3 / 7
03
しおりを挟む
とある日曜日、新島陽(にいじまはる)は部活が休みだった親友、薬師寺優巳(やくしじまさみ)の家に遊びに行くことにした。小学校からの友人の二人はお互いの家を行き来することは多く優巳の母も陽をよく知っている。しかし陽の家は再婚して引っ越したばかりで優巳が訪れるには気まずく、また新しい父親と義兄の有樹のいる家には陽の居場所すらなかった。
インターフォンを押した優巳の家では彼の母が出迎える。陽はにこやかに頭を下げた。
「こんにちはぁ」
「あら! 陽くんいらっしゃい久しぶりね」
「ふふ、ご無沙汰してます。優巳居ますか?」
「遊びに来るからって待ってるわよ、……あら、陽くんなんだか痩せた? 随分細くなっちゃったわね」
「えっ、いやその、ちょっと勉強忙しくて……でも、元気でーす」
「勉強してるの、えらいわねえ。それに引き換え優巳は部活に夢中で、スポーツ推薦で大学に行く予定でもないのに毎日毎日」
「でも優巳成績良いですよお。この間だってクラスで一位だった」
「学校の勉強と大学受験とは違うでしょう? 早い子は一年生から受験について考えてるって言うのに」
その時廊下の奥から優巳が姿を現した。余計なことばかり言う母にげんなりとしている。
「陽、いらっしゃい。部屋来いよ」
「ゆっくりしていってね、陽くん」
「はい、お邪魔しまーす」
優巳の部屋は相変わらず、高校生になっても以前と変わってはいなかった。大好きなスポーツ漫画とバスケットボール選手のポスター。好きなものに囲まれながらしかし机の上には数冊の参考書と問題集が置いてある。さすがに勉強もしていないわけではないようだ。
「優巳の部屋だねえ」
「そうだよ、なんだよいまさら」
「変わってなくて安心する」
「そうかー? ほらマンガ読もうぜ、これお前が読みたいって言ってたやつ。先月完結したの」
「えっ、完結? 読む読む!」
それから二人は漫画を読んだり寝っ転がってゲームをしたりと子供の様な時間を過ごした。疲れる日々が続いていた陽にとって久しぶりの心からのんびりとリラックスできる時間、そんな日曜日の昼下がりがあまりに楽しくて陽はずっと終始満面の笑みで過ごした。そんな陽を見ている優巳も嬉しい。最近の陽は学校でも疲れた表情が多く、ここまでの笑顔を見ることは出来なかったからだ。幼い頃から人前ではいつも笑顔だった陽、その陽の笑顔はいつでもそこにあるものだと思っていたのに。
「陽?」
隣で再び漫画を読んでいた陽が眠っている。その寝顔があまりにあどけなくて、優巳は思わず魅入ってしまった。まるで子供みたいだ、でも……。
「なんでお前、こんなに顔色悪いんだよ……」
疲れて青ざめた表情で眠っている。中学までの陽は小柄でふっくらとした丸い頬に血色の良い桃色の頬が印象的な健康的でかわいらしい少年だった。それが高校に入学してほんの数か月で食欲もなくすっかり痩せやつれて今にも倒れてしまいそうなほど体調の悪い日が続いている。
「陽……陽、おきろよ……!」
「ん……ああ、ごめん寝ちゃった」
そう言って陽はにこり、と笑った。その笑顔が切なくて優巳は陽を抱き寄せた。思わず浮かんできた涙を見られないようにぎゅっと、陽は優巳の胸元で息が出来ない。
「ま、優巳っ、くるし、苦しいってば……」
「うるさい……黙って抱かれてろ」
「優巳、泣いてるの……?」
「泣くかよ、ばーか!」
鼻声で言い返しても説得力がない。しばらくの間ふたりはそのまま抱き合って、静かな時間が流れていた。
***
「最近ちゃんと眠ってるのか?」
「僕? ううーん、勉強してるとどうしても遅くなっちゃって……でも、三、四時間は眠るようにしてるよ」
「たったそれだけかよ、もっと眠らないと身体に良くないだろ」
「優巳だって部活で朝早いでしょう?」
「俺は早く寝てるよ、勉強も部活が休みの日しかしてない」
「すごいなぁ、僕は家で勉強してても未だに授業について行くのが大変で」
「あまり無理しないほうが良いと思うぜ、成績なんて最低限取れてればいいだろ」
「もう、その最低限が難しいんだよー……」
窓の外は夕陽が暮れだしていた。もう一日が終わってしまう、陽にとって明日からはまた学校の授業に追われる日々だ。
「僕、そろそろ帰ろうかなー、ごめんね、長居しすぎちゃったかも」
「もっといろよ、夕飯も食って行ったらいいじゃないか」
「いや、それはさすがに申し訳ないから」
「ちゃんと家で飯食えよ、日曜だし家族もいるんだろ?」
「うん」
「陽……、あの家に本当にお前の居場所はあるのか?」
