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第四章 脚光を浴びる
第87話 たった…一回で…
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今、かなーりやってしまった感を凄い感じる一言を聞いた気が?
いやいや、あのスピードよ?いくら何でも気付かれる訳、ねぇ?
セドリックも努めて平静を装ってはいるが、僅かに震えた声で聞き返す。
「竜って…いつ見られたのですか?」
「ほんの3、40分前だったと。もしかして見たのですか?」
「いえ、いえ!見ていません!ハハハ!」
俺はそーっと、本当にチラーーっとレシアルドの方を見る。レシアルドは縦に
伸びた瞳孔を思い切り広げ、ほぼ円に近い状態にしていた。興奮による物だろう
が、まるで人間の目の様である。
目の前に当事者の竜がいるとは夢にも知らない騎士団の方々は、一礼して
別れを告げる。
「そうですか…何かあったら情報お待ちしています、では!」
「は、はい…じゃあ…」
騎士団が言ったのを確認し、俺たちは盛大にため息を吐く。
「「「「はあああぁぁぁぁあああぁぁぁああ~~~」」」」
本当に心臓に良く無い。マジで…あそこで嘘吐いて無かったら
今頃連行モンだぞ。ああ恐ろしい。
レシアルドはかなり重症らしく、すれ違う人全員の視線を引きそうな端正な顔を
悲壮一色で塗り潰す。
「すまぬ、主…我としたことが、迷惑を掛けて…」
セドリックはその声を聞いて、直ぐにハッとしてレシアルドをフォローする。
「いや、大丈夫だよ。何も僕たちってバレた訳じゃあ無いし」
「…すまぬ。本当に…」
「元はと言えば、飛んでってお願いした僕が悪いから。そこまで気を落とさ
ないで、ね?」
ようやくレシアルドが少し復活して来た。俺たちは一度創作空間に帰り、
セドリックと彼の2人だけ置いて再びギルドへ向かう。
しかし、たった一回ものの数分飛んだだけでバレるとは。王都の警備能力、
恐るべしだな。
ギイイ…
重い扉を開け放ち、受付に向かう。
「あれ、アランさんとブレアさん。何か忘れ物でも?」
「いえ、依頼を達成したので…」
アリシアさんは、一瞬キョトンとした顔になった。が、すぐに『ま、そんな事も
あるかと思いましたけど』と笑い、手続きを進めた。
「はい、こちらに証拠となる魔石をお願いします」
「こちらに」
俺は今までのどの魔石よりも大きいそれを出す。それは主に茶色に輝いている。
「はい、確かに受け取りました。…ちなみに、セドリックさんはどこですか?」
「ああ、少し体調が優れないようで。先に休んでます」
「そうでしたか。お大事にする様お伝えください」
「お気遣い痛み入ります。そういえば、討伐したマウンテンバイソンの死体は
ここで買い取って貰えますか?念の為アイテムボックスに入れて持って帰って
来たのですが…」
俺は麻袋を出す。アリシアさんは驚いた様な顔から困った顔になってそれを見る。
「えーと…それについては、そのままにしといてもギルド職員が回収に出向く
手筈なんですが…」
「え…どうしましょう?これ?」
「裏の大型魔物買取部屋に行って貰えると、そこで買取は受け付けて貰えます。
買取受付カウンターに申し出ると良いですよ。あ、これ報酬です。
お納め下さい」
「分かりました」
俺たちは報酬を受け取り買取カウンターに移動する。程なくして、順番が
回ってきた。
「あの、マウンテンバイソンの買取をお願いしたいのですが」
「…すみません、聞き間違えたかもしれません。もう一度言って
もらえませんか?」
「ああ、はい。マウンテンバイソンの買取をお願いしたいのですが」
すると受付嬢は何を言っているんだコイツは、と言う目でこちらを見る。
俺は例の麻袋を出して、中を見せる。
「このアイテムボックス内に入ってます」
「確認させて頂きます」
そう言って受付嬢は渡した麻袋に手を突っ込む。そのまま引くと。
「ひっ!?!?」
ズボン!と言う音と共にバイソンの前脚が出てきた。それだけで太い木の幹
の様な大きさを誇る足は、重さでカウンターの台を壊した。
あっちゃー…恐れていたパターンが見事に…
俺は冷静を装いながら足を袋に戻す。
「えっと、これで信じて貰えましたか?出来れば大型魔物買取部屋とやらに
案内して頂きたいのですが」
「は、はい!こちらにどうぞ!」
そう言ってバタバタと動き出す。俺たちはそれにテクテクついていく。
案内されたのは、30アブデリ四方はありそうな大きなドーム。階段を降りた
先にあったので、どうやら地下のようだ。受付嬢は担当に説明をしている様だ。
「あんたらがマウンテンバイソンの素材を持ってきたっちゅう奴か」
「はい、アランとブレアって言います」
「俺はグランツだ、よろしくな。早速だが出してくれるか、例のブツを」
「はい。少し離れていて下さい」
俺は10歩ほど離れて、麻袋の中に手を突っ込む。そして掴んだ物を思い切り
引っ張る!
