OVERKILL(オーバーキル) ～世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない～

第五章 冒険者の高みへ・蠢き始める凶星達

96 Death Struggling In The Underground

冥界編続きです。
今回は視点があちこちに飛びます。
読みにくかったらすみません(￣▽￣;)

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「ハァ、ハァ……、ちったあやるようになったじゃねえか。化け物野郎」
「ハァ、ハァ……、貴様こそ相も変わらずしぶといものよな」

　ガキィンッ！！！

　斬り結んでいた状態の大剣に力を込めて二人共後ろへと跳ぶ。

　ジャキッ！

　左手を後ろに、右手を大剣に添えて突きを放つ構えを取る。ここまで純粋な剣術のみでやり合って来たが、コイツはかなり成長している。邪神共との戦闘を繰り返し、奴らの神格を奪い取り込んだ影響だろう。このまま野放しにするには危険過ぎる。ここで一気に片を付けてやるぜ。

「フッ、シューティング・スターズ流星群か？　だがそれはもう見切っている」
「さあ、どうかな……？　いくぞ！」

　ドンッ！！！

　封鎖地の奈落の底の地面を蹴って、一気に加速する。そして渾身の一撃の突きを放つ！

「シューティング・スター流星！！！」
「何ぃっ！？」

　ズガアッ！！！

　連打を意識していたヤツの左腕肩口から下を、強烈な打突が魔神衣ディアーボリスを突き破り吹き飛ばした。そのまま背後に周り込んで体勢を立て直す。同時にその場に膝を着くナギストリア。傷口からは血が溢れ出ている。

「ぐっ……！？　何だ、今の打突は……！？」
「シューティング・スター流星。本来の数十発の突きを一つに収束し、回転力も加えた強烈な打突技だ。以前も言ったはず、お前は既存の俺が見たり使用した技を知ったつもりになっているだけだとな。アストラリア流はそんなに浅くない。右手だけじゃあ最早闘えないだろう。さっさと投降しろ。そうすれば命までは取らん。まだ歯向かうようなら容赦はしないがな」

　大剣ニルヴァーナの切っ先を眼前に突きつけて話しかける。コイツはクソ野郎だが、勝負が着いた今、問答無用で斬り捨てるのは気分が悪い。天界で裁きを受けて貰って無害になるのならそれで構わない。コイツは俺自身。以前なら完全に消滅してやりたかったが、コイツの気持ちもわからなくはない。もしかすると俺もコイツの様になっていたかも知れないしな。

「フッ、ククク……。これで勝ったつもりになっているのなら甘いぞカーズ！　ぐおおおおおおおお！！！」

　俺が根元から吹き飛ばした左腕が、より魔獣の様な姿になって再生していく。おいおい、マジかよ……。

「超速再生か？　だが俺は神気でテメーの左腕の陽子ようしを破壊したはずだ。なぜ再生できる？」
「神気を操れるのは貴様だけではない。砕かれた陽子を神気で回復させれば超速再生が発動するのだ」
「なるほど……、悪魔共とは違うということか。でもな、テメーは今致命的な弱点を口にしたな。砕かれた陽子ようしを回復させなければ超速再生が無意味だと、機能しないということだ。そこには僅かでもタイムラグが発生する。それが追い付かないレベルでズタズタに斬り刻んでやるぜ！」

　のそりと立ち上がるナギストリア。

「いいだろう……、そろそろ本気を見せてやろう。さあ喰らえ！　邪神剣じゃしんけん・シャドウ・レフト・スラッシュ黒陰の残撃！」

　左からの斬撃か。闇属性の一撃だな。ニルヴァーナを盾にして防ぐ！

　ザシュッ！　バキィイイン！！！

「なっ？！」

　頭部の神衣カムイのサークレットが砕かれ、額に浅いが斬撃が入った。流れ出た血で視界が塞がれていく。神衣がなければ確実に頭を割られていた。確かに横薙ぎの攻撃だったハズだ。なぜ俺の頭部が斬られたんだ？！

「神衣の御陰で命拾いしたな。このまま片を付けさせて貰おうか」
「ぐっ……、痛えな。何だ今のは？」
「ペラペラと喋ると思うか？　俺は貴様の分析・解析能力を甘く見てはいない。そうら、まだまだ続くぞ！　シャドウ・レフト・スラッシュ黒陰の残撃！」