その質問にぎくりと陽の表情が固まった。優巳が少し変な顔をする、慌てて笑顔に戻った陽はあるよ、大丈夫と軽く返した。でも本当は……。
「僕、帰るね。今日はありがと! 楽しかったよ」
「明日も部活あるから終わったら一緒に帰ろうな」
「うん、待ってる」
そして陽は優巳の家を後にした。楽しい時間を過ごした、こんな時間がもっと続けばいいのに。過ごした時間が楽しかった分だけ、帰ることが辛くなる。
陽は家に近いコンビニで、お茶と小さな菓子パンを一個買った。もう一日一食が当たり前の日常になってしまっている。菓子パンよりも弁当や総菜をいくつか買って食べるほうが身体に良いのだろうが、あまり食べる気がしない。飲み物だけで過ごしてしまいたい気分もあったが、最近また立ち眩みやふらつきが酷くなっていて毎日やけに疲れてしまう。だからせめてパンだけでも食べないと……。
自宅に帰宅すると食卓からは楽し気な声が聞こえて来た。夕食の時間なのか、もうすっかり忘れられてしまった自分の存在を情けなく思いながら黙って靴を脱ぐ。その時夕食のメニューらしいクリームシチューの独特な香りに思わず陽は吐き気を催す。ぐっと吐きそうなのを我慢して、陽は自分の部屋に駆け込んだ。
「ハァ、ハァッ……う、ッ……」
今にも吐いてしまいそうな気分を落ち着かせるように必死に陽は胸元をさする。吐くなら、トイレに行かないと……でももう足元がぐらぐらとふらついてうまく歩くことが出来なくなってしまっている。このままここで吐いてしまうわけにはいかない。その場に座り込み必死で吐き気を我慢するように陽はベッドにあった枕に顔をうずめてしばらくの間動けないでいた。
***
気がついたらもう夜十時を過ぎていた。ようやく吐き気は落ち着いたもののなんだかひどく疲れてしまって、陽はぐったりと部屋で横になっている。買ってきたお茶を飲んで、溜息をつく。お茶と一緒にせっかく買ったパンだったが今日はなんだか食べられそうにない。
「明日の……お昼に食べようかな……」
賞味期限は大丈夫、明日の食事にしよう。しかしお茶しか飲めなかった今日の食事、こんな生活を続けているとそろそろまた倒れるかもしれない。体重を測るのはもう怖くて気が進まなくなっていた。きっともっと痩せてしまっているのだろう。ふと腕を見ればやけに血管が浮いて筋張って骨ばってげっそりと細い。
こんなに細い腕をあまり人に見せてはいけない。周りに心配されるのは嫌だ、でも親にも心配されていないくらいなのだからそこまで皆気にしないのかもしれないなと思う。でも、優巳。優巳は目ざとくて陽が日々痩せ続けていることを陽自身より気が付いている。もうすぐ制服が夏服に代わる、優巳に気を遣わせないためにも暑くてもワイシャツはしばらく長袖を着ようか。
この体調不良はもう治らないのだろうか。そう思うと怖くなる。食べられないから身体も痩せ続けているし、貧血や骨折の危険性、そんなことを西谷先生も言っていた。でもなんだか最近どうでもよくなってきてしまった。動ける限りは動いて、動けなくなったら……もう。いや、こんなことを考えてはいけない。陽はふるふると首を振り、明日のために勉強を始めようと問題集を開いて机についた。今夜は一体何時に眠ることが出来るのだろうか。
***
結局眠ることが出来たのは深夜三時で、そのまま早朝六時には起きなければならなかった。眠った気がしない明らかな睡眠不足。優巳と遊ばずにもっと早く昼間から勉強をしていたらよかったのかもしれない。でも優巳と過ごした時間は辛い日常を送る陽にとっては救いだった。
制服に着替えて部屋を出る。そこでまた有樹と出会ってしまった。有樹はじろりと陽をにらみつけて舌打ちしドン、と押し飛ばしその場を去る。衝撃で思わず陽は壁に身体をぶつけて床に転がりそこでまた強かに身体を打ち付けた。無言の悪意に無意識の涙が浮かんでくる。すっかり嫌われてしまった、でもろくに話もしたことがないのに有樹は陽の何をそんなに嫌うのだろう。少なくても義理の兄、その関係性は法的にも明らかなものであると言うのに。
「僕が、悪いのかな……」
朝からイラつかせる、そんな嫌なところが自分にあるのかもしれない。どうしたらいい? 謝ったらいつか許してくれるだろうか。傷ついた心を抱えながら陽はリビングに行き、母と義父に挨拶をする。二人は朝食を食べていた、そこには有樹の分も。自分の分だけないことを確かめて、陽は学校に行くことを告げた。朝食がないのだってもとはと言えば自分で言いだしたことだ、でももうどこにも居場所がない。そこでもまた、陽の心は傷ついていた。
