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第三章 成長

第66話 追及

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「あの、質問なんですけど、屋敷の中央にある筈の柱って何処に有るのですか?」
「ああ、それは壁の奥に埋まっていますね」

そう、上の階には隠し部屋の上に当たる場所にぶっとい柱が悠然と立って
居たのだが、一階にのみそれが無い。そこから攻めようと思ったのだ。

「あの柱の凸凹デザイン、良いと思ったのですが…
 埋めざるを得ない理由でも?」
「ええ、ちょっとこちらに」

そう言ってハンレインさんは俺たちを手招きする。案内されたのは、ハンレイン
さんの自室。墓穴を掘る気か?クローゼットを開け、煌びやかな服などを晒す。

「こちらにどうしてもクローゼットが欲しくて、どうしても柱を潰さざるを
 得なかったのですよ」
「成程。ちょっと中を見ても?」
「ええ勿論」

成る程、確かに柱の厚さ分のクローゼットがある。俺たちは隠し部屋側の
端による。そこで、そっと音もなく壁に穴を開けた。これで反応を見てやろう。

「あれ、ハンレインさん、こっちの壁に穴開いてますよ?」
「え!ちょ、ちょっと退いてください!」
「ええ!?」

いきなり取り乱してハンレインはその穴を見る。

「いつの間に…嫌昨日までは無かったはず…さては…貴方達、人の家を勝手に
 壊しましたね!?」
「え!?嫌壊してなんかないです!」

嘘です。全然壊しました。

「嘘を吐かないで下さい!昨日までは空いていませんでした!なのに急に今日
 開くなんて、ある訳無いじゃないですか!」
「あ、あー…。すみません、じゃあ直しておきます。幸いこういった修理は
 趣味で嗜んでいた時期があるので、応急処置ぐらいは。後、修理代も
 出させて頂きます。少し退いていて下さい」

そう言って軽く腕まくりをする。するとハンレインはとんでも無いと首を振った。

「そんな、伯爵様に修理など畏れ多いことを!修理代も多少は頂きますが、
 そこまで気に負わないでください!」
「そうですか…ではダンレインさんを呼びましょう。代表者とお話ししたいので」
「いえ、父上も良いです!僕の部屋なので!ハハハ!」

見れば、額に冷や汗を浮かべている。もう一押し。ここで…!

「なんの音だ!ハンレイン、何があった!」

ダンレインさん、登場!ハンレインは若干顔をこわばらせ、震えた声で言う。

「いえ、父上、何でもありません。どうぞ、お茶でも飲んでいて下さい」

ヘラッと笑うハンレインを横目に、俺は爆弾を投下する。

「すみませんダンレインさん。僕が間違って壁を壊してしまったのです。
 それで、ダンレインさんを呼ぼうとしていたのです」
「壁を…?まあいい、現場を見せてくれハンレインよ」

ハンレインは黙ったままだ。俺は申し訳なさそうに首を傾げながらダンレインさん
を案内する。

「これは…ハンレイン、どう言うことだ?」
「……」

ダンレインは冷静に、されども威厳のある声でそう言った。無理も無い。
壊れた壁の奥に空間があり、更にそこから金銀財宝が顔を覗かせていたのだから。

俺はスタスタ歩いて本棚を退かす。すると、屈んで入る用の小さな扉が現れた。
ダンレインさんはそれに驚くそぶりを見せ、思い切り開け放つ。
そして俺を見て、少し口角を上げた。俺も口角を上げ返す。

「あっ!それ、は…」
「ハンレイン、説明をしろ。どこでこんなに貯めた?」

再び怒り口調に戻ったダンレインに、俺は説明をする。

「ハンレインさんは、王都に蔓延っていた盗賊団の頭である可能性があります。
 先日、幹部の1人が拿捕されました。これはその盗んだ金銭でしょう」
「ハンレイン、本当なのか?」

ハンレインは、何も言わずに逃げ出した。甘い。逃げられる訳が無いのに。

「うわっ!止めろ!離せ!」

外に待機済のブレアによってあっさり取り押さえられた。ダンレインさんは
ゆっくり近づき、ハンレインを見下げる。

「逃げ出したと言うことは、本当なのだなハンレイン?…お前には呆れた。
 今日限りで、お前はこの家から追放する!拘置所で反省して来い!」
「そんな…!待って下さい父上!」
「喋るな!口も聞きたくない!」

そう言って、ブリブリ怒りながらダンレインさんは去っていった。
ハンレインはそのまま力を失い、倒れ込んでしまった。


数十分後、俺たち3人はダンレインさんに盛大に感謝されていた。

「いやありがとう!ハンレインの裏での行動は怪しく思っていたが追及
 出来ずにいた。今回のでお灸を据えられただろう」
「いえ、ダンレインさんの協力なしには実現しませんでした」
「そうだろう。私の演技力も中々だったろう?」
「ええ、それだけで食っていけるんでは無いでしょうか」

ワハハー!と二人で笑い合う。その光景を見ていたセドリックとブレアは、
こう呟いた。

「「…まさか、全て仕組んでいたとは。アランだけは敵に回さない方がいいな」」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ダンレインさんがハンレインを呼んだ後、少し休憩ということで一度解散
になり、その隙に俺は個人的にダンレインさんと会っていた。
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