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第四章 脚光を浴びる

第130話 Cブロック第一回戦、開始

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交流戦についてセドリックの出番はすぐに来る訳では無い。先にBブロックの決勝進出者を決める必要があるので、それもありCブロックは10の時30分位から開始になっている。それまでは特に何か起きたと言う事は無く、俺たちは部屋でトランプゲームに興じるのだった。セドリックも緊張する素振りも見せてないから心配には及ばないだろう。

「さぁさぁさぁ!盛り上がって参りました交流戦!これよりCブロックを始めさせて頂きます!」

いつもの定めと言う様に観客が一際沸き立つ。セドリックは第3戦にて出番があるので、それまでは事前学習と言った所だろう。

「セドリック君、中々興味深い試合だね。勝てそう?」

声変わりする前の高い声で話すのはコメット君である。一緒に観戦する約束をみんなに話したら、案の定と言うべきか、全員快諾してくれた。王国の黒騎士団団長が一介の冒険者と仲良くしているこの現場もどうかとは思うが、コメット君が普段から素顔を隠していたせいでそれが周囲にバレている感じは無い。

セドリックはコメット君の問いかけに対し笑顔で答える。

「何も問題は無いね。軽く決勝トーナメントの出場権手に入れれると思うよ」
「ふうん。なら安心か」

コメット君は輝かしい笑顔を俺たちに向ける。ちなみにこの少年、集合の約束時間に遅れそうだからと建物の屋根を走って綺麗な着地を決め颯爽と登場した猛者である。黒騎士団団長…パネェっす。周りの視線をこれでもかと言う程集めたのは語る必要も無いだろう。

「んじゃまあ、出番まで待つか」


大体20分かそれ位待った頃に第3戦開始の合図が入った。

「では次に行きましょう!第3戦、シュニッテン・ヒューム対セドリック・ベネットオオォォォォ!試合会場はぁ、サバンナ!草木の少ないかくれんぼには全く向かないステージです!」

セドリックの反対側に登場したのは、細身で運動を余りしていなさそうな見た目をした長身の男だった。同じく細身だがしっかり引き締まった体を持つセドリックに比べると若干見劣りする物がある。

シュニッテンの持つ武器は弓とナイフであった。更にアームガードにボウガンをセットしている。いずれもいつでも射撃できる様に矢が構えられていた。

あの矢に小細工がして無いとは考えにくいが、まあそんじょそこらの小細工が通用する相手でも無いから特に問題は無いだろう。

「両者配置に着きましたね!さてオードラさん、彼らをどう分析しますか?」
「そうですねぇ、まずシュニッテン氏はネウダ王国の弓使い冒険者ですね。ランクはSでパーティの中衛を務め、弓の腕もさることながらコンバットナイフによる近接戦闘も群を抜いていると言う情報を得ております。セドリック氏はAブロック優勝者であるアラン氏の双子の兄にしてAランク冒険者で、アラン氏と更に一名の仲間と共にパーティを組んでいる模様です。実力は未知数ですが、魔法の腕が良いと言う情報を得ております」

魔法の腕が良い…うん、まあ、良いんだろうけど。想像の斜め上を行く『腕が良い』だと思うのは俺の気にし過ぎだろうか。本気で攻撃すれば俺の防御を蹴散らし怪我させる様な魔法を使える男が『腕が良い』のは間違い無いが。

「ふむふむ!オードラさんの解説によると、両者共に遠近の攻撃手段をそれなりに持っていると推測出来ますね!では始めましょう!第3戦、シュニッテン・ヒューム対セドリック・ベネット…開始ィ!!」


セドリックは初めは抜剣せず様子見に徹する事にしたらしい。シュニッテンは弓を構え射ると同時にボウガンからも矢を出しセドリックに飛ばす。音を置き去りにしそうな速度の矢は一直線にセドリックに迫る。

(速い…それに音を聞く限り、セドリックと言えど防御をサクッと腕くらいなら射抜かれそうだなぁ)

俺は矢が空気を切る音を聞いて冷静に分析する。普通なら聞こえるはずがない音も俺であれば補足するのは容易であった。セドリックはそれを避ける選択をし、その場から瞬間的に離脱する。
しかし。

「へぇ…」

矢がセドリックが避けたのに合わせ軌道を変え、追尾し始めたでは無いか。しかも威力減衰も無さそうだ。セドリックは一度距離を取り、そして飛んでくる矢を掴んだ。しかし、その奥に潜んでいたボウガンの矢は邪魔が無くなったとばかりに更に加速しセドリックに迫る。彼はその矢を手刀で折って威力を殺し、地面に落とす。

彼がそれを行なっている途中に、シュニッテンは既に弓を構え、一本の矢を放っていた。しかし、その矢が3アブデリ程進んだ頃に一度光り、次の瞬間には百の矢に増殖し様々な方向に飛び始めたでは無いか。更にそれらは緩やかにカーブしセドリックを全方位から狙いにかかる。

「ま、ハリセンボンセドリックにはなるまい」
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