雑巾うどんの謎

どこでも大佐

文字の大きさ
上 下
4 / 7

孤独のグルメ

しおりを挟む
私は覚悟を決めた。

食べたらこの謎空間から出られる。もちろん確証はない。確証はないが、きっと出られる筈だと私のかんがささやいていた。それを今は全力で信じるしかない。
ましてやこれは私に対する挑戦状でもあるわけで、今時点では受けて立つ以外の選択肢せんたくしもなさそうだった。

私は大きく息を吸い込んだ。
「雑巾うどん 一つください。トッピングなし。麺の増量もなし。つまり何もふやさんといてください。レギュラーとかトールといった小さいサイズでお願いします。ラージとかベンティとかトレンタとかは無しで」と一気に捲し立てた。


店長は無言で頷いた。
そしてきびすを返すと、ノロノロと店の奥へ戻っていった。おそらく厨房ちゅうぼうで雑巾うどんを作る準備に取り掛かるのだろう。

私は精神統一を続ける。このままでは何かが壊れそうだった。
そして30分ほど時間が経った。


「雑巾うどん、お待たせしました」器が私の前に置かれた。
でかい。器のデカさが半端じゃない。つるとんた○の器かよ。と内心私は突っ込んだ。

中を覗くと座布団のような大きさの雑巾が、これまた山のようなうどんの上に、どんと乗っかっていた。一般的なうどんの4~5倍の量はあると私は目測で判断した。見た目の絵面は想像以上にやばかった。

その上、古い牛乳臭のような匂いが私の鼻を襲う。マジかよ~これって新品の雑巾じゃないのかよ。

流石に、これは食い物じゃないよ。むろん残飯でもないよと 私の脳が必死に抵抗ともいうべき警告を発し続けている。

「あぁ……やばいなこれ。想像以上にやばいで」

けれども私にも味方はいる。
味覚音痴みかくおんちとバカ舌。さらに腐ったものを食べてもへっちゃらな鉄の胃袋。

目をつぶればいける。 たぶん。きっと。だといいな。
私は箸で雑巾をつまみ上げると、おもむろに齧りついた。

「うへっ まっずーーーー」 私のバカ舌と味覚音痴みかくおんちをもってすら、不味いという判断がくだされた。胃が痙攣しはじめる。鉄の胃袋さえ悲鳴をあげた。
明海、本日における最大のピンチ到来や。
あかん。駄目や。限界や。

その時だ。急に脳が、妙な反応をし始めた。その脳が出した答えはこうだった。
「これなら食えない事もないゾ」

あぁ。やばいよやばいよ。私のかわいい脳も本格的に壊れてしもうた。まぁ前からガバガバやったけどな。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

心はニンゲン体はワンワン、その名も名警察犬ヨシオ

まずい棒
ミステリー
 その昔、日本一の名探偵と呼ばれた男がいた。数々の難事件を解決させてきた男はある事件をきっかけに現代へ犬として転生してしまう。  そしてまさかの飼い主は自分の子孫!? 驚きつつも第二の犬人生が始まる。  これは日々、武蔵野公園前派出所に勤務する名警察犬の物語である。

【完結】シリアルキラーの話です。基本、この国に入ってこない情報ですから、、、

つじんし
ミステリー
僕は因が見える。 因果関係や因果応報の因だ。 そう、因だけ... この力から逃れるために日本に来たが、やはりこの国の警察に目をつけられて金のために... いや、正直に言うとあの日本人の女に利用され、世界中のシリアルキラーを相手にすることになってしまった...

マスクドアセッサー

碧 春海
ミステリー
主人公朝比奈優作が裁判員に選ばれて1つの事件に出会う事から始まるミステリー小説 朝比奈優作シリーズ第5弾。

推理の果てに咲く恋

葉羽
ミステリー
高校2年生の神藤葉羽が、日々の退屈な学校生活の中で唯一の楽しみである推理小説に没頭する様子を描く。ある日、彼の鋭い観察眼が、学校内で起こった些細な出来事に異変を感じ取る。

旧校舎のフーディーニ

澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】 時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。 困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。 けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。 奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。 「タネも仕掛けもございます」 ★毎週月水金の12時くらいに更新予定 ※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。 ※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。 ※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。

リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴
ミステリー
 『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。  主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。  それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。  物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。  翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?  翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

学園ミステリ~桐木純架

よなぷー
ミステリー
・絶世の美貌で探偵を自称する高校生、桐木純架。しかし彼は重度の奇行癖の持ち主だった! 相棒・朱雀楼路は彼に振り回されつつ毎日を過ごす。 そんな二人の前に立ち塞がる数々の謎。 血の涙を流す肖像画、何者かに折られるチョーク、喫茶店で奇怪な行動を示す老人……。 新感覚学園ミステリ風コメディ、ここに開幕。 『小説家になろう』でも公開されています――が、検索除外設定です。

限られた時間であなたを感じていたい

ラヴ KAZU
ミステリー
海斗  驍 二十三歳  ある日驍は事故にあい黄泉の国への迎えが来てしまう。 驍は愛する琴葉が気になり、死神に頼み込み三ヶ月の猶予を与えて貰う。 驍は琴葉に気持ちを伝えたかった。 なぜなら琴葉は急に連絡が取れなくなった驍の愛に疑問を持ったのである。 浜咲 琴葉 三十五歳  急に連絡が取れなくなった驍の愛に疑問を抱く琴葉。 霊感を感じる琴葉はそれから不思議な出来事に遭遇する。 危険な目に遭うが霊体が危機を救ってくれた。 驍の死を知らされたが信じたくない気持ちと助けてくれた霊体が驍であって欲しいと思う気持ちの狭間で揺れていた。   驍は事故に遭い黄泉の国への迎えがやって来た。 愛する琴葉が気になり、三ヶ月の猶予を与えて貰う。 しかし自分の気持ちを伝えることが出来ず、同僚の身体を借りる事に。 琴葉は急に連絡が取れなくなった驍の愛に疑問を抱いていた。 危ない目に遭うが危機を霊体によって回避する。 だから驍の死を知らされたが信じたくない気持ちと霊体が驍であればいいと思う気持ちの狭間で揺れていた。 驍と琴葉の三ヶ月の物語である。      

処理中です...