渇望のレノ、祝福の朝

サクリファイス・レノ

05

「ここが図書館、あまり新しいものは置いていないけれど調べ物には静かでちょうど良いんです。隣は昔、大きなお屋敷があったとか。僕がこの町に来たときにはもうこうして更地になっていて……変わらないように見えても、世界は少しずつ日々何かしら変わって行くものですね」

　雨の止んでいる休日にレノとグローザは二人でバスに乗って中心街まで食材と日用品の買い物に行っていた。グローザは力があるので軽々と大荷物を背負っている。彼は隣で町の案内をするレノの顔色の悪さが気になっていた。

「レノ」
「診療所まではもうすぐですよ、それにしても今日は暑いですね。汗がやけに止まらなくて」
「大丈夫か？」
「心配してくれるんですか、グローザ」

　ぐらり、とレノの身体がかしいだ。荷物を落とさないようにグローザはレノの身体を抱きとめる。

「レノ！」

　＊＊＊

「……少し寝不足が過ぎただけですよ、大したことはありません」
「寝ないで何をしているんだ、この頃夜に目が覚めてもいないから」
「寝付きが悪いので景色を見ているんです。夜は静かですよ」

　寝室に連れられたレノはベッドに寝かされてぼんやりと窓の外を見ている。グローザはじっと彼を見つめた。

「もう、グローザ、そんな顔しないでください。大丈夫ですから。雨の時期が終わったらもっと暑くなりますね。あなたの夏服も用意しないと……」
「俺はまだここにいても良いのか？」
「いつまででも、ちょうど一人で寂しかった頃です」

　グローザは黙ってレノの手のひらに触れる。グローザ自身の手のたくましい造りとの違いを比べてそれのあまりに華奢なことに、彼はどこか複雑な顔をしていた。