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第六章 解決への最短経路
第214話 監査…?
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無事(無事?)ペイトンさんの部屋まで通された俺とコメット君は、茶の用意がされた席に座った。ペイトンさんは来るはずの無い子供が一人混ざっている事について多少の驚きを示す。
「フィーナ、その子は?」
「アランさんの友達?…らしいです」
「あ、その事について話が…」
俺は腹を括り、この一件の一切を打ち明ける覚悟を決めた。俺の情報だって誠心誠意対応して守秘義務を守ったこの人だ、そう簡単に言いふらす事はないだろう。コメット君もこれから何が始まるのかと身構えていたが、俺の雰囲気を悟って不安に目が揺れた。恐らく無意識のうちに俺の服の裾をキュッと持つ。
「私は外しています」
フィーナさんが気を利かせ、退室しようとしたが俺は引き止める。
「いえ、フィーナさんも聞いておいて下さい。これから話す事は…色々衝撃的な物なので」
「?はあ…商会長、良いですか?」
フィーナさんは上司であるペイトンさんに目で許可を求める。ペイトンさんは別に構わないよと言った。フィーナさんはソファーの側に立つ。俺は瞬時に防音結界を何重にも貼り、音の一切を漏らさない様にする。
「えっとですね…何と無く察してるかもしれませんが、俺とこの子…コメット君はただの友人ではありません」
「まあ、それは分かるよ。伊達にこの仕事してないからね…だって君、コメット君だっけ?物凄く強いよね?多分だけど、服の裏に暗器とか麻酔とか仕込んでるでしょ?」
ペイトンさんは見逃さないぞとコメット君の着ていたベストを指差す。するとコメット君は少し目を見開き、そして服裏に隠していた数個の武器を取り出した。いずれもカミソリや1ショット分の麻痺毒など小さな武器だ。それを見たペイトンさんはため息を吐いた。
「はあ…もし君が一人で来てたら、間違い無く私は今頃衛兵に通報しているよ。それで、君は誰なんだい?」
「えと、コメットです。ハイエルフの一族で、この国の黒騎士団団長をしてます…」
耳の変化を解いてそう言った彼が齎した衝撃は大きかった。
「はあ!ハイエルフとな!いや驚いた!それに黒騎士団団長とは…一体どういう事だい?」
「街で違法取引とかが起こってないかの監視をしているついでに、俺とペイトンさんの取引の監査にも来たというわけです。彼が黒騎士団団長である理由については…知りません」
「まあ、見かけの年齢と役職の不釣り合いさについては深くは聞かないよ。それにしてもアラン君…監査とかの書類一切来てないけど、これは公的に認められている監査な訳?」
ペイトンさんは頭を掻きながらそう言った。何で急に、と言った所か。これに答えたのはコメット君である。チャーンス!今のうちに脱走を…
「公的ではないです。元々入り口付近の軽い視察で終わらせるつもりだったので…こんな事になって僕も困ってます」
「成程、全ての元凶はアラン君か。すまないね、コメット君…さて、アラン君?」
「ピャッ」
固まっていたフィーナさんの助けを借りて、この場から逃げようとしていた俺を、笑顔のペイトンさんが止めた。俺は油の挿さって無い錆びた留め具の様にギギギ…と顔を動かす。
「…何でこんな事になるんだい?」
「すみません!」
ここから十分ほど、俺はクドクドとペイトンさんから説教を頂き、商談を引き合いに出して無理矢理話を打ち切ったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなこんなで、現在商談中である。というより、トランプを使った遊びといった方が正しいが。丁度4人居るという事で、今しているのは4人専用ゲーム、『ハート』である。
順番にカードを一枚づつ場に出して、一番強いカードを出した人がカードを総取り。手に入れたカードの中に入っているハートのカード又はスペードのQのカードの枚数分失点が増え、それが100点(合計失点の数や、50点や25点の場合も)に達したら負けというゲームだ。
如何に戦略を練って、出来るだけ弱いカードを使わずに場の中で一番弱くなれるかを競うゲームである。あと、ハートのカードの押し付け合いでもある。
「げ、ハートが5枚…」
「ああ!スペードのQ取っちゃった…」
考案者でありながら思いっ切りハートを取る俺、そして巧みに誘導されてスペードのQを取らされるコメット君。スペードのQはたった一枚で13点失点するので50点マッチのこの試合ではかなり痛い。
「ははは、面白いねこのゲーム!運もいる、戦略もいる、駆け引きもいる。どちらかと言うと大人向けのゲームっぽいね!」
そういうペイトンさんは、現在最も失点が少ない。3ラウンドで急に無失点を叩き出した時は全員が敵に回ったのは仕方あるまい。しかしペイトンさんは、笑顔から一転少し難しい顔をした。
「しかし…こう、直感で出来る物はないかね?」
「沢山ありますよ。例えば『戦争』とかは完全運ゲーで一切考えないゲームです。あと『ワンラウンドババ抜き』とかも簡単だけど白熱しますよ」
ワンラウンドババ抜きとは、同じ数字のカード2枚とババを使う、ババ抜きの最後の局面だけをやるババ抜きだ。ほんの一瞬で終わるけど、ジャンケンの10倍は白熱する。