　咄嗟に距離を取り、大剣を水平よりも高く持ち、信剣の構えを取る。これでじっくりと見させて貰う！

＜神眼しんがん・未来視プリディクト・アイズ・明鏡止水めいきょうしすい・弱点看破・標的化ターゲッティングが発動します＞

　視界はまだ血で塞がれているが、神眼でヤツの攻撃の黒い魔力が視える。そして明鏡止水の効果で時間が止まったかのように感じられる。鑑定、ナギストリアが上段からの斬り下ろしを放って来るのと同時に右からの横薙ぎの一閃が放たれている。これが本命の攻撃ということだな。
　一撃目は神気と魔力を籠めて放った殺気を飛ばすフェイクか。それに気を取られた隙に本命の攻撃が当たるという訳だ。レフト・スラッシュ残る斬撃とは良く言ったものだ。最初から全スキルを発動させておくべきだった。
　前回ボロカスにしてやったコイツを、俺は心のどこかで舐めていたのかも知れない。完全なる驕りだ。どんな相手だろうと、気を抜けば次の瞬間には死が待っている。ここのところの連勝で気が緩んでいたのかも知れない。こういう所は俺も人間なんだろうな。でももう油断はない！

　上段からの殺気の攻撃の残像を無視して、地面に伏せて沈み込む様に下に回避、外すはずがないと思い込んでいたであろう、ヤツの大振りの斬撃が空を斬る！　そこから敵の機動力を奪う、足を払う様な斬撃を回転しながら放つ！

　ズヴァアアッ！！　ドシャアッ！

「ぐああああっ！！？　俺の足があああっ！！」

　回転を利用して跳ね起き、距離を取る。

「アストラリア流大剣スキル・ブート・ブレイク機動力破壊」

　カウンター気味に両脚を大腿部から断った。ヤツの超速再生が追い付かないタイムラグの合間に次の攻撃を撃ち込む。これで悪あがきも終わりだ！

「アストラリア流大剣スキル・ドラゴン・ファング！！！」

　フェンリル・ファングの大剣バージョンだ。今のコイツは両脚の治癒に専念している上に機動力は完全に断った。上下同時二連の斬撃で両断してしまえば致命傷は免れない！　もらった！

　ザギィイイイン！！！　バキィイン！！！

「う、が、がはっ……？！」

　技を放った瞬間、それとほぼ同時に胴体を神衣ごと斬り裂かれた。何だ？　何が起きた？！

「ククク……、勝ったと思ったか？」
「げほっ、かはっ！！　くっ……、何だそりゃ……！？」

　ヤツの身体の側面から怪物の様な爪の長い頑丈な腕が二本生えている。これがドラゴン・ファングの上下二連撃を防いだのか？　そして残った腕で大剣を俺にカウンター気味に当てたということか。くそっ、口から流血している、思ったよりも傷が深かったのか？

「ヒーラガHP・体力完全回復！」

　神気の攻撃を受けたため、効果は多少落ちるが回復をかける。

「う、ぐ、ぐおおおおおおおおお！！！」

　ナギストリアの両脚も魔獣の様な姿に再生された。立ち上がって来たその体躯は魔神衣を粉々に砕きながら巨大化し、元の5倍近い巨体になっていく。これじゃあ完全に魔物だ。ナギストリアの身体が全てその巨体に飲み込まれ、1匹の邪神の様な姿に変化した。邪神の神格に取り込まれたのか？

「グハアアアアアア！！！　分かたれろ、魔神器ジェノサイド！」
「何いっ！？」

　4本に分裂した大剣がヤツの4本の腕にそれぞれ長い爪が生えたかのように装着された。これは大剣のままでは分が悪いな。最速の二刀でいかせて貰う！

「ニルヴァーナ、二刀フォーム」

　グッと二刀のニルヴァーナを掴む。

（さあいこうか、相棒）
（うむ、我が主よ。だが戦況はあまり芳しくないようだな）
（いいんだよ、どうせコイツはもう長くないだろう。邪神の神格に取り込まれちまったみたいだからな。それに強敵の方が、逆境の方が燃えるだろ？）
（ならば引導を渡してやろう。しかし主よ、其方も仲間に負けず劣らずの戦闘狂バトルジャンキーよな）
（あいつらと一緒にすんな。どの道斃す相手なら強い方が燃えるってだけだ）
（フフフ、そういうことにしておこう）

