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case1:平凡ノンケ春雨ろくろの場合
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「あのさ……、これ、どうなってんだ……」
「あははっ、オレが分かると思う?起きたら牢屋の中とかウケんだけど」
「僕達は淫雨の滝にいたはずです。それなのに、こんな見も知らぬ場所に居るということは……、きっと誰かの夢の中ですね。早く起きてもらえますか?」
「あられの馬鹿は置いといて、マジで何が起きてんだよ」
「もしかしてだけど、これって、異世界トリップかも……!僕、こういう展開本で読んだことあるんだ」
「いせかいドリップ?何それ、コーヒーの種類?」
「トリップだよ!別の世界に飛ばされちゃうってやつ。大体チートとかあったりするんだけど、初手牢屋は正直嫌な予感しかしないというか……」
「お目覚めですか、稀人よ」
りん、と鈴が鳴るような声が響いて、騒いでいた俺達は咄嗟に口を噤んだ。だってそこには、さっきまで誰もいなかったはずなのに。
生まれて初めて入った牢屋越しに現れたのは、絶世の美人だった。雪みたいに白くて長い髪、長い睫毛に縁取られた瞳は、綺麗な翠色だ。男か女か分からない……というか、そもそも人間ですらなさそうだ。何せ、下半身がピンク色の触手の集合体だった。
背後でひらりが何か早口でブツブツ言ってるが、それどころじゃない。初手牢屋、現れた人外……、アニメオタクなひらりじゃなくても嫌な予感しかしない。
「どうか怖がらないでください。調査のために時間が必要でして……、ここからすぐに出して差し上げますね」
「うわ、何あれ……タコ?」
「馬鹿ですか、ゆくる君。陸上にいるんですからあれはミミズです」
「馬鹿に馬鹿とは言われたくないかな~?」
「おい、お前らちょっと黙ってろ!」
ひそひそと会話をするゆくるもあられも、それにツッコむささらも、驚いてはいるけど及び腰じゃない。なんか後ろで息を荒くしているひらりは置いといて、俺の友達は肝が据わってんな……。
俺も俺で、嫌な予感がしつつも混乱していないのは、目の前の美人から悪意を感じないからだろう。足が触手でも、そんないきなり襲ってくるわけでもなさそうだし。
ぱち、と綺麗な翠色と目が合って、へらりと愛想笑いを浮かべてしまう。困った時の処世術だ。
「あ……っ、駄目です、待って」
美人は焦った声も綺麗なんだな、なんてどうでもいいことを考えた俺の前に、一本の触手が伸びてきた。格子の合間を縫って、目の前でぴたりと止まったそれは……触手というより、モロちんこの形をしていた。ひくひくと蠢く小さな穴から、とろりとした粘液が溢れるのがよく見える。エラが張っていて、カリも高くて、それはもう立派な触手ちんこだ。
「え、っと……?」
「お、おい、ろくろ!何ぼーっとしてんだ!そのままだと当たるぞ!?」
「そっ、そうだな……?」
「ごめんなさい、私の精神が弱いばかりに……っ、す、すぐ、戻しますから……」
あんなに神聖みがあった美人が、尖った耳の先まで赤く染めて、触手をどうにか戻そうと引っ張っている。なんだかその姿が可愛く見えてしまって、俺は。
「そんなに強く引っ張ったら、痛くなるぞ」
「っあ……」
気がついた時には、触手ちんこを両手で握って、優しく擦りながらその先端にキスをしていた。
……いやマジで何やってんだ俺……???
