仲間に裏切られた勇者は魔王と一緒に復讐します

桜羽根ねね

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①勇者と沈黙の冤罪

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「褒美など必要ない!こいつは勇者を騙った偽物だ!」
「僕等を欺き、魔の者と通じていたんです」
「これがその証拠の写真さ。まさか魔王と手を組んでいたとは思わなかったよ」

 ……???

 え……?
 俺は一体、何を言われてるんだ?

 勇者に選ばれた平民の俺、クロード。恵まれた体格と能力を持つ騎士のロイ、賢者に近いとまで言われる魔術師アゲハ、美形な見た目に反して腕力が強い武闘家のジャズ。

 この四人のパーティで旅をして、魔王を無力化することに成功して、無事に王国まで戻ってきて、王様と姫様に事の次第を報告していたはずだよな?約束通り好きな褒美をくれるって話になって……、うん、流れは全くおかしくなかった。

 それなのに、どうして突然俺が糾弾されてるんだ……?

「まあ……!あの魔王と、抱き合っているなんて……!どういうことですの、勇者様……っ」
「勇者よ、騎士らが申すのは真のことか?」

 両手で口を覆って驚く姫様と、眼差しがきつくなる王様。周りの兵士達もざわつき始めている。ジャズが見せた写真では、確かに俺と魔王が抱き合ってるけど、これは肝心な時に俺が転んでしまったせいだ。何故か魔王が抱きとめてくれて場の空気がおかしなことになったとはいえ、決して手を組んでいたわけじゃない。

 いやでもこれ、普通に見たらそうとしか思えないし、やばいよな?とにかく、訳が分からないけど否定しないと……!

「……っ、……!?」

 違う、と言いたかったのに、声が出ない。パクパクと間抜けに開閉するだけで、肝心の声は少しも発せなかった。これは、そう、魔術師の沈黙の呪いだ。

「……!!~~……っ!!!」
「図星を突かれて声も出ないようですね。この際です、全てお話します。王様、この偽勇者は旅の途中、あろうことか娼館に入り浸るような輩でした。それを指摘すれば開き直って怒り出す屑野郎です」

 違う、娼館に行ってたのはお前だろ屑アゲハ!控えた方がいいって言った俺のことを、童貞だ無能だと散々馬鹿にしてきたくせに!

「碌な実力もなく、向上心もゼロ。ずっと我慢していたが、私達を虐げ続けてばかりだったな」

 実力は確かに一番下だったけど、それでも毎日鍛錬していたのは知ってるはずだろ馬鹿ロイ!そんな俺を木刀とはいえボコボコにしてたのはお前だろうが!!

「我儘っぷりも凄かったよね。『勇者』だからって金も女も自分のものだと勘違いして、行く先々で豪遊してさ」

 そっくりそのまま返すぞ阿呆ジャズ!人助けで金をせびってたのはお前だろ!『勇者の仲間』を持ち出して得意になってたのを何度も見てきたんだからな!?

 言い返したい。叫びたい。それなのに、声が出ない。都合よく書くものもないし、俺の力じゃ沈黙を破れない。

 次第に顔が険しくなっていく王様と、汚らわしいモノを見るような目で睨んでくる姫様。……ああ、これきっとアゲハが魅了の呪いをかけてるな。聡明な彼等が一方の話だけで判断するとは考えにくいのに、こんなに簡単に俺を見捨てようとしているんだから。

「無言は肯定と取るぞ、勇者……、否、魔族に組した裏切りの偽勇者よ。皆の者、そやつを捕らえよ!」
「お慕い申しておりましたのに……、こんな最低なお人だったなんて、失望しましたわ」

 逃げようとしたところで、俺の身体能力じゃこいつらに敵わない。突然の裏切りについていけないまま、俺は呆気なく捕らえられ、……その日の内に処刑されることになった。
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