「しかし、ここまで楽しめる遊びをアランさんは一体どうやって考えているのですか?売人としては物凄く気になります」
「どうなんでしょうね?パーッと浮かんでパーッと作ってるんでそんなに理性的には考えて無い気がします」
「フィーナ、その子は?」
「アランさんの友達?…らしいです」
「あ、その事について話が…」
俺は腹を括り、この一件の一切を打ち明ける覚悟を決めた。俺の情報だって誠心誠意対応して守秘義務を守ったこの人だ、そう簡単に言いふらす事はないだろう。コメット君もこれから何が始まるのかと身構えていたが、俺の雰囲気を悟って不安に目が揺れた。恐らく無意識のうちに俺の服の裾をキュッと持つ。
「私は外しています」
フィーナさんが気を利かせ、退室しようとしたが俺は引き止める。
「いえ、フィーナさんも聞いておいて下さい。これから話す事は…色々衝撃的な物なので」
「?はあ…商会長、良いですか?」
フィーナさんは上司であるペイトンさんに目で許可を求める。ペイトンさんは別に構わないよと言った。フィーナさんはソファーの側に立つ。俺は瞬時に防音結界を何重にも貼り、音の一切を漏らさない様にする。
「えっとですね…何と無く察してるかもしれませんが、俺とこの子…コメット君はただの友人ではありません」
「まあ、それは分かるよ。伊達にこの仕事してないからね…だって君、コメット君だっけ?物凄く強いよね?多分だけど、服の裏に暗器とか麻酔とか仕込んでるでしょ?」
ペイトンさんは見逃さないぞとコメット君の着ていたベストを指差す。するとコメット君は少し目を見開き、そして服裏に隠していた数個の武器を取り出した。いずれもカミソリや1ショット分の麻痺毒など小さな武器だ。それを見たペイトンさんはため息を吐いた。
「はあ…もし君が一人で来てたら、間違い無く私は今頃衛兵に通報しているよ。それで、君は誰なんだい?」
「えと、コメットです。ハイエルフの一族で、この国の黒騎士団団長をしてます…」
耳の変化を解いてそう言った彼が齎した衝撃は大きかった。
「はあ!ハイエルフとな!いや驚いた!それに黒騎士団団長とは…一体どういう事だい?」
「街で違法取引とかが起こってないかの監視をしているついでに、俺とペイトンさんの取引の監査にも来たというわけです。彼が黒騎士団団長である理由については…知りません」
「まあ、見かけの年齢と役職の不釣り合いさについては深くは聞かないよ。それにしてもアラン君…監査とかの書類一切来てないけど、これは公的に認められている監査な訳?」
ペイトンさんは頭を掻きながらそう言った。何で急に、と言った所か。これに答えたのはコメット君である。チャーンス!今のうちに脱走を…
「公的ではないです。元々入り口付近の軽い視察で終わらせるつもりだったので…こんな事になって僕も困ってます」
「成程、全ての元凶はアラン君か。すまないね、コメット君…さて、アラン君?」
「ピャッ」
固まっていたフィーナさんの助けを借りて、この場から逃げようとしていた俺を、笑顔のペイトンさんが止めた。俺は油の挿さって無い錆びた留め具の様にギギギ…と顔を動かす。
「…何でこんな事になるんだい?」
「すみません!」
ここから十分ほど、俺はクドクドとペイトンさんから説教を頂き、商談を引き合いに出して無理矢理話を打ち切ったのだった。
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そんなこんなで、現在商談中である。というより、トランプを使った遊びといった方が正しいが。丁度4人居るという事で、今しているのは4人専用ゲーム、『ハート』である。
順番にカードを一枚づつ場に出して、一番強いカードを出した人がカードを総取り。手に入れたカードの中に入っているハートのカード又はスペードのQのカードの枚数分失点が増え、それが100点(合計失点の数や、50点や25点の場合も)に達したら負けというゲームだ。
如何に戦略を練って、出来るだけ弱いカードを使わずに場の中で一番弱くなれるかを競うゲームである。あと、ハートのカードの押し付け合いでもある。
「げ、ハートが5枚…」
「ああ!スペードのQ取っちゃった…」
考案者でありながら思いっ切りハートを取る俺、そして巧みに誘導されてスペードのQを取らされるコメット君。スペードのQはたった一枚で13点失点するので50点マッチのこの試合ではかなり痛い。
「ははは、面白いねこのゲーム!運もいる、戦略もいる、駆け引きもいる。どちらかと言うと大人向けのゲームっぽいね!」
そういうペイトンさんは、現在最も失点が少ない。3ラウンドで急に無失点を叩き出した時は全員が敵に回ったのは仕方あるまい。しかしペイトンさんは、笑顔から一転少し難しい顔をした。
「しかし…こう、直感で出来る物はないかね?」
「沢山ありますよ。例えば『戦争』とかは完全運ゲーで一切考えないゲームです。あと『ワンラウンドババ抜き』とかも簡単だけど白熱しますよ」
ワンラウンドババ抜きとは、同じ数字のカード2枚とババを使う、ババ抜きの最後の局面だけをやるババ抜きだ。ほんの一瞬で終わるけど、ジャンケンの10倍は白熱する。
「しかし、ここまで楽しめる遊びをアランさんは一体どうやって考えているのですか?売人としては物凄く気になります」
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