月曜日は朝礼がある。体育館に集まって立ちっぱなし、この時期は湿気と暑さの始まりでどこか息苦しい気分になる。それは陽も同じで先程から気分が悪くて仕方がない。あと少しだけ、あと少しで終わるから耐えなければ……しかし目の前がぐらつく、視界が時折真っ暗になりチカチカと点滅して血の気が引き、今にも吐いてしまいそうな吐き気がある。全身が冷や汗で濡れていた。もう、限界かもしれない。そして陽は長い溜息をついてそのまま足元から崩れるように音を立ててその場に倒れた。
「……くん、陽くん!」
遠くから聞こえるようなその声に重い目を開けた。陽は養護教諭西谷に抱きかかえられている。一瞬自分に何があったのかわからなかったが、そう言えば倒れた気がする、と思い出し天井を見上げる。体育館の高い天井、陽は館内の端に寝かされていた。
「大丈夫かい、頭打たなかった?」
「あたまは、うってない……です……」
「もう少しで朝礼終わるからね、終わったら保健室に行こう」
「だ、だいじょうぶ……もう大丈夫です、教室戻ります」
「無理はしたら駄目だよ、少し寝ていきなさい」
「授業出たいんです、そのために昨日も勉強したのに」
「夜更かしでもした?」
「三時すぎまで勉強していて」
「それは身体に悪いなあ、勉強もほどほどにしないと」
そこへ優巳が駆けつけた。ひざまずいてそっと西谷に抱かれた陽のもとに寄る。
「大丈夫か? 陽」
「優巳……」
「優巳くん、ちょうどよかった。陽くんを保健室に連れていくのを手伝ってくれる?」
「ぼ、ぼく教室に」
「陽、少し横になっていろよ。無理したら駄目だ」
そして朝礼の終了とともに優巳は陽を背負い保健室へ。陽は教室に帰りたがったが顔色の悪さもありしばらく保健室で過ごすことになった。
「陽くん、最近調子はどう?」
「元気ですよー」
「そう? ならいいんだけど……ちょっとまた痩せちゃったみたいだから」
「少し食欲がないだけです。学校には来れてるし」
「お母さん、何か言ってた?」
「何かって?」
「食欲ないんでしょう? 心配じゃないのかな」
西谷の言葉に陽は少し寂しげな表情をする。
「あまり、話もしないから……」
「ご飯食べるときとかお話しない?」
「お母さん、ご飯はもう作ってくれないんです。僕は残すから作りたくないって」
「陽くん……じゃあ家ではご飯食べてないの?」
「でも大丈夫です。そんなにお腹空かないから」
「陽くん、それは大丈夫じゃあないよ」
「先生……で、でも学校じゃ食べてるし」
「何を食べてるの?」
「おにぎり、とか……今日はパン食べようと思って」
「それだけ? それじゃあ身体持つはずない。痩せてしまって当たり前だ」
「で、でもだいじょうぶ、大丈夫なんです。僕、元気だから……!」
大丈夫じゃないのに大丈夫を繰り返す陽、西谷は悩んでいた。
***
一時間目の授業が終わり、保健室に優巳がやって来た。しかしちょうど陽は眠ってしまっていて西谷の判断もありしばらくまだ寝かせておくことにした。じっと陽の寝顔を見つめている優巳に西谷は少し話がある、と言う。
「え、……食べてない?」
「陽くん、お家でご飯作ってもらえないって言っていて。そんなにお母さん厳しい人なのかな?」
「ちょっときつい人かなって印象はあります。陽、昔よく怪我して学校に来たりとかしていたから」
「暴力かな……それはもう虐待だね」
「最近再婚したらしくて、なんだか家でうまくいってないみたいなんです。だから余計に陽にきつくあたるのかもしれない」
「まいったな、あまりこちらから言って刺激してしまうのも陽くんが余計辛い目にあってしまうかもしれない。でもこのままじゃ……」
「陽、最近具合悪そうなんです。顔色も悪いし大分痩せたし」
「とりあえず食事かな、優巳くんからも陽くんにもうちょっと食べるように言ってやってくれないかな?」
***
昼休み、保健室から戻ってきた陽の机に購買のランチ弁当が置かれていた。戸惑う陽の前に自分の弁当を持った優巳が座る。
「ま、優巳? これ……」
「お前の昼食だよ、今日はこれを食べろ」
「そんな、多いよこんなに」
「聞いたぞ、お前家じゃ飯食ってないって。だからそんなに痩せたんだな」
「優巳……」
「弁当食べろよ、本当はこれだけでも足りないんだぜ」
「でも」
「いいから、食べろ」
困った顔をした陽は仕方なく席に着く。弁当のふたを空ければ脂っぽい唐揚げやコロッケなど高校生に好かれそうなおかずの匂いがする。それに少し抵抗感を感じてしまった陽だったが、せっかく気を遣って優巳が買ってきてくれたものだし、と気の進まないまま箸をつける。一口一口が脂っこくて辛い、でも陽から目をそらさない優巳、結局無理して半分ほど食べたところで陽は限界を訴えた。