ズボオン!ドッゴオオン…!
「こ、これは…本物か…」
グランツさんは20アブデリを超える巨体を見て言葉を無くす。なんなら
立ち会っている他の方々も魂を何処かに置き去りにしてしまった様に固まって
いる。…20秒待っても戻ってくる気配が無いので、俺は声を掛ける。
「あの、大丈夫ですか?状態はかなり良いと思うのですけど…」
「あ、ああ。殆ど見ない程状態は良い。買取り額は…そうだな、白金貨24枚
でどうだ?」
白金貨、24枚…。日本円で1200万!?土地買えるやん!
「あ、はい…それで良いです、はい」
「良いのか!?正直レートに則って言っているだけであって、もっと要求出来る
品物だぞ、これは!」
「いや、これ以上お金があっても困るので…」
「そうか。後は任せたぞジェナッサ」
ジェナッサと呼ばれた買取カウンターの受付嬢は、取り乱した感じで
『は、はい!』と言った。
いやいや、あのスピードよ?いくら何でも気付かれる訳、ねぇ?
セドリックも努めて平静を装ってはいるが、僅かに震えた声で聞き返す。
「竜って…いつ見られたのですか?」
「ほんの3、40分前だったと。もしかして見たのですか?」
「いえ、いえ!見ていません!ハハハ!」
俺はそーっと、本当にチラーーっとレシアルドの方を見る。レシアルドは縦に
伸びた瞳孔を思い切り広げ、ほぼ円に近い状態にしていた。興奮による物だろう
が、まるで人間の目の様である。
目の前に当事者の竜がいるとは夢にも知らない騎士団の方々は、一礼して
別れを告げる。
「そうですか…何かあったら情報お待ちしています、では!」
「は、はい…じゃあ…」
騎士団が言ったのを確認し、俺たちは盛大にため息を吐く。
「「「「はあああぁぁぁぁあああぁぁぁああ~~~」」」」
本当に心臓に良く無い。マジで…あそこで嘘吐いて無かったら
今頃連行モンだぞ。ああ恐ろしい。
レシアルドはかなり重症らしく、すれ違う人全員の視線を引きそうな端正な顔を
悲壮一色で塗り潰す。
「すまぬ、主…我としたことが、迷惑を掛けて…」
セドリックはその声を聞いて、直ぐにハッとしてレシアルドをフォローする。
「いや、大丈夫だよ。何も僕たちってバレた訳じゃあ無いし」
「…すまぬ。本当に…」
「元はと言えば、飛んでってお願いした僕が悪いから。そこまで気を落とさ
ないで、ね?」
ようやくレシアルドが少し復活して来た。俺たちは一度創作空間に帰り、
セドリックと彼の2人だけ置いて再びギルドへ向かう。
しかし、たった一回ものの数分飛んだだけでバレるとは。王都の警備能力、
恐るべしだな。
ギイイ…
重い扉を開け放ち、受付に向かう。
「あれ、アランさんとブレアさん。何か忘れ物でも?」
「いえ、依頼を達成したので…」
アリシアさんは、一瞬キョトンとした顔になった。が、すぐに『ま、そんな事も
あるかと思いましたけど』と笑い、手続きを進めた。
「はい、こちらに証拠となる魔石をお願いします」
「こちらに」
俺は今までのどの魔石よりも大きいそれを出す。それは主に茶色に輝いている。
「はい、確かに受け取りました。…ちなみに、セドリックさんはどこですか?」
「ああ、少し体調が優れないようで。先に休んでます」
「そうでしたか。お大事にする様お伝えください」
