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勇者と魔王の結婚に巻き込まれた魔法使いは魔界でママになりました
前編
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パパ(美形オーガ)と息子(見た目ショタ)に愛されるママ♂になる、ほぼタイトルそのまんまなエロコメ。
男性妊娠要素があります。
☆☆☆☆☆
「僕、魔王と結婚することになったんだ」
「は?」
「実はもう、その、孕まされてて」
「は???」
「突然なんだけど、今から結婚式があって……、その、ラギには来てほしいなって」
「はあああああぁ!!???」
一緒に旅をしている勇者……ココことココラチェスが、電撃スピードおめでた婚をすることになったらしい。それも、倒すべき対象であった魔王と。
いや、俺達つい二週間ぐらい前に旅に出たばっかだよな?まだ低レベルの魔物をなんとか撃退出来るくらいの実力で、ようやく一つ目の町に辿り着いたところだよな?もちろん、道中に魔王なんて出てこなかったはずだ。それで?魔王と?結婚?
「……お前も冗談なんて言えたんだな」
結論としては、これしかなかった。
「じょ、冗談じゃないよ。恥ずかしくてなかなか言えなかったんだけど、魔王とはずっと夢の中で会ってたんだ。小さい頃から」
「じゃあそれ夢じゃん。そんな悪夢忘れちまえよ」
「悪夢でもないよ!確かに、夢の中だけど、彼は凄く優しくて、かっこよくて、僕には使えない色んな魔法を見せてくれたんだ。ずっと好きだって言ってくれて、僕も、大きくなるにつれてドキドキしていって……、18になったら結婚しようって約束もしてくれたんだよ」
「ココ、それは約束じゃない、呪いだ。今すぐ教会で解呪してもらおう」
「もう!彼のことを悪く言わないで。僕にとっては、幼馴染みみたいなものなんだよ。魔王だと知ったのは最近だけど、僕は彼のことが好きなんだ。それに、結婚すればもう人間界を侵略するのはやめるって言ってくれたから」
「はあ」
いや、もう、はあしか言えないだろ。え、魔王が幼馴染みって何。お前と一緒に居た俺は幼馴染みじゃなかったのか?恥ずかしいとか言ってないで最初に言えよ。教えろよ。俺めちゃくちゃやる気出してたの馬鹿みたいじゃん。勇者のパーティーに抜擢されて喜んでた俺のこと、一体どんな気持ちで見てたんだよ。
ドロドロした嫌な感情が湧いてくる俺の前で、ココは至って幸せそうに微笑んだ。それこそまるで、天使みたいに愛らしく。
「お願い、ラギ。今まで黙っていたのは申し訳ないけれど、君にも参列してほしいんだ。魔界に行くの初めてだし、ラギが居ると心強いから」
いや、行くわけないだろ。
喉まで出かかったその言葉は、どうにか飲み下した。
これはあれだ、疲れからくる妄言ってやつだ。うっかり俺も信じる方向に行ってたけど、ココは昔から夢見がちなところあったし。話に乗ってやれば満足するだろ、うん。
「……分かったよ。結婚式に出ればいいんだろ?」
「うん……!ありがとう、ラギ!じゃあ、準備があるから早速魔界に行こっ!」
「あー、はいはい、魔界な」
旅のゴール地点であるそこに、一体どうやって行くんだろうか。そう、呆れていた俺は。
「えっ」
次の瞬間、落下していた。
*****
「──それじゃあラギ、僕は着替えてくるね」
放心状態でココを見送る俺の格好は、安い旅装束からきっちりしたグレーの礼服に変わっていた。
「(なんなんだこれ……、妄言じゃなかったのかよ……!)」