「も、もう食べられない……ごめん、優巳」
「これだけでおなか一杯になったのか? 明日はもう少し食べような」
「うん……」
残ったおかずは優巳が食べた。陽は無理して食べたことが辛いのを言えないまま、午後の授業を迎える。
国語の授業では皆静まり返って教科書を見ながら板書をしている。眠っている生徒はおらず真剣な空気が教室を包んでいた。その中で、必死に陽は吐き気をこらえている。無理して食べたのが悪かった、脂物のもたれた感覚に胃が膨れて重い違和感。でも授業中に吐いてしまうわけにはいかない。こんなところで……陽のこめかみを大量の冷や汗が伝っている。ビクビクと陽の腹部が痙攣するように震えて、思わず口元をぎゅっと抑えた。
「陽? どうした」
隣の席の優巳が陽の異変に気が付いた。陽は涙ぐんだ瞳で助けを求めるように優巳を見て、ついにこらえきれずその場で嘔吐してしまった。
「ゴフッ……! ゴプ、ゲ……ッ うぇ……ッ……」
「陽!」
「ゲエッ、うぇ、ゴホッ、……ごぷ、ぅあ……ゲホッ、ゴホッ……!」
手では受け止めきれなかった吐瀉物が床に広がって行く。教室で吐いてしまった、その申し訳なさが余計吐き気を助長させる。慌てた優巳が陽の背中をさすり、教室は授業どころではなくなってしまった。
***
壁には優巳が丁寧に水洗いした制服が掛けてある。体操着姿に着替えた陽は再び保健室のベッドで横になっていた。腹痛を訴えて、背中を丸めて痛む腹部を押さえている。
「俺が無理やり食べさせたから……」
「でも、お弁当半分程度でしょう? 量はそんなに食べていないよね。そんな少量でも、食べられない」
吐き気がまだあると言い、水もまだ飲めない状態だった。そんな陽を西谷は気にしている。
「まいったな、このままじゃ確実に栄養失調になってしまう。命にも関わることだよ」
「俺に出来ることはありませんか?」
「優巳くんの存在は陽くんにとってきっとすごく救いになっていると思うよ。家に居場所がないのなら、そのぶんきっと」
「陽、小さい頃からずっと外じゃ笑顔で、お母さんは長いことシングルマザーで家じゃあまり面倒見てもらえなかったみたいで。学校行事に保護者が来ているのも見たことないし、酷い時は給食なくて弁当が必要な時でも何も持たずに来てた」
「陽くんは不満を言ったりはしていなかったの?」
「なにも、むしろあいつがお母さんのこと悪く言ってるの聞いたことない。いつもむしろ気遣って無理ばっかりしてた」
「……不憫だね」
腹部を抑えていた陽はいつの間にか眠ってしまっていた。その表情が疲れていて、疲労感は強そうだった。寝不足もあるし、栄養不足もある。日々の無理が祟っているのだろう。
「とりあえず優巳くんは授業に戻って。吐いてしまったことだし陽くんは少し休ませておいたほうが良い、放課後にでも迎えに来てあげてよ」
「はい」
名残惜しそうな表情をしながら優巳は眠っている陽を見て教室に帰って行った。西谷は頭を抱える。陽にとって一体どうしてやることが一番良いのかと。
***
「陽、これでいいのか?」
「うん、あ、でももう少し短くしても……いいかも」
放課後の保健室で優巳は陽のベルトの調整をしていた。緩くて仕方がないからもっと短くしてもらいたいと言う陽の言葉にはさみでベルトの革を切っている。当初のものよりだいぶ短くなってしまった。でも合わせてみるとまだ緩くて、優巳は何度も調整を繰り返す。
「……ここまで痩せたんだな、お前」
干してあった制服に陽はベルトを合わせる。ちょうどよくなった腰回り、そして体操着からワイシャツに着替えた頃、薄暗くなった廊下からチャイムの音が聞こえる。時刻はもう最終下刻時刻を過ぎていた。夜が始まる、それは陽にとって長い孤独の始まりだった。
インターフォンを押した優巳の家では彼の母が出迎える。陽はにこやかに頭を下げた。
「こんにちはぁ」
「あら! 陽くんいらっしゃい久しぶりね」
「ふふ、ご無沙汰してます。優巳居ますか?」
「遊びに来るからって待ってるわよ、……あら、陽くんなんだか痩せた? 随分細くなっちゃったわね」
「えっ、いやその、ちょっと勉強忙しくて……でも、元気でーす」
「勉強してるの、えらいわねえ。それに引き換え優巳は部活に夢中で、スポーツ推薦で大学に行く予定でもないのに毎日毎日」
「でも優巳成績良いですよお。この間だってクラスで一位だった」
「学校の勉強と大学受験とは違うでしょう? 早い子は一年生から受験について考えてるって言うのに」
