上 下
67 / 228
第三章 成長

第67話 裏方

しおりを挟む
「何、ハンレインがそんな事を?」
「はい、非常に申し上げ難いのですが…」
「そうか…近頃の奴の奇行はそれが原因か」

俺が事情を話すと、ダンレインさんは納得した表情でそう言った。
俺は僅かに驚いた表情でダンレインさんを見る。

「心当たりがあったのですか?」
「ええ、家の収入からは手の届かない様な美術品や芸術品を何回か買ってきたり、
 豪華な家を建ててくれたり、金の出所が気になってはいました。
 まさか、罪に手を染めたかハンレイン…」

俺は歯軋りしているダンレインさんを見て、内心ホッとしていた。
良かった。ダンレインさんに取り合ってもらえなかったらこの家から蹴飛ばされて
いた可能性もあったからな。賭けは成功と言っていいだろう。

「親として、ハンレインの行動は目に余る。アラン様、
 何か妙案はありませんか?」
「それを伝えに今日はここに来ました。申し訳ございません、騙すような真似を」
「いえいえ!寧ろこれが王に知られお家取り潰しになる方がよっぽど恐ろしい…」

ダンレインさんは微かに震えながらそう言う。やっぱり、息子のせいで自分が
貴族から没落したと言ったらたまったもんじゃないからなぁ。
俺は瞬時黙り、そして案を言う。

「僕が何とかしてハンレインさんの金銭の隠し場所を曝け出すので、そこに
 登場してそれを指摘して下さい。それでハンレインさんに説明を求めて、
 彼が逃げ出したり黙り切ってしまえば僕たちの勝ちです」
「うむ…ではアラン様の言う通りにしましょう」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…策士だなあ」

セドリックは遠い目でそう呟いた。俺は軽く口角を上げる
ダンレインさんは再びお辞儀をして感謝の言葉を述べた。

「重ね重ね、本当にありがとう御座いました。あなた方がいなければ私は息子の
 やっていたことにすら気が付きませんでした。息子はしっかり拘置所で反省
 させるので、何卒これからもよろしくお願いします!」

お願いします、とはベネット家との付き合いをだろう。しかし俺たちは冒険者、
できればこう言うことは父上本人に言って欲しい。俺は微笑み、流れる様に
矛先を父上に変えさせる様に努力する。


「こちらこそ、よろしくお願いします。父上にも手紙を出しておくので、
 ダンレインさんからの連絡も快く受け取ってくれるでしょう。僕達は
 これが終わった後も色々用事があるので、そろそろお暇させて頂きます」
「はい、承知いたしました。…では、お荷物を纏め終わったらお呼び下さい、
 お見送りさせて頂きます」


10分ほどあと、俺たちは笑顔でデイル家の屋敷から笑顔で立ち去った。

「あ~疲れた~!」
「久々に休める…」

もう俺たちはクタクタだ。事件解決までめげずに突っ走り続けた俺を
褒めて欲しい。

「よく頑張ったなぁ、アラン」
「…心は不用意に読まないでって」

俺が少しムッとして返すとセドリックがまあまあと中に入った。

「今日は祝いにパーティでもしない?飯は作るよ?」
「あ、じゃあそうする?俺は賛成だけど」

ブレアとレシアルドも頷いたのを確認し、俺たちは創作空間の家に戻った。
こう言う時に移動が必要ないのは便利で有る。…携帯ハウス?
なんか、某青色ロボットネコの登場する漫画で似た様な物を見た事が…

うん、気のせい気のせい。


その夜。パーティは誰にも聞かれないところで行われていた。

「しかし、主達が貴族の次男坊であるとは思わなんだ。神でしかも貴族とは。
 主を見る目が変わってしまいそうだな」
「別に僕は貴族かもしれないけど、生まれがそうってだけだから。
 今は冒険者のセドリックだよ。神でもないし」
「そうそう。結局のところ身分なんて見かけだけよ」

今回の一件で、仲間の二人には俺たちが貴族出身で有ることがバレた。
ブレアは『もう何でもいいや』なんて言ってた。何その悟りを開いた感じ。

ふっとレシアルドを見ると、この前買い直した辛子入りの骨つき肉を
食べようとしている。おっ。さてどうなる?
レシアルドは相も変わらずバリバリと骨ごと食べる。

「ほう、以前より辛味が増しているな。我はこちらの方が好きだ」

平然とそう言う彼に俺たちは信じられないと言う目で見た。
…仮にもそれ、上から二つ目のランクの辛さなんですけど。

「マジで痛覚備わってる?俺それ食べた時、辛い通り越して痛かったんだけど」
「失敬な。備わっていると言うておろう」

レシアルドが左手の指先のみ竜の黒い爪に変化させる。
俺は無意識に始めて竜人状態のレシアルドを観察した時の事を思いだす。

あの時はヤバかったなあ。もうすっかりどっかに行ったと信じて疑わなかった
厨二心が暴走しかけたんだもの。それほどカッコよかったんですよ。

「レシアルド、落ち着いて」
「…今回は主に免じて何も聞かなかった事にしよう」

おお、危なかった。マジでやる気だったのか。ま、受けるけど。

「ごめんて。だけどたまに疑わしくなるんだよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

辺境の農村から始まる俺流魔工革命~錬金チートで荒れ地を理想郷に変えてみた~

昼から山猫
ファンタジー
ブラック企業に勤め過労死した俺、篠原タクミは異世界で農夫の息子として転生していた。そこは魔力至上主義の帝国。魔力が弱い者は下層民扱いされ、俺の暮らす辺境の農村は痩せた土地で飢えに苦しむ日々。 だがある日、前世の化学知識と異世界の錬金術を組み合わせたら、ありふれた鉱石から土壌改良剤を作れることに気づく。さらに試行錯誤で魔力ゼロでも動く「魔工器具」を独自開発。荒地は次第に緑豊かな農地へ姿を変え、俺の評判は少しずつ村中に広まっていく。 そんな折、国境付近で魔物の群れが出現し、貴族達が非情な命令を下す。弱者を切り捨てる帝国のやり方に疑問を抱いた俺は、村人達と共に、錬金術で生み出した魔工兵器を手に立ち上がることを決意する。 これは、弱き者が新たな価値を創り出し、世界に挑む物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

運命のいたずら世界へご招待~

夜空のかけら
ファンタジー
ホワイト企業で働く私、飛鳥 みどりは、異世界へご招待されそうになる。 しかし、それをさっと避けて危険回避をした。 故郷の件で、こういう不可思議事案には慣れている…はず。 絶対異世界なんていかないぞ…という私との戦い?の日々な話。 ※ 自著、他作品とクロスオーバーしている部分があります。 1話が500字前後と短いです。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

処理中です...