待合室らしき部屋は、さっきまで居た小さな宿屋とは打って変わった煌びやかさだ。ただ、飾られている調度品がところどころおどろおどろしい。髑髏型の壺とか誰の趣味だよ。なんか緑色に発光してるし。
それに、窓の外から見える景色がどう見ても現実じゃない。月の代わりに浮かぶ赤くて巨大な星、スモークみたいな紫の空、当たり前のように飛んでいる見たことがない魔物……。
そう、俺をこの格好に着替えさせたのも魔物だった。下半身が蛇の……ラミアが何故かメイド服を着ていて、めちゃくちゃ丁寧に着せてきた。あまりのことにフリーズしたし、攻撃魔法を唱えようなんて考えにも至らなかった。
本当にここが魔界ということは……、勇者は魔王と結婚する、というのも事実、ってことか。
「(マジかぁ……)」
なんというか、複雑な思いだ。
あいつが望んで結婚して、戦わずに平和になるのならそっちの方がいいと思う。だから、彼等の結婚は喜ばしいことなんだろう。そう理解はしても、納得が出来ない。
子供が出来たから俺に暴露したってことは、出来なかったら今後も騙し続けてたってことだ。多分俺は、そこが納得出来なくて……、少しショックだったんだと思う。俺だってココとは小さい頃から一緒だったのに、という面倒くさい嫉妬だ。
もっと早く教えてくれれば……、驚きはしても心から祝えていただろう。それが、今は出来そうにない。
あー……、俺ってこんなうじうじした奴だったっけ。こんなのダサいし、さっさと切り替えないと。
そう悶々と唸っていると、不意にノックの音がした。魔界なのに、そういうところはこっちと変わらないんだな。
「……どうぞ」
式の準備が出来たんだろうか。鬱々とした気分のままそう声をかけると、ガチャリと開かれた扉から褐色の子供が顔を覗かせた。額からは小さな黒い角が二本生えている。くりっとした紫色の瞳は可愛いけど、多分、オーガの子供だ。腕力だと普通に負けると思う。
「おにーさん、だあれ?」
そのままとてとてと近寄ってきた子供は、椅子に座る俺の膝に手を置いて、無垢な瞳で見上げてきた。魔族に無垢ってのもおかしな気がするけど、本当に悪意の欠片も感じない。好奇心旺盛で物怖じしない人間の子供と同じだ。
「んー、俺はラギラット。お前……じゃなくて、君は?」
「らぎ……、ラギくん!ぼくはね、ハイジだよ。魔王さまと花嫁さまにお花渡すの」
「そっかー。……花嫁が人間だってことは知ってるか?」
「しってるよ。魔王さま、いっぱい花嫁さまのこと自慢してたから。だから、ぼくもパパもみんなもお祝いするの」
「へぇ……」
魔界で惚気て外堀固めてやがる。まあ、全員が全員賛成ってわけじゃないだろうけど、祝福ムードなのは確実だろう。
というか、よじ登ってきたんだけどどうすればいいんだこれ。今この子の親が来たら俺潰されたりしないか?魔族といえど、子供に懐かれて悪い気はしないけどさ。出来れば適切な距離を保ちたい。
「ラギくんも人間だよね。おいしそうなにおいがする」
「えっ」
とうとうちょこんと膝の上に座ってきた子供は、俺の服に顔を埋めてすんすんと鼻を鳴らしてきた。多分、でかいオーガに美味そうなんて言われたら命の危険を感じるけど、ふにゃりとした声音で言われたらそうなのか?って呆けた疑問しか出てこなかった。いや、警戒心をなくすな俺。子供といえどオーガ。もしかすると油断したところをつかれてぱくりと食べられるかもしれない。
「あ、あー……っと、そろそろ戻った方がいいんじゃないか。ほら、パパもいるんだろ?」
「うん。……ねえ、ラギくん。お願い聞いてくれる?」
そっと俺から身を離したハイジは、子供とは思えない色気のある声でそう尋ねてきた。その上、俺の手を取るとおしゃぶりのように指を咥えてきた。え、これ、返答間違えたら指持ってかれるフラグ?