その時廊下の奥から優巳が姿を現した。余計なことばかり言う母にげんなりとしている。
「陽、いらっしゃい。部屋来いよ」
「ゆっくりしていってね、陽くん」
「はい、お邪魔しまーす」
優巳の部屋は相変わらず、高校生になっても以前と変わってはいなかった。大好きなスポーツ漫画とバスケットボール選手のポスター。好きなものに囲まれながらしかし机の上には数冊の参考書と問題集が置いてある。さすがに勉強もしていないわけではないようだ。
「優巳の部屋だねえ」
「そうだよ、なんだよいまさら」
「変わってなくて安心する」
「そうかー? ほらマンガ読もうぜ、これお前が読みたいって言ってたやつ。先月完結したの」
「えっ、完結? 読む読む!」
それから二人は漫画を読んだり寝っ転がってゲームをしたりと子供の様な時間を過ごした。疲れる日々が続いていた陽にとって久しぶりの心からのんびりとリラックスできる時間、そんな日曜日の昼下がりがあまりに楽しくて陽はずっと終始満面の笑みで過ごした。そんな陽を見ている優巳も嬉しい。最近の陽は学校でも疲れた表情が多く、ここまでの笑顔を見ることは出来なかったからだ。幼い頃から人前ではいつも笑顔だった陽、その陽の笑顔はいつでもそこにあるものだと思っていたのに。
「陽?」
隣で再び漫画を読んでいた陽が眠っている。その寝顔があまりにあどけなくて、優巳は思わず魅入ってしまった。まるで子供みたいだ、でも……。
「なんでお前、こんなに顔色悪いんだよ……」
疲れて青ざめた表情で眠っている。中学までの陽は小柄でふっくらとした丸い頬に血色の良い桃色の頬が印象的な健康的でかわいらしい少年だった。それが高校に入学してほんの数か月で食欲もなくすっかり痩せやつれて今にも倒れてしまいそうなほど体調の悪い日が続いている。
「陽……陽、おきろよ……!」
「ん……ああ、ごめん寝ちゃった」
そう言って陽はにこり、と笑った。その笑顔が切なくて優巳は陽を抱き寄せた。思わず浮かんできた涙を見られないようにぎゅっと、陽は優巳の胸元で息が出来ない。
「ま、優巳っ、くるし、苦しいってば……」
「うるさい……黙って抱かれてろ」
「優巳、泣いてるの……?」
「泣くかよ、ばーか!」
鼻声で言い返しても説得力がない。しばらくの間ふたりはそのまま抱き合って、静かな時間が流れていた。
***
「最近ちゃんと眠ってるのか?」
「僕? ううーん、勉強してるとどうしても遅くなっちゃって……でも、三、四時間は眠るようにしてるよ」
「たったそれだけかよ、もっと眠らないと身体に良くないだろ」
「優巳だって部活で朝早いでしょう?」
「俺は早く寝てるよ、勉強も部活が休みの日しかしてない」
「すごいなぁ、僕は家で勉強してても未だに授業について行くのが大変で」
「あまり無理しないほうが良いと思うぜ、成績なんて最低限取れてればいいだろ」
「もう、その最低限が難しいんだよー……」
窓の外は夕陽が暮れだしていた。もう一日が終わってしまう、陽にとって明日からはまた学校の授業に追われる日々だ。
「僕、そろそろ帰ろうかなー、ごめんね、長居しすぎちゃったかも」
「もっといろよ、夕飯も食って行ったらいいじゃないか」
「いや、それはさすがに申し訳ないから」
「ちゃんと家で飯食えよ、日曜だし家族もいるんだろ?」
「うん」
「陽……、あの家に本当にお前の居場所はあるのか?」
その質問にぎくりと陽の表情が固まった。優巳が少し変な顔をする、慌てて笑顔に戻った陽はあるよ、大丈夫と軽く返した。でも本当は……。
「僕、帰るね。今日はありがと! 楽しかったよ」
「明日も部活あるから終わったら一緒に帰ろうな」
「うん、待ってる」
そして陽は優巳の家を後にした。楽しい時間を過ごした、こんな時間がもっと続けばいいのに。過ごした時間が楽しかった分だけ、帰ることが辛くなる。
陽は家に近いコンビニで、お茶と小さな菓子パンを一個買った。もう一日一食が当たり前の日常になってしまっている。菓子パンよりも弁当や総菜をいくつか買って食べるほうが身体に良いのだろうが、あまり食べる気がしない。飲み物だけで過ごしてしまいたい気分もあったが、最近また立ち眩みやふらつきが酷くなっていて毎日やけに疲れてしまう。だからせめてパンだけでも食べないと……。
自宅に帰宅すると食卓からは楽し気な声が聞こえて来た。夕食の時間なのか、もうすっかり忘れられてしまった自分の存在を情けなく思いながら黙って靴を脱ぐ。その時夕食のメニューらしいクリームシチューの独特な香りに思わず陽は吐き気を催す。ぐっと吐きそうなのを我慢して、陽は自分の部屋に駆け込んだ。
「ハァ、ハァッ……う、ッ……」