　余計な知恵を付けやがって。俺の神器も困ったもんだな。さあいくか。

「完全に人間を辞めたようだな。だったら最早躊躇はいらねーだろ。ここで魔物として解体処理してやるぜ！」

　魔物の身体に苦しみながら取り込まれたナギストリアの胴体に顔が生えて来て、獅子の様な形になった。背中の翼も巨大になり、生えて来た尾はまるで巨大な蠍さそりだ。その全身を巨大な大蛇が絡みついて蠢いている。

「ガハハハハッ！！！　よもやこれほどまでに神格を集めてくれるとは！　久しぶりだな特異点のカーズよ！　お前の半身であるこ奴の穢れ切った魂、私にとっては御し易いことこの上なかったぞ！」

　何だ？　この口調、コイツは俺を知っているのか？　いや、この獅子の顔に巨大な蠍の尾、全身に絡みつく大蛇に巨大な翼……。腕が増えて二足歩行になっているが、既視感がある。まさか……

「テメー、まさかとは思うが……。パズズなのか……？！」
「グフフフ、そのまさかだ。以前は後れを取ったが、ただの人間が無理矢理神格を、しかも邪神となった穢れた神格を大量に喰らえば自我を乗っ取られる。お前達の様に神の儀式や能力などで神格を得た者達とは異なるのだ！」

　なるほど……。ヤツ、ナギストリアは人間の身でありながら、パズズの神格を基盤として力を振るい、大量の邪神の神格を取り込んだ。幾ら負の感情が大きなエネルギーとなって動いていようが、穢れた神格を大量に取り込めば人の形に自我すらも保てなくなるという訳か……。馬鹿で愚かなヤツだ、だがそこまでして己の信念を貫こうとした漢おとこの意志を、こんな腐った奴らに利用されるとはな。この際だ、パズズと一緒に葬送してやるよ。

「理由はわかった。だが俺はアイツと一対一タイマンで勝負していたんだ。それを横から割って入って来やがって。漢おとこの勝負に水を差したツケは高たけえぞ。絶対に許さん！　貴様ら亡霊はさっさと消え失せろ！　アストラリア流二刀奥義・ジャッジ・オブ・アストラリア正義の女神の審判ー！！！」

　ドゴオオオオオオオゥッ！！！

　全てを飲み込み切り裂く竜巻の様な奥義の一撃！　それが完全にパズズを捕えたはずだった。

「バカめ！！！」

　フッ！！！

　二刀奥義が転移で躱された。どこだ？！　未来視プリディクト・アイズが追い付かない。邪神の神格を大量に吸収したパズズがここまで速いとは！？　これが神格を完全に使いこなせる神の力なのか？

　ザシュッ！！！

「ぐっ！？」

　後方右斜め上から右肩口を斬られた。だが神衣の防御性能の御陰で肉体への傷は浅い。

　ガギィ！！！　ギィイイイン！！！

　残りの三連撃を二刀で弾く。

「何だ今の攻撃は？　背後を取っておきながらその程度か？」
「グフフフ、今の攻撃は魂に傷をつける。そうら、お前は今『敵に対する疑問』を失ったぞ」
「なんだと？！　ならば喰らえ！　オクタグラム・エッジ八芒星を描く刃！！！」

　ザキン、ザキィン！！！

　くそっ、キレが悪い、どうなってやがる？！　全て弾かれるとは！

「そら、もう一度受けろ！　邪神剣・ソウル・スクラッチ魂魄截断！」

　ザシュッ！！！

　『疑問』を抱くことができないため、攻撃の先読みができない！　このままではマズい！　燃やせ、心の神格を！

「うおおおお！！！　負けてたまるかあああ！」
「バカめ！　お前は今『闘志』を失ったぞ」
「うぐ……、これは……？！」

　意識が一瞬遠のいたとき、ヤツの斬撃が数発俺の身体を斬り裂いた。五体は満足だが、感情の起伏がおかしい。そして最初に斬られた右肩口をはじめ、全身の傷口、そこから蔦つたが伸びて黒い花が咲いている。これが俺の失った感情の様なものなのか？