「お気遣い痛み入ります。そういえば、討伐したマウンテンバイソンの死体は
ここで買い取って貰えますか?念の為アイテムボックスに入れて持って帰って
来たのですが…」
俺は麻袋を出す。アリシアさんは驚いた様な顔から困った顔になってそれを見る。
「えーと…それについては、そのままにしといてもギルド職員が回収に出向く
手筈なんですが…」
「え…どうしましょう?これ?」
「裏の大型魔物買取部屋に行って貰えると、そこで買取は受け付けて貰えます。
買取受付カウンターに申し出ると良いですよ。あ、これ報酬です。
お納め下さい」
「分かりました」
俺たちは報酬を受け取り買取カウンターに移動する。程なくして、順番が
回ってきた。
「あの、マウンテンバイソンの買取をお願いしたいのですが」
「…すみません、聞き間違えたかもしれません。もう一度言って
もらえませんか?」
「ああ、はい。マウンテンバイソンの買取をお願いしたいのですが」
すると受付嬢は何を言っているんだコイツは、と言う目でこちらを見る。
俺は例の麻袋を出して、中を見せる。
「このアイテムボックス内に入ってます」
「確認させて頂きます」
そう言って受付嬢は渡した麻袋に手を突っ込む。そのまま引くと。
「ひっ!?!?」
ズボン!と言う音と共にバイソンの前脚が出てきた。それだけで太い木の幹
の様な大きさを誇る足は、重さでカウンターの台を壊した。
あっちゃー…恐れていたパターンが見事に…
俺は冷静を装いながら足を袋に戻す。
「えっと、これで信じて貰えましたか?出来れば大型魔物買取部屋とやらに
案内して頂きたいのですが」
「は、はい!こちらにどうぞ!」
そう言ってバタバタと動き出す。俺たちはそれにテクテクついていく。
案内されたのは、30アブデリ四方はありそうな大きなドーム。階段を降りた
先にあったので、どうやら地下のようだ。受付嬢は担当に説明をしている様だ。
「あんたらがマウンテンバイソンの素材を持ってきたっちゅう奴か」
「はい、アランとブレアって言います」
「俺はグランツだ、よろしくな。早速だが出してくれるか、例のブツを」
「はい。少し離れていて下さい」
俺は10歩ほど離れて、麻袋の中に手を突っ込む。そして掴んだ物を思い切り
引っ張る!
ズボオン!ドッゴオオン…!
「こ、これは…本物か…」
グランツさんは20アブデリを超える巨体を見て言葉を無くす。なんなら
立ち会っている他の方々も魂を何処かに置き去りにしてしまった様に固まって
いる。…20秒待っても戻ってくる気配が無いので、俺は声を掛ける。
「あの、大丈夫ですか?状態はかなり良いと思うのですけど…」
「あ、ああ。殆ど見ない程状態は良い。買取り額は…そうだな、白金貨24枚
でどうだ?」
白金貨、24枚…。日本円で1200万!?土地買えるやん!
「あ、はい…それで良いです、はい」
「良いのか!?正直レートに則って言っているだけであって、もっと要求出来る
品物だぞ、これは!」
「いや、これ以上お金があっても困るので…」
「そうか。後は任せたぞジェナッサ」
ジェナッサと呼ばれた買取カウンターの受付嬢は、取り乱した感じで
『は、はい!』と言った。
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