今にも吐いてしまいそうな気分を落ち着かせるように必死に陽は胸元をさする。吐くなら、トイレに行かないと……でももう足元がぐらぐらとふらついてうまく歩くことが出来なくなってしまっている。このままここで吐いてしまうわけにはいかない。その場に座り込み必死で吐き気を我慢するように陽はベッドにあった枕に顔をうずめてしばらくの間動けないでいた。
***
気がついたらもう夜十時を過ぎていた。ようやく吐き気は落ち着いたもののなんだかひどく疲れてしまって、陽はぐったりと部屋で横になっている。買ってきたお茶を飲んで、溜息をつく。お茶と一緒にせっかく買ったパンだったが今日はなんだか食べられそうにない。
「明日の……お昼に食べようかな……」
賞味期限は大丈夫、明日の食事にしよう。しかしお茶しか飲めなかった今日の食事、こんな生活を続けているとそろそろまた倒れるかもしれない。体重を測るのはもう怖くて気が進まなくなっていた。きっともっと痩せてしまっているのだろう。ふと腕を見ればやけに血管が浮いて筋張って骨ばってげっそりと細い。
こんなに細い腕をあまり人に見せてはいけない。周りに心配されるのは嫌だ、でも親にも心配されていないくらいなのだからそこまで皆気にしないのかもしれないなと思う。でも、優巳。優巳は目ざとくて陽が日々痩せ続けていることを陽自身より気が付いている。もうすぐ制服が夏服に代わる、優巳に気を遣わせないためにも暑くてもワイシャツはしばらく長袖を着ようか。
この体調不良はもう治らないのだろうか。そう思うと怖くなる。食べられないから身体も痩せ続けているし、貧血や骨折の危険性、そんなことを西谷先生も言っていた。でもなんだか最近どうでもよくなってきてしまった。動ける限りは動いて、動けなくなったら……もう。いや、こんなことを考えてはいけない。陽はふるふると首を振り、明日のために勉強を始めようと問題集を開いて机についた。今夜は一体何時に眠ることが出来るのだろうか。
***
結局眠ることが出来たのは深夜三時で、そのまま早朝六時には起きなければならなかった。眠った気がしない明らかな睡眠不足。優巳と遊ばずにもっと早く昼間から勉強をしていたらよかったのかもしれない。でも優巳と過ごした時間は辛い日常を送る陽にとっては救いだった。
制服に着替えて部屋を出る。そこでまた有樹と出会ってしまった。有樹はじろりと陽をにらみつけて舌打ちしドン、と押し飛ばしその場を去る。衝撃で思わず陽は壁に身体をぶつけて床に転がりそこでまた強かに身体を打ち付けた。無言の悪意に無意識の涙が浮かんでくる。すっかり嫌われてしまった、でもろくに話もしたことがないのに有樹は陽の何をそんなに嫌うのだろう。少なくても義理の兄、その関係性は法的にも明らかなものであると言うのに。
「僕が、悪いのかな……」
朝からイラつかせる、そんな嫌なところが自分にあるのかもしれない。どうしたらいい? 謝ったらいつか許してくれるだろうか。傷ついた心を抱えながら陽はリビングに行き、母と義父に挨拶をする。二人は朝食を食べていた、そこには有樹の分も。自分の分だけないことを確かめて、陽は学校に行くことを告げた。朝食がないのだってもとはと言えば自分で言いだしたことだ、でももうどこにも居場所がない。そこでもまた、陽の心は傷ついていた。
月曜日は朝礼がある。体育館に集まって立ちっぱなし、この時期は湿気と暑さの始まりでどこか息苦しい気分になる。それは陽も同じで先程から気分が悪くて仕方がない。あと少しだけ、あと少しで終わるから耐えなければ……しかし目の前がぐらつく、視界が時折真っ暗になりチカチカと点滅して血の気が引き、今にも吐いてしまいそうな吐き気がある。全身が冷や汗で濡れていた。もう、限界かもしれない。そして陽は長い溜息をついてそのまま足元から崩れるように音を立ててその場に倒れた。
「……くん、陽くん!」
遠くから聞こえるようなその声に重い目を開けた。陽は養護教諭西谷に抱きかかえられている。一瞬自分に何があったのかわからなかったが、そう言えば倒れた気がする、と思い出し天井を見上げる。体育館の高い天井、陽は館内の端に寝かされていた。
「大丈夫かい、頭打たなかった?」
「あたまは、うってない……です……」
「もう少しで朝礼終わるからね、終わったら保健室に行こう」
「だ、だいじょうぶ……もう大丈夫です、教室戻ります」
「無理はしたら駄目だよ、少し寝ていきなさい」
「授業出たいんです、そのために昨日も勉強したのに」
「夜更かしでもした?」
「三時すぎまで勉強していて」