「なん……だ、この、花は……」
「今の攻撃でお前は『解析能力』、『判断力』に『喜怒哀楽』の多くを失ったぞ。体を見てみるがいい、それがお前の持つ『感情』と人としての身に付けて来た『能力』だ」
「う、あ……、ぐ……」

　体中に蔦が巻き付き次々に黒い花が咲き始めていく。パズズの巨躯が迫って来る。だが……、もう、何も……考えられなく、なってきた……。




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　カーズ達に遅れること、数時間。ジュデッカ、冥王神の間には武器を神器に造り直してもらったアガシャとティミスが到着し、ハーデネスと面会していた。

「――ではたったあの人数で邪神封鎖地へ？！　何てこと……、しかもファーレに濁魂まで。急ぎましょうアガシャ。いくら何でも多勢に無勢過ぎる！」
「はい、ティミス様！　私の神格、否、魂の様なものが強く父上に共鳴しているのを感じます。あの無敵の様な父上に何かが起きたのかも知れません！」
「済まないが君達に任せるよ。私は仕事が山積みでね。ふー、ヤレヤレ」

　ゴスッ！

　ティミスのパンチがハーデネスの顔面に炸裂した。パンドーラとペルピアは驚き言葉も出ない。

「アンタの管轄でしょうが！？　それを人任せにして自分はハンコ押してるだけとかふざけないで！　ペルピア！　アンタも来なさい！　神器が腐るわよ。ファーヌス姉様に報告しようかしらね」
「痛たたた、相変わらず君は過激だね。はあ、仕方ない、冥界が荒らされては輪廻転生のシステムが狂ってしまうからね。ペルピア、行くとしようか。パンドーラ、留守は任せたよ」
「は、はいっ！　お気をつけて！」

　慇懃に答えたパンドーラを尻目に、地獄の目インフェルノ・アイを発動させるハーデネス。この冥界一帯を見渡せる便利なスキルだ。

「どうやらサーシャとアリアがファーレと闘っているが、戦況は芳しくない様だ。神特異点のカーズは濁点と闘っていたはずだが……、どういうことだ？　あれはパズズ？！　どうやら神格を乗っ取られたようだね。冥星四巨頭の気配も消えている。ファーレに消されたのか……。おのれ……、よくも私のかわいい部下達をやってくれたものだ。来い、神器カースド・ブレード呪いの魔剣！　我が身を纏え、神衣よ！」

　カアアアアアッ！！！　ジャキィン！

　漆黒の神衣に鍔に黒い翼がデザインされたソードが具現化される。斬った相手に斬撃痕を永久に刻み付け、回復不能にする神器。回復させるにはその部分の傷を抉り出さなくてはならない恐るべき魔剣だ。刀身には地獄門の銘文が刻まれている。当に希望を絶つ、魔神器に近い冥王神の神器である。
　冥界におけるハーデネスはまさに無敵を誇る。それでもファーレ相手は分が悪い。アリア達が足止めしている今が好機には違いない。

「来なさい、ウチの神衣！　出でよ、神器ソウル・イーター御魂喰らい！」

　ペルピアの身体には身軽なローブと軽鎧の様な神衣が装着され、巨大な鎌が現れる。この鎌に斬られると精神に直接ダメージが走り、行動不能になるという恐怖の鎌だ。

「神魔大戦と大虐殺の時以来ね、アンタ達の神器を見るのは。さあ行きましょう！」
「待ちたまえティミス。インタフェアランス妨害結界の転移疎外が無効化されている。あの二人を相手にファーレも大規模な権能を使い続けるのは無理があった様だね。今から転移で封鎖地の神格者達とサーシャにアリアの増援に向かう。準備はいいかい？」
「ウチはいつでもええどすー」
「はい、父上と母上に、大切な仲間達を救うことに躊躇はありません！」
「立派になったわねアガシャ。ホント、このぐうたら冥王神にあなたの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいわ。いつでもいいわよ、飛んで転移して」
「ヤレヤレ、サーシャの姉とは思えない程の激情家だよ。まあ今この冥界の危機に際しては頼もしいと言っておこうか」

