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桜羽根ねね

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case3。ボッキング病【3P】

嫌われる想像しかしていなかった

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関西弁キャラを書いてみたもののとっても似非です。ご了承ください!

☆☆☆☆☆

 その『事故』は、よりにもよって音楽番組ミュジカルの……生放送中に起きてしまった。

『さっきのミュジカルに出てたシグパス見た!?やばすぎたんだけど!あれ、ガチで勃起してたよね!?』
『シグナルパステルってグループ知らんけど、リーダーが歌ってる最中に勃起したらしくて草』
『あれってボッキング病だろ?アイドルなのに何年間も片想いしてんのかよ』
『なんかショック……』
『あの状態のまま歌って踊りきんのはすげぇよ。ちんぽ揺れまくっててやばかったけどな』
『ボッキングってやべぇぐらいの巨根になった上に勃起が収まらないやつだよな、ウケる』
『正直興奮した』

「………………」
「あーー!!おいっ!エゴサするなって言っただろ!」
「……ショウくん」
「スマホは暫く預かっておくからな!」
「なんや、また見よったん?自分から落ち込みにいく必要ないねんで?」
「御園くん……。…………ほんとに、ごめん。これからって時に、僕が、こんな……」
「あー、はいはい、謝んのはなしや。自分もショウも武流のこと責めてへんからな。今はそのチンポどうするかだけ考えとき」
「っ……」

 ──三人組アイドルユニット、シグナルパステル。
 あみだくじで決まったリーダーである僕……赤坂武流と、ムードメーカーの黄之藤ショウくん、大人の色気がすごい青澤御園くんが所属しているユニットだ。

 大学のアイドル研で仲良くなって、見る専だったはずなのに……何故か自分達がアイドルになっていた。ショウくんと御園くんは大学のミスターコンの常連だったから分かるけど、そこまで秀でていない僕までアイドルだなんて今でも信じられない。ただ、僕達を応援してくれる人達がいるから、弱音は絶対に吐かないようにしてきた。

 でも。
 メジャーデビューを果たしたばかりで、さあこれからもっと有名に、って時に。

「(生放送中に……、勃起するなんて……!)」

 目頭がどんどん熱くなってくる。ユニットを組んでいる上、シェアハウスをしている二人に、心配も迷惑もかけたくないのに。

「おい、御園。はっきり言い過ぎだっての」
「でも事実やろ?武流かてそんくらい分かっとるはずや」
「…………う、ん」
「っ、泣きそうになってんじゃねぇか。よしよし、御園は意地悪だもんな」
「はぁ?勝手に悪者にせんでほしいわ」

 ベッドに横になったままの僕の頭を、ショウくんがわしわしと撫でてくれる。ショウくんはいつも優しい。もちろん、御園くんも。

「ちが……、御園くんのせいじゃないよ。二人に迷惑かけるのが、申し訳なくて……」
「責めてへん言うとるのになぁ。武流には難しいかもしれへんけど、切り替えてこうや。……まずは、そうやな。誰に片想いしとるん?」
「っっ……!!」
「だから直球すぎ……。……いや、でも、それ分かんねぇとどうしようもないか。片想い相手にしか治せないんだもんな」
「え、っと……、それは……」

 きっと聞かれると思っていた質問に、上手く答えられない。だって、僕の片想いは……不純すぎるからだ。
 言葉を濁して布団の中に潜ろうとしたところで、その布団越しに御園くんが『それ』を掴んできた。

「ひゃあっ!?」
「逃げんのはなしやで、武流」

 40……もしかすると50センチぐらいにまで勃起した、僕の巨根。服越し布団越しではあるけど、触れられると気持ちよくて恥ずかしい。

「だとしても、武流が嫌がることしてんじゃねぇよ!セクハラ野郎!」
「いたた、暴力反対や。……そんで?答えんかったらこのままシコったるけど……どうする?」
「え、あ……」
「嫌って言えよ、武流。寧ろ嫌いって言ってやれ、そしたら御園は激ヘコみする……っだぁ!?おいっ、足蹴ったな!?」
「なんのことか分からへんなぁ」
「けっ、喧嘩は駄目だよ……!その、い、言うから……っ、片想いの……相手」
「ほんま?男に二言はなしやで、武流」

 ぱ、と離された手が、そのまま布団を剥ぎ取っていった。パンパンに膨らんだペニスは隠したくても隠せないから……もうこの際考えないことにする。

 ……今から伝えることは、本当に傲慢で自分勝手で、不純なことだ。二人から軽蔑されたり罵られたりする覚悟も、今、出来た。

 からからに乾いた喉から、片想いの相手を絞り出す。 

「ショウくん、と、御園くん」
「へっ?何でいきなり俺らの名前……」 
「あほか。片想いの相手言うたやろ。……やけど、二択で答えるんはどうかと思うわぁ」
「ちがっ……。二択じゃ、なくて。……ふたり、とも」 
「え」
「僕は……、二人のことが同じくらい好きなんだ。ただでさえ、男同士なのに……。こんな煮えきらない奴でごめん」 
「……」
「……」

 二兎を追う者は一兎をも得ず、という有名なことわざを思い出す。いくら二人相手に片想いを募らせていても、二人から一気に嫌われてしまう可能性だってある。
 それが怖くて、今までずっと言えなかった。だけど、もう、ボッキング病にかかってしまった以上、隠すことなんて出来ない。

「そっか……。武流が俺らのこと……。いつも控えめなのに珍しいな」 
「め、珍しいって……!こんなのおかしいことなんだよ!?」
「なら、武流から好きって言われて、嬉しいって思ったのもおかしいことなのか?」
「う、嬉しい……!?」
「そ。頭ん中一気に熱くなって、心臓やばいことになってんの」

 都合のいい聞き間違えじゃ、ない。感情よりも先に露骨に動いたのは僕の巨根だった。押し上げたズボンごと前後にブルンと揺れる。

「尻尾みたいでかわええなぁ。……なぁ、武流。自分もおかしくなったんやろか」 
「み、その、くん……」
「ええやん、自分ら二人んこと好きなんやろ?ほんなら二人でボッキング治したるさかい」
「まっ、なんで、そんな……っ、ふ、二人ともライクと勘違いしてるんじゃ……!?僕は、え、えっちしたい意味で好きだってこと、分かってる!?」
「武流の口からえっちって聞くとなんかこう……クるな」
「ラブやのうてえっちやなんて、ほんま愛らしなぁ」
「う、わっ!?」

 優しく肩を掴まれて、ころりと転がされる。勃起が擦れて気持ちいい……、なんて思ってる場合じゃない。嫌われる想像しかしていなかったから、こんなの想定外すぎる。

 ……だけど、僕が好きな人達の手を拒むことなんて、出来るわけがなかった。


*****
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