「それは身体に悪いなあ、勉強もほどほどにしないと」
そこへ優巳が駆けつけた。ひざまずいてそっと西谷に抱かれた陽のもとに寄る。
「大丈夫か? 陽」
「優巳……」
「優巳くん、ちょうどよかった。陽くんを保健室に連れていくのを手伝ってくれる?」
「ぼ、ぼく教室に」
「陽、少し横になっていろよ。無理したら駄目だ」
そして朝礼の終了とともに優巳は陽を背負い保健室へ。陽は教室に帰りたがったが顔色の悪さもありしばらく保健室で過ごすことになった。
「陽くん、最近調子はどう?」
「元気ですよー」
「そう? ならいいんだけど……ちょっとまた痩せちゃったみたいだから」
「少し食欲がないだけです。学校には来れてるし」
「お母さん、何か言ってた?」
「何かって?」
「食欲ないんでしょう? 心配じゃないのかな」
西谷の言葉に陽は少し寂しげな表情をする。
「あまり、話もしないから……」
「ご飯食べるときとかお話しない?」
「お母さん、ご飯はもう作ってくれないんです。僕は残すから作りたくないって」
「陽くん……じゃあ家ではご飯食べてないの?」
「でも大丈夫です。そんなにお腹空かないから」
「陽くん、それは大丈夫じゃあないよ」
「先生……で、でも学校じゃ食べてるし」
「何を食べてるの?」
「おにぎり、とか……今日はパン食べようと思って」
「それだけ? それじゃあ身体持つはずない。痩せてしまって当たり前だ」
「で、でもだいじょうぶ、大丈夫なんです。僕、元気だから……!」
大丈夫じゃないのに大丈夫を繰り返す陽、西谷は悩んでいた。
***
一時間目の授業が終わり、保健室に優巳がやって来た。しかしちょうど陽は眠ってしまっていて西谷の判断もありしばらくまだ寝かせておくことにした。じっと陽の寝顔を見つめている優巳に西谷は少し話がある、と言う。
「え、……食べてない?」
「陽くん、お家でご飯作ってもらえないって言っていて。そんなにお母さん厳しい人なのかな?」
「ちょっときつい人かなって印象はあります。陽、昔よく怪我して学校に来たりとかしていたから」
「暴力かな……それはもう虐待だね」
「最近再婚したらしくて、なんだか家でうまくいってないみたいなんです。だから余計に陽にきつくあたるのかもしれない」
「まいったな、あまりこちらから言って刺激してしまうのも陽くんが余計辛い目にあってしまうかもしれない。でもこのままじゃ……」
「陽、最近具合悪そうなんです。顔色も悪いし大分痩せたし」
「とりあえず食事かな、優巳くんからも陽くんにもうちょっと食べるように言ってやってくれないかな?」
***
昼休み、保健室から戻ってきた陽の机に購買のランチ弁当が置かれていた。戸惑う陽の前に自分の弁当を持った優巳が座る。
「ま、優巳? これ……」
「お前の昼食だよ、今日はこれを食べろ」
「そんな、多いよこんなに」
「聞いたぞ、お前家じゃ飯食ってないって。だからそんなに痩せたんだな」
「優巳……」
「弁当食べろよ、本当はこれだけでも足りないんだぜ」
「でも」
「いいから、食べろ」
困った顔をした陽は仕方なく席に着く。弁当のふたを空ければ脂っぽい唐揚げやコロッケなど高校生に好かれそうなおかずの匂いがする。それに少し抵抗感を感じてしまった陽だったが、せっかく気を遣って優巳が買ってきてくれたものだし、と気の進まないまま箸をつける。一口一口が脂っこくて辛い、でも陽から目をそらさない優巳、結局無理して半分ほど食べたところで陽は限界を訴えた。
「も、もう食べられない……ごめん、優巳」
「これだけでおなか一杯になったのか? 明日はもう少し食べような」
「うん……」
残ったおかずは優巳が食べた。陽は無理して食べたことが辛いのを言えないまま、午後の授業を迎える。
国語の授業では皆静まり返って教科書を見ながら板書をしている。眠っている生徒はおらず真剣な空気が教室を包んでいた。その中で、必死に陽は吐き気をこらえている。無理して食べたのが悪かった、脂物のもたれた感覚に胃が膨れて重い違和感。でも授業中に吐いてしまうわけにはいかない。こんなところで……陽のこめかみを大量の冷や汗が伝っている。ビクビクと陽の腹部が痙攣するように震えて、思わず口元をぎゅっと抑えた。
「陽? どうした」
隣の席の優巳が陽の異変に気が付いた。陽は涙ぐんだ瞳で助けを求めるように優巳を見て、ついにこらえきれずその場で嘔吐してしまった。
「ゴフッ……! ゴプ、ゲ……ッ うぇ……ッ……」
「陽!」
「ゲエッ、うぇ、ゴホッ、……ごぷ、ぅあ……ゲホッ、ゴホッ……!」