　シュン！！！

　アガシャはハーデネス達と共に冥界最深部の邪神封鎖地へと向かった。




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「もう、切りがないわね！　アヤ、なんなのこいつら！？」
「チェトレ、集中を切らさないで！　こいつらは且つてクラーチを壊滅寸前に追い込もうとした邪神達。天上の加護を失い、神器に神衣も纏えないけど神には違いない。気を抜いたら、いくら神衣と龍闘衣ドラゴローブを纏っていたとしても致命的なダメージを受けることになるよ！」

　ここまでの数時間でアヤとチェトレ、ユズリハにディードとアジーンが斃した邪神は漸く12体。弱体化していても神には違いない。見た目は悍ましい姿になっているが、その実力は計り知れない。残りはまだ43体もいる。一度に襲いかかられたら一溜まりもない。邪神共は互いに我関せずといった様子で各々が好き勝手に動いている。連携される前にできる限り数を減らさなくてはならない。1体ずつ確実に仕留めていくしかない。

　バキィ！！！

「くっ、こいつら思ったよりパワーがあるな……！　ユズリハ姉さん、このままだとジリ貧ですよ」
「カーズはまだレベル300台の時に神格に目覚めて、レベル3000以上の邪神を単独で屠ってるのよ。アジーン、その程度で弱音を吐いてるようじゃまだまだねっ！」

　ザシュッ！！！　
　
　投擲したグングニルが1体を突き抜けて戻って来る。

「私達のレベルはその時のカーズ様よりも遥かに高い。負ける道理はありません」

　ギャリィィィン！！！　バシュシュシュッ！！！

　ディードの連接剣ウィップソードが巻き付けた邪神をズタズタに斬り裂き肉片にする。
　二人が葬った邪神の神格が燦々と降り注ぐ。僅かだがステータスが上昇する。

「じゃあ俺も行かせて貰いますよ！　はああああ……、唸れ神龍の炎よ！　神龍闘技しんりゅうとうぎ・獄龍炎拳ごくりゅうえんけん！！！」

　ドグアアアアアアッ！！！

　突き出した正拳突きから地獄の獄炎の如き黒い炎が迸り、目の前に迫った邪神は蒸発する様に消えた。

「よし、できたぞ神龍闘技。なんて威力だ、これは使い道を考えないとな……」
「アジーンも多少は成長しましたね」
「そうねー、意味なく殴り合いしなくなったもんねー。この子には大きな進歩でしょ」
「くっ、エルフのお二人は口撃力がぱねえ！」
「まだ次が来る、一旦アヤちゃん達と合流しましょう！」
「「応！」」

　離れた位置で闘っているアヤ達と合流する。

「ディード、ユズリハ、アジーンも！　無事で何よりね。この辺り一帯は大体片付けたわ。残りは封鎖地の内部に入る必要がある。ここまでで邪神の程度はわかったはず。一対一なら負ける要素はないけど、残った4つの封鎖地の中にはそれぞれ10体ずつ残っている。他の世界に、特にニルヴァーナに転移されたら厄介。私はカーズの魂と神格が共鳴しているのを感じる。恐らく同じ血を分けたアガシャもそうだと思う。だから私はカーズの下に向かおうと思ってる。残り10体ずつ……、みんな、チェトレも任せていい？」
「同じ神格を分けて血の盟約を受けたわたくしには、……カーズ様がピンチだということしかわかりません。恐らく同じ特異点同士だからこそでしょうね。アヤ様、カーズ様をよろしくお願いします。わたくし達は残った邪神達を片付けてお待ちしておきます」
「ちょっと焼けるけど仕方ないわねー。雑魚共は任せといて！　こっちのが早く終わったらすぐに駆け付けるからねー」
「アヤの姉御、俺も邪神共を蹴散らしてやります！」
「じゃあカーズは任せるわね、アヤちゃん。私達はやれることをやってからカーズの下へ向かう！　行きましょう！」
「「「「散！！！」」」」

　四人が各々別の邪神の封鎖地の穴の中へと飛び込む。彼女達なら大丈夫だろう。あのとき王城で見たパズズよりも劣る敵の方が多い。アヤは振り向き、カーズがナギストリアとの死闘を繰り広げている封鎖地へと向かおうとした、その時だった。