まるで味見をされているような気分になりながらぎこちなく頷くと、ハイジは嬉しそうに甘噛みしてきた。俺の身体は、美味くないぞ。どう刺激せずに剥がせるか思案していると、またもや響いてきたノックの 音。今度はこっちが返事をする前に勢いよく開かれた。ノックの意味よ。
「あっ、パパ!」
ぱぱ。
明るい声をあげたハイジが、俺からパッと離れて駆けていく。その先に居たのは、ハイジとそっくりな紫色の目をした、巨体のオーガだった。褐色の肌に金髪が映えていて、側頭部から伸びる曲がった角を巻き込むようにして結われている。でかくて怖いはずなのに、正装しているからだろうか、綺麗だと思ってしまった。
「ハイジ。勝手にうろつくなとあれ程言っていただろう」
「ごめんなさい。でもね、美味しそうなにおいがしたの。そしたら、ラギくんがいたんだよ」
「らぎくん……」
「あ、はは……、どうも……」
バチリと視線があって、口元がひくつく。オーガなのに整った顔をしている……というか、え、改めて見るとすごい美形すぎないか?ハイジは可愛い系だけど、パパは切れ長な目がクールなかっこいい系だ。こんだけイケてたら嫁の一人や二人いてもおかしくないわな。オーガが一夫多妻かどうか知らないけど。……あれ、でも、初めて会ったはずなのに、初めてじゃ、ないような……?いや、こんなでかい相手に会ったら忘れるはずないよな。
「かわ……」
「え?川?」
「ん゛んっ、……人間、ハイジに妙な真似はしていないだろうな」
「妙……って、何もしてませんよ」
向こうから乗られたり指舐められたりはしたけど。それはなんだか後が怖いから言わないでおこう。
「あっ!ぼくね、ラギくんにお願いするんだった!」
「ハイジ。式が始まるからこれ以上は──」
「ラギくん、ぼくのママになって!」
「ぶっ!!」
「……ハイジ?」
キラッキラした笑顔でそんな爆弾発言をされた俺は、勢いよく噎せこんだ。いや、何て?ママ?……ママになれ、と?まず俺は男だし、人間とオーガだし、そもそもそっちのパパは人間のことをよく思っていないみたいだけど?
……あー、うん、なるほど、子供の戯言。ちょっとした悪戯、からかって遊びたいお年頃なんだな、きっと。
「悪いけど、ママにはなれないかな~……」
「お願い聞いてくれるって、頷いてくれたのに?」
「あれは、俺に出来る範囲というか……。え、ーと、ちなみに、本当のママさんは……?」
歯切れ悪く答えながらチラリとオーガを見やると、向こうも向こうで困ったような顔をしていた。答えにくいことなのかもしれない。
「……ハイジは、私の姉の息子だ。訳あって私が親代わりになっている」
ということは、パパって呼ばれてるけど甥にあたるってことか。そして多分、濁されたけどお姉さんは亡くなってるのかもしれない。深く聞くつもりはないけどな。そして勿論、ママになるつもりもない。
どうしようかと思案していた矢先。
「──お待たせいたしました。式が始まりますので会場までご案内します」
「あっ、はい。……ほら、ハイジはお花渡すんだろ?見ていてやるからしっかり頑張れよ」
「うん、がんばる!」
タイミングよく聞こえてきた案内の声に助けられて、俺はどうにかハイジの願いをうやむやにすることに成功したのだった。
男性妊娠要素があります。
☆☆☆☆☆
「僕、魔王と結婚することになったんだ」
「は?」
「実はもう、その、孕まされてて」
「は???」
「突然なんだけど、今から結婚式があって……、その、ラギには来てほしいなって」
「はあああああぁ!!???」
一緒に旅をしている勇者……ココことココラチェスが、電撃スピードおめでた婚をすることになったらしい。それも、倒すべき対象であった魔王と。
いや、俺達つい二週間ぐらい前に旅に出たばっかだよな?まだ低レベルの魔物をなんとか撃退出来るくらいの実力で、ようやく一つ目の町に辿り着いたところだよな?もちろん、道中に魔王なんて出てこなかったはずだ。それで?魔王と?結婚?
「……お前も冗談なんて言えたんだな」
結論としては、これしかなかった。
「じょ、冗談じゃないよ。恥ずかしくてなかなか言えなかったんだけど、魔王とはずっと夢の中で会ってたんだ。小さい頃から」
「じゃあそれ夢じゃん。そんな悪夢忘れちまえよ」
「悪夢でもないよ!確かに、夢の中だけど、彼は凄く優しくて、かっこよくて、僕には使えない色んな魔法を見せてくれたんだ。ずっと好きだって言ってくれて、僕も、大きくなるにつれてドキドキしていって……、18になったら結婚しようって約束もしてくれたんだよ」
「ココ、それは約束じゃない、呪いだ。今すぐ教会で解呪してもらおう」
「もう!彼のことを悪く言わないで。僕にとっては、幼馴染みみたいなものなんだよ。魔王だと知ったのは最近だけど、僕は彼のことが好きなんだ。それに、結婚すればもう人間界を侵略するのはやめるって言ってくれたから」
「はあ」
いや、もう、はあしか言えないだろ。え、魔王が幼馴染みって何。お前と一緒に居た俺は幼馴染みじゃなかったのか?恥ずかしいとか言ってないで最初に言えよ。教えろよ。俺めちゃくちゃやる気出してたの馬鹿みたいじゃん。勇者のパーティーに抜擢されて喜んでた俺のこと、一体どんな気持ちで見てたんだよ。
