純白のレゾン

雨水林檎

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 とんでもないお坊ちゃん先生が来たもんだ。
 向島砂和って言ったっけ。真面目で地味で大丈夫かね、早速先日生徒の喧嘩の仲裁をしようとして軽々と跳ね飛ばされていたが。

「青海先生、図書室の鍵を知りませんか?」
「あ、それ俺持ってるわ。投げるぞ受け取れ」
「ちょっと乱暴に投げないで下さいよ」

 ため息をついて、向島は床に落ちた鍵を拾う。一回り下のこの男は滅多に表情を変えやしない。まぁその辺がお坊ちゃんにしては多少の根性は見られると言ってもいいが。

「向島、今週末暇か?」
「空いてますが」
「ちょうどいい、サシで飲みに行こうぜ。駅前の飲み放題うまいんだってよ」
「お酒ですか……」
「あ、なになにお前酒弱いって? 歓迎会でビール一杯しか飲まなかったもんな。見てたぞ」
「いえ、そう言う訳では。構いませんよ、楽しみにしてます」

 全然楽しそうな顔をせず、向島は答える。よおし、泣かしてやろうじゃないか。基本冷静で崩れもしないその顔をくしゃくしゃに泣かしてやろうじゃないか。
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