　ドオーーーーンッ！！！

「くっ、厄介な魔神器ですね……相変わらず」

　ファーレに吹き飛ばされたアリアが目の前に落下して来た。アヤが上を見ると空中でサーシャとファーレが武器を交えている。凄まじいまでの神気を感じる。純粋な神同士の闘いとは如何にとんでもないレベルなのかと実感した瞬間だった。

　シュンッ！！！

「アリア、よく持ち堪えましたね。後は私と妹のサーシャに任せなさい！　この間の借りを返してやるわ！」
「なっ、あなたは！？　いつの間にここに？」

　手にした神器ルナティック・アルコ狂月弓に膨大な魔力量の矢が番えられる。

「喰らいなさい！　全てを焼き尽くす究極の炎の一矢を！　アルティミーシア流弓術奥義！　フェニックス・ドライヴ・アロー不死鳥の穿つ一矢！！！」

　ビシュッ！！！　ドゴオオオオオオ！！！

　凄まじく巨大な不死鳥の姿をした一矢が斬り結んでいたサーシャには掠りもせずにルシキファーレのみを飲み込んだ。当に燃え盛る炎の巨大なレーザー砲の様な一矢。これ程の物量ではアポカリプス破壊の天啓の不可視の斬撃インビジブル・スラッシュでも斬り裂くことは不可能に違いない。
　と、その場にいる誰もが思っていた。

「げほげほっ！　全く、奥義を初手でぶちかますとは……。炎で私の魔神衣も溶解しかけてしまったみたいだね。でもこのアポカリプスが盾シールドにも変化することはわかっていただろう？　あの程度じゃまだまだ私に致命傷を負わせることはできないよ」
「チッ、しぶとい……」

　舌打ちをするティミス。そして全身を覆う程の巨大なカイトシールドの形状になったアポカリプスを持ち、勝ち誇った様な声を上げるファーレ。そしてサーシャが姉の姿を視界に捉えた。

「やはりあの弓術はお姉様？！　どうしてここに？」
「神界での禊は終わったわ。愚かな姉を許して頂戴、私の大切な妹サーシャ」
「……いいえ、私にとってあなたはいつだって大切な姉だった。これから正義の為に手を取り闘いましょう」
「ありがとう……」

　ティミスの、サーシャと同じアメジストの様な輝く紫色の瞳から涙が零れた。

「さて、感動の再会ついでに私も冥界を荒らし、四巨頭まで亡き者にしてくれた堕天神に地獄の裁判を下してあげようかね」
「同じく、静かで平穏な冥界を荒らした罪は大きい。ウチも久々に暴れさせて頂きますー」

　神器を手にしてハーデネスとペルピアも転移で現れていた。

「アガシャ、あなたはカーズの、父親の下へ急ぎなさい！　神格の輝きが弱くなっていっているわ。ここは私達に任せておきなさい。アヤ、あなたも！」
「はい、行って参ります、ティミス様」
「ええ、アガシャ行くよ！」

　ババッ！！！

　底の見えない封鎖地の奥にいるカーズの下へと二人は飛び降りた。













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さあ、カーズのピンチにアヤとアガシャは間に合うのか？
続きが気になる方はどうぞ次の物語へ、♥やコメント、お星様を頂けると喜びます。執筆のモチベーションアップにもつながります！　
一話ごとの文字数が多いので、その回一話でがっつり進むように構成しております。
今回のイラストノートは此方、
https://kakuyomu.jp/users/kazudonafinal10/news/16817330665531730973
そしてこの世界ニルヴァーナの世界地図は此方、
https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/d5QHGJcz
これまでの冒険と照らし合わせて見てみて下さい。
そして『アリアの勝手に巻き込みコーナー』は此方です。
https://kakuyomu.jp/works/16817330653661805207
アリアが勝手に展開するメタネタコーナー。本編を読んで頂いた読者様は
くすっと笑えるかと思います(笑)
そして設定資料集も作成中です。登場人物や、スキル・魔法・流派の解説、
その他色々とここでしかわからないことも公開しております。
ネタバレになりますが、ここまでお読みになっていらっしゃる読者様には、
問題なしです！
『OVERKILL(オーバーキル)　キャラクター・スキル・設定資料集（注：ネタバレ含みます）』
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