ドロドロした嫌な感情が湧いてくる俺の前で、ココは至って幸せそうに微笑んだ。それこそまるで、天使みたいに愛らしく。
「お願い、ラギ。今まで黙っていたのは申し訳ないけれど、君にも参列してほしいんだ。魔界に行くの初めてだし、ラギが居ると心強いから」
いや、行くわけないだろ。
喉まで出かかったその言葉は、どうにか飲み下した。
これはあれだ、疲れからくる妄言ってやつだ。うっかり俺も信じる方向に行ってたけど、ココは昔から夢見がちなところあったし。話に乗ってやれば満足するだろ、うん。
「……分かったよ。結婚式に出ればいいんだろ?」
「うん……!ありがとう、ラギ!じゃあ、準備があるから早速魔界に行こっ!」
「あー、はいはい、魔界な」
旅のゴール地点であるそこに、一体どうやって行くんだろうか。そう、呆れていた俺は。
「えっ」
次の瞬間、落下していた。
*****
「──それじゃあラギ、僕は着替えてくるね」
放心状態でココを見送る俺の格好は、安い旅装束からきっちりしたグレーの礼服に変わっていた。
「(なんなんだこれ……、妄言じゃなかったのかよ……!)」
待合室らしき部屋は、さっきまで居た小さな宿屋とは打って変わった煌びやかさだ。ただ、飾られている調度品がところどころおどろおどろしい。髑髏型の壺とか誰の趣味だよ。なんか緑色に発光してるし。
それに、窓の外から見える景色がどう見ても現実じゃない。月の代わりに浮かぶ赤くて巨大な星、スモークみたいな紫の空、当たり前のように飛んでいる見たことがない魔物……。
そう、俺をこの格好に着替えさせたのも魔物だった。下半身が蛇の……ラミアが何故かメイド服を着ていて、めちゃくちゃ丁寧に着せてきた。あまりのことにフリーズしたし、攻撃魔法を唱えようなんて考えにも至らなかった。
本当にここが魔界ということは……、勇者は魔王と結婚する、というのも事実、ってことか。
「(マジかぁ……)」
なんというか、複雑な思いだ。
あいつが望んで結婚して、戦わずに平和になるのならそっちの方がいいと思う。だから、彼等の結婚は喜ばしいことなんだろう。そう理解はしても、納得が出来ない。
子供が出来たから俺に暴露したってことは、出来なかったら今後も騙し続けてたってことだ。多分俺は、そこが納得出来なくて……、少しショックだったんだと思う。俺だってココとは小さい頃から一緒だったのに、という面倒くさい嫉妬だ。
もっと早く教えてくれれば……、驚きはしても心から祝えていただろう。それが、今は出来そうにない。
あー……、俺ってこんなうじうじした奴だったっけ。こんなのダサいし、さっさと切り替えないと。
そう悶々と唸っていると、不意にノックの音がした。魔界なのに、そういうところはこっちと変わらないんだな。
「……どうぞ」
式の準備が出来たんだろうか。鬱々とした気分のままそう声をかけると、ガチャリと開かれた扉から褐色の子供が顔を覗かせた。額からは小さな黒い角が二本生えている。くりっとした紫色の瞳は可愛いけど、多分、オーガの子供だ。腕力だと普通に負けると思う。
「おにーさん、だあれ?」
そのままとてとてと近寄ってきた子供は、椅子に座る俺の膝に手を置いて、無垢な瞳で見上げてきた。魔族に無垢ってのもおかしな気がするけど、本当に悪意の欠片も感じない。好奇心旺盛で物怖じしない人間の子供と同じだ。
「んー、俺はラギラット。お前……じゃなくて、君は?」
「らぎ……、ラギくん!ぼくはね、ハイジだよ。魔王さまと花嫁さまにお花渡すの」
「そっかー。……花嫁が人間だってことは知ってるか?」
「しってるよ。魔王さま、いっぱい花嫁さまのこと自慢してたから。だから、ぼくもパパもみんなもお祝いするの」
「へぇ……」
魔界で惚気て外堀固めてやがる。まあ、全員が全員賛成ってわけじゃないだろうけど、祝福ムードなのは確実だろう。
というか、よじ登ってきたんだけどどうすればいいんだこれ。今この子の親が来たら俺潰されたりしないか?魔族といえど、子供に懐かれて悪い気はしないけどさ。出来れば適切な距離を保ちたい。
「ラギくんも人間だよね。おいしそうなにおいがする」
「えっ」
とうとうちょこんと膝の上に座ってきた子供は、俺の服に顔を埋めてすんすんと鼻を鳴らしてきた。多分、でかいオーガに美味そうなんて言われたら命の危険を感じるけど、ふにゃりとした声音で言われたらそうなのか?って呆けた疑問しか出てこなかった。いや、警戒心をなくすな俺。子供といえどオーガ。もしかすると油断したところをつかれてぱくりと食べられるかもしれない。
「あ、あー……っと、そろそろ戻った方がいいんじゃないか。ほら、パパもいるんだろ?」
「うん。……ねえ、ラギくん。お願い聞いてくれる?」
そっと俺から身を離したハイジは、子供とは思えない色気のある声でそう尋ねてきた。その上、俺の手を取るとおしゃぶりのように指を咥えてきた。え、これ、返答間違えたら指持ってかれるフラグ?