「ろ、ろくろ君!?君は一体何を……!?そ、それは食べ物ではないと思うのですがっ!?」
「ぎゃーーっ!そこでチュー!?いきなりチューするの!?平凡枠だと思ってたけどろくろは男前枠だね最高!」
よく分からない叫びが聞こえてくる中、俺は硬直しながら美人と見つめあっていた。唇は触手にくっつけたまま、こぷこぷと溢れ続ける液体が甘くて、無意識の内に飲んでしまう。
「~~~っっ♡そんな、出会って、間もないですのに……、嬉しいです……♡私の求婚を受け入れてくれてありがとうございます。たっぷり愛して差し上げますね、私のお嫁さん……♡」
うっとりと囁かれた言葉と共に、目の前がぷつんと暗くなった。
「あははっ、オレが分かると思う?起きたら牢屋の中とかウケんだけど」
「僕達は淫雨の滝にいたはずです。それなのに、こんな見も知らぬ場所に居るということは……、きっと誰かの夢の中ですね。早く起きてもらえますか?」
「あられの馬鹿は置いといて、マジで何が起きてんだよ」
「もしかしてだけど、これって、異世界トリップかも……!僕、こういう展開本で読んだことあるんだ」
「いせかいドリップ?何それ、コーヒーの種類?」
「トリップだよ!別の世界に飛ばされちゃうってやつ。大体チートとかあったりするんだけど、初手牢屋は正直嫌な予感しかしないというか……」
「お目覚めですか、稀人よ」
りん、と鈴が鳴るような声が響いて、騒いでいた俺達は咄嗟に口を噤んだ。だってそこには、さっきまで誰もいなかったはずなのに。
生まれて初めて入った牢屋越しに現れたのは、絶世の美人だった。雪みたいに白くて長い髪、長い睫毛に縁取られた瞳は、綺麗な翠色だ。男か女か分からない……というか、そもそも人間ですらなさそうだ。何せ、下半身がピンク色の触手の集合体だった。
背後でひらりが何か早口でブツブツ言ってるが、それどころじゃない。初手牢屋、現れた人外……、アニメオタクなひらりじゃなくても嫌な予感しかしない。
「どうか怖がらないでください。調査のために時間が必要でして……、ここからすぐに出して差し上げますね」
「うわ、何あれ……タコ?」
「馬鹿ですか、ゆくる君。陸上にいるんですからあれはミミズです」
「馬鹿に馬鹿とは言われたくないかな~?」
「おい、お前らちょっと黙ってろ!」
ひそひそと会話をするゆくるもあられも、それにツッコむささらも、驚いてはいるけど及び腰じゃない。なんか後ろで息を荒くしているひらりは置いといて、俺の友達は肝が据わってんな……。
俺も俺で、嫌な予感がしつつも混乱していないのは、目の前の美人から悪意を感じないからだろう。足が触手でも、そんないきなり襲ってくるわけでもなさそうだし。
ぱち、と綺麗な翠色と目が合って、へらりと愛想笑いを浮かべてしまう。困った時の処世術だ。
「あ……っ、駄目です、待って」
美人は焦った声も綺麗なんだな、なんてどうでもいいことを考えた俺の前に、一本の触手が伸びてきた。格子の合間を縫って、目の前でぴたりと止まったそれは……触手というより、モロちんこの形をしていた。ひくひくと蠢く小さな穴から、とろりとした粘液が溢れるのがよく見える。エラが張っていて、カリも高くて、それはもう立派な触手ちんこだ。
「え、っと……?」
「お、おい、ろくろ!何ぼーっとしてんだ!そのままだと当たるぞ!?」
「そっ、そうだな……?」
「ごめんなさい、私の精神が弱いばかりに……っ、す、すぐ、戻しますから……」
あんなに神聖みがあった美人が、尖った耳の先まで赤く染めて、触手をどうにか戻そうと引っ張っている。なんだかその姿が可愛く見えてしまって、俺は。
「そんなに強く引っ張ったら、痛くなるぞ」
「っあ……」
気がついた時には、触手ちんこを両手で握って、優しく擦りながらその先端にキスをしていた。
……いやマジで何やってんだ俺……???
「ろ、ろくろ君!?君は一体何を……!?そ、それは食べ物ではないと思うのですがっ!?」
「ぎゃーーっ!そこでチュー!?いきなりチューするの!?平凡枠だと思ってたけどろくろは男前枠だね最高!」
よく分からない叫びが聞こえてくる中、俺は硬直しながら美人と見つめあっていた。唇は触手にくっつけたまま、こぷこぷと溢れ続ける液体が甘くて、無意識の内に飲んでしまう。
「~~~っっ♡そんな、出会って、間もないですのに……、嬉しいです……♡私の求婚を受け入れてくれてありがとうございます。たっぷり愛して差し上げますね、私のお嫁さん……♡」
うっとりと囁かれた言葉と共に、目の前がぷつんと暗くなった。
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