らかな笑みを浮かべ、愛を伝えてくれる勝に、真音の不安が取り除かれた。
二人は小さく笑い合い、自然に続きをしようとして、ある事を思い出す。
――ここが学校であることを。
「そ、そういえば、今、昼休みだったよね。お昼どうしよう?」
勝が慌てながらそう言うと、真音は、
「……勝くんの分のお弁当、作って来たから。いつも、購買のパンだったよね……?」
と、持ってきていたカバンの中から、弁当箱を二つ取り出した。
ブルーとピンクの弁当箱が、ひとつずつ。
室内の奥に、詰めて置かれていた机と椅子を引っ張り出し、二人分の席を用意する。
向かい合って席に着いた二人は、お昼を食べることにした。
勝はブルーの弁当箱を開け、中身を見る。
「美味しそう……!」
そこに並んでいたのは、ご飯や玉子焼き、ミニトマト、ミニハンバーグ、ポテトサラダなどが入った、如何にもお弁当らしい、品々だった。
「……勝くん、ハンバーグ好きだったよね?」
「うん! 食べていいんだよね?」
「……うん、お口に合うといいんだけど」
「それじゃあ、いただきまーす!」
真音の料理の腕前を知っている勝は、不安なく、美味しい料理を箸で掴み取ると、食べていく。
「とっても、美味しいよ」
「……良かった」
ニコニコと笑う勝は、彼女の弁当をよく味わう。
真音も、勝が満足した表情をしているのに、緊張を緩めた。
(これが、恋人の手作りお弁当ってヤツか……以前食べた時より、もっと美味しく感じる)
彼は感動で涙が浮かびそうになりながら、ミニハンバーグのジューシーなお肉を噛み締める。
一方、真音はというと、自前のお弁当をパクパクと早めに食べ終え、両手を合わせていた。
(あれ? 真音、いつもより食べるのが早いような……?)
勝が疑問に思う中、真音は席を立つと彼に近付いた――。
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