まるで味見をされているような気分になりながらぎこちなく頷くと、ハイジは嬉しそうに甘噛みしてきた。俺の身体は、美味くないぞ。どう刺激せずに剥がせるか思案していると、またもや響いてきたノックの 音。今度はこっちが返事をする前に勢いよく開かれた。ノックの意味よ。
「あっ、パパ!」
ぱぱ。
明るい声をあげたハイジが、俺からパッと離れて駆けていく。その先に居たのは、ハイジとそっくりな紫色の目をした、巨体のオーガだった。褐色の肌に金髪が映えていて、側頭部から伸びる曲がった角を巻き込むようにして結われている。でかくて怖いはずなのに、正装しているからだろうか、綺麗だと思ってしまった。
「ハイジ。勝手にうろつくなとあれ程言っていただろう」
「ごめんなさい。でもね、美味しそうなにおいがしたの。そしたら、ラギくんがいたんだよ」
「らぎくん……」
「あ、はは……、どうも……」
バチリと視線があって、口元がひくつく。オーガなのに整った顔をしている……というか、え、改めて見るとすごい美形すぎないか?ハイジは可愛い系だけど、パパは切れ長な目がクールなかっこいい系だ。こんだけイケてたら嫁の一人や二人いてもおかしくないわな。オーガが一夫多妻かどうか知らないけど。……あれ、でも、初めて会ったはずなのに、初めてじゃ、ないような……?いや、こんなでかい相手に会ったら忘れるはずないよな。
「かわ……」
「え?川?」
「ん゛んっ、……人間、ハイジに妙な真似はしていないだろうな」
「妙……って、何もしてませんよ」
向こうから乗られたり指舐められたりはしたけど。それはなんだか後が怖いから言わないでおこう。
「あっ!ぼくね、ラギくんにお願いするんだった!」
「ハイジ。式が始まるからこれ以上は──」
「ラギくん、ぼくのママになって!」
「ぶっ!!」
「……ハイジ?」
キラッキラした笑顔でそんな爆弾発言をされた俺は、勢いよく噎せこんだ。いや、何て?ママ?……ママになれ、と?まず俺は男だし、人間とオーガだし、そもそもそっちのパパは人間のことをよく思っていないみたいだけど?
……あー、うん、なるほど、子供の戯言。ちょっとした悪戯、からかって遊びたいお年頃なんだな、きっと。
「悪いけど、ママにはなれないかな~……」
「お願い聞いてくれるって、頷いてくれたのに?」
「あれは、俺に出来る範囲というか……。え、ーと、ちなみに、本当のママさんは……?」
歯切れ悪く答えながらチラリとオーガを見やると、向こうも向こうで困ったような顔をしていた。答えにくいことなのかもしれない。
「……ハイジは、私の姉の息子だ。訳あって私が親代わりになっている」
ということは、パパって呼ばれてるけど甥にあたるってことか。そして多分、濁されたけどお姉さんは亡くなってるのかもしれない。深く聞くつもりはないけどな。そして勿論、ママになるつもりもない。
どうしようかと思案していた矢先。
「──お待たせいたしました。式が始まりますので会場までご案内します」
「あっ、はい。……ほら、ハイジはお花渡すんだろ?見ていてやるからしっかり頑張れよ」
「うん、がんばる!」
タイミングよく聞こえてきた案内の声に助けられて、俺はどうにかハイジの願いをうやむやにすることに成功したのだった。
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