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恋人と送る初めての昼休み編
1、恋人になった幼馴染み
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バレンタインデーが過ぎ、勝と真音の二人は、晴れて恋人同士になった。
それから、初めての登校日を迎えている。
「――僕たち、付き合うことになったんだ」
昼休みの教室。
親しいクラスメイト数人の前で、勝は隣に立つ真音に、温かな視線を向けた。
真音は赤くなった顔を俯かせ、自らの両指を擦り合わせながら、緊張している。
「おめでとう!」
勝の親友が、初めに明るい祝福の声を上げた。
残りの者たちも、優しい微笑みを浮かべて、祝福してくれている。
「あ……あり、がとう……」
蚊の鳴くような小さな声で、人見知りの真音が、感謝を告げた。
真音が珍しく声を出した様子に、皆は一瞬驚くも、すぐに表情を緩めた。
そんな中、一人の女子が口を開く。
『あーあ、これでもう、皆の勝じゃ、なくなっちゃったんだぁ……』
バレンタインデーの時、勝達に義理チョコを渡した、女子グループの一人だ。
茶色に染めた髪に、明るい雰囲気をした彼女は、勝に近付くと、彼に抱き着く。
「えっ!?」
「――ッ!?!?」
驚く勝と、信じられないものを見るように、目を見開く真音。
抱き着いた女子は、大きな胸を勝の顔に押し付け、擦り付ける。
彼女がいつも勝にやっていたため、普段通りの行動ではあった。
周囲の女子も、付き合っている彼女の目の前で、別の女が抱き着くという事態に、
「ちょっと……!?」
と声を掛けるが、本人は止まらない。
「だってぇ、こんなに可愛いのに、独り占めなんて……ズルいと思わない?」
彼女の視線は、勝の恋人である真音に、向けられている。
真音をからかっているのか――とても楽しそうな表情をしていた。
勝を取られると思った真音は、全身を震わせ、敵意のこもった眼差しで彼女を睨む。
そして、二人に大きな足音を立てて接近すると、力任せに引きはがした。
「うわ……っ!?」
真音の腕力に敵わず、女子の手から勝は、簡単に解放される。
そして、真音は勝を背後から抱きしめ、
「勝くんは……渡さない……ッ!!」
と言い残し、彼の手を引くと、もう片方の手にスクールバッグを掴んで、恋人二人は教室を出ていった。
取り残される、クラスメイト達。
「何であんな事したのよ?」
事を見ていた女子の一人が、抱き着いていた女子に問いかける。
「だって、勝を取られるの寂しいし? ちょっと、からかっただけよ」
「だからって、恋人の前であんな事する普通? はぁ……、アンタねぇ……」
悪戯っぽく笑う彼女に、クラスメイト達はヤレヤレとため息をつき、呆れていた。
それから、初めての登校日を迎えている。
「――僕たち、付き合うことになったんだ」
昼休みの教室。
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「おめでとう!」
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残りの者たちも、優しい微笑みを浮かべて、祝福してくれている。
「あ……あり、がとう……」
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真音が珍しく声を出した様子に、皆は一瞬驚くも、すぐに表情を緩めた。
そんな中、一人の女子が口を開く。
『あーあ、これでもう、皆の勝じゃ、なくなっちゃったんだぁ……』
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驚く勝と、信じられないものを見るように、目を見開く真音。
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「ちょっと……!?」
と声を掛けるが、本人は止まらない。
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真音をからかっているのか――とても楽しそうな表情をしていた。
勝を取られると思った真音は、全身を震わせ、敵意のこもった眼差しで彼女を睨む。
そして、二人に大きな足音を立てて接近すると、力任せに引きはがした。
「うわ……っ!?」
真音の腕力に敵わず、女子の手から勝は、簡単に解放される。
そして、真音は勝を背後から抱きしめ、
「勝くんは……渡さない……ッ!!」
と言い残し、彼の手を引くと、もう片方の手にスクールバッグを掴んで、恋人二人は教室を出ていった。
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「何であんな事したのよ?」
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「だって、勝を取られるの寂しいし? ちょっと、からかっただけよ」
「だからって、恋人の前であんな事する普通? はぁ……、アンタねぇ……」
悪戯っぽく笑う彼女に、クラスメイト達はヤレヤレとため息をつき、呆れていた。
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