手では受け止めきれなかった吐瀉物が床に広がって行く。教室で吐いてしまった、その申し訳なさが余計吐き気を助長させる。慌てた優巳が陽の背中をさすり、教室は授業どころではなくなってしまった。
***
壁には優巳が丁寧に水洗いした制服が掛けてある。体操着姿に着替えた陽は再び保健室のベッドで横になっていた。腹痛を訴えて、背中を丸めて痛む腹部を押さえている。
「俺が無理やり食べさせたから……」
「でも、お弁当半分程度でしょう? 量はそんなに食べていないよね。そんな少量でも、食べられない」
吐き気がまだあると言い、水もまだ飲めない状態だった。そんな陽を西谷は気にしている。
「まいったな、このままじゃ確実に栄養失調になってしまう。命にも関わることだよ」
「俺に出来ることはありませんか?」
「優巳くんの存在は陽くんにとってきっとすごく救いになっていると思うよ。家に居場所がないのなら、そのぶんきっと」
「陽、小さい頃からずっと外じゃ笑顔で、お母さんは長いことシングルマザーで家じゃあまり面倒見てもらえなかったみたいで。学校行事に保護者が来ているのも見たことないし、酷い時は給食なくて弁当が必要な時でも何も持たずに来てた」
「陽くんは不満を言ったりはしていなかったの?」
「なにも、むしろあいつがお母さんのこと悪く言ってるの聞いたことない。いつもむしろ気遣って無理ばっかりしてた」
「……不憫だね」
腹部を抑えていた陽はいつの間にか眠ってしまっていた。その表情が疲れていて、疲労感は強そうだった。寝不足もあるし、栄養不足もある。日々の無理が祟っているのだろう。
「とりあえず優巳くんは授業に戻って。吐いてしまったことだし陽くんは少し休ませておいたほうが良い、放課後にでも迎えに来てあげてよ」
「はい」
名残惜しそうな表情をしながら優巳は眠っている陽を見て教室に帰って行った。西谷は頭を抱える。陽にとって一体どうしてやることが一番良いのかと。
***
「陽、これでいいのか?」
「うん、あ、でももう少し短くしても……いいかも」
放課後の保健室で優巳は陽のベルトの調整をしていた。緩くて仕方がないからもっと短くしてもらいたいと言う陽の言葉にはさみでベルトの革を切っている。当初のものよりだいぶ短くなってしまった。でも合わせてみるとまだ緩くて、優巳は何度も調整を繰り返す。
「……ここまで痩せたんだな、お前」
干してあった制服に陽はベルトを合わせる。ちょうどよくなった腰回り、そして体操着からワイシャツに着替えた頃、薄暗くなった廊下からチャイムの音が聞こえる。時刻はもう最終下刻時刻を過ぎていた。夜が始まる、それは陽にとって長い孤独の始まりだった。
91
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

楓の散る前に。
星未めう
BL
病弱な僕と働き者の弟。でも、血は繋がってない。
甘やかしたい、甘やかされてはいけない。
1人にしたくない、1人にならなくちゃいけない。
愛したい、愛されてはいけない。
はじめまして、星見めうと申します。普段は二次創作で活動しておりますが、このたび一次創作を始めるにあたってこちらのサイトを使用させていただくことになりました。話の中に体調不良表現が多く含まれます。嘔吐等も出てくると思うので苦手な方はプラウザバックよろしくお願いします。
ゆっくりゆるゆる更新になるかと思われます。ちょくちょくネタ等呟くかもしれないTwitterを貼っておきます。
星見めう https://twitter.com/hoshimimeu_00
普段は二次垢におりますのでもしご興味がありましたらその垢にリンクあります。
お気に入り、しおり、感想等ありがとうございます!ゆっくり更新ですが、これからもよろしくお願いします(*´˘`*)♡



素直じゃない人
うりぼう
BL
平社員×会長の孫
社会人同士
年下攻め
ある日突然異動を命じられた昭仁。
異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。
厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。
しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。
そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり……
というMLものです。
えろは少なめ。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる