世にも奇妙な恋物語

桜羽根ねね

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⑥同居人はお狐様

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「こっくりさん、こっくりさん、おいでください」
「……玲明、そんなことをしなくても普通に呼べばいいと思うよ」
「うーん、いつもそれだと雰囲気出ないかなぁって。だってあるりさん、あんまりこっくりさんっぽくないし」
「む、相変わらず失礼だなぁ」

 そう言って頬を膨らませるこっくりさん……もといあるりさんとの同居生活が始まったのは一ヶ月前。

 俺は所謂不登校児ってやつで、その日も適当に暇を潰していた。そんな時ふと目に入ったのが、テレビの再放送でやっていたホラー特集だ。超常現象なんて信じてないけど、暇潰しには丁度よさそうだなぁと思ったんだ。

 だから、真似はしないでくださいなんてテロップはスルーして、紙と鉛筆と十円玉さえあれば出来るこっくりさんをやってみることにした。一人でやるもんでもないし、完全にお遊びだ。

 そう、……遊びのつもりだったのに、程なくしてその『人』は現れた。

 狐の耳と尻尾、白い着物に身を包んだこっくりさんが──……、菓子折りを持って、玄関から。

 呆然とした後、不審者と思って追い出そうとしたけど、こっくりさんは既に俺に憑いてしまった後で……。なんだかんだで、ぐだぐだと同居生活が続いてしまっている。

 あるりと名乗った妙に気さくなこっくりさんは、意外にも家事全般が得意で、同居自体は悪くなかったりするんだよね。
 問題は寧ろ、俺の方にあるというか。

「あのね玲明、君は僕のことをこっくりさんっぽくないってよく言うけど、そもそも君達人間が、妖狐である僕達を勝手にこっくりさんと呼んでいるだ、け……っひゃ!?」
「ん~、あるりさんの尻尾ふわふわで気持ちいいですね。いつも手入れしてるんすよね?」
「っ、う、ま……まあ、ね」
「今度俺にも手伝わせてくださいよ。家事のお礼として、ね?」
「あっ……、そこ、…………っん!そ、それには、及ばないよ。自分のことは自分で、出来る、……っん、から……ぁ」

 無邪気を装ってあるりさんの尻尾を弄ぶのが、ここ最近の俺の日課だ。

 どうやらあるりさんは尻尾が性感帯らしく、擽ったり握ったりする度にとろんとした甘い声で鳴く。感じてるのは一目瞭然なのに、気丈なのか何なのか、頑なにそのことを認めようとしない。そこがまた可愛くてたまんないんだけど。
 快楽を我慢して真っ赤になっているあるりさんは、正直すっごくそそる。

 口の中に溜まった唾液をこくりと飲み下して、更に手の動きを早めていく。もふもふふわふわな触感最高。付け根が一番弱いんだよね~。
 座ったままぴくぴく跳ねるあるりさんが可愛くて愛おしくて、止めようにも止まらない。

 いつもなら程々でやめるんだけど、そろそろ俺の理性や自制が保たないんだよね。

「あっ……、やぁ、れいめ、いぃ……!」
「どしたの、あるりさん。痛い?」
「前が、変なんだ……っ」
「前?」

 はふはふと息を整えながらそう訴えてくるあるりさんに、わざと首を傾げてみせる。

 尻尾をこんなに長い時間弄ったのは初めてだから、とうとう我慢出来なくなっちゃったんだね。あるりさん、可愛い。

 まああんまり意地悪するのも可哀想かなぁ、と。
 そう思って「ここが変なの?」と聞くより先に。

 あるりさんが、着物の合わせを左右に開いて、自らそこを露出させてきた。

「え……っ」

 しかも、下に何も穿いてなかったらしく、あるりさんらしい可愛いペニスがすぐに現わになった。ピンッと勃起していて先端からは先走りが溢れていて。こっくりさんにも陰毛って生えてるんだなと考えたところでハッと我に返った。

 え、何これ、誘ってるの?

「れいめ、どうし……よ、僕のちんちん、腫れちゃってる……」
「……へ?」
「尻尾、触られただけなのに、何でちんちんおっきくなって……っ」
「ちょっ……、ちょっと待って、あるりさん!ちんちんって言い方もあれだけど…………、もしかして、オナニーとかやったことないの?」
「おなにぃ……?」
「……えっと。こっくりさんって、性欲なかったりする?」
「食欲と睡眠欲なら、あるけど……」

 うわぁ。
 マジか。

 ここに来てこんな事実が発覚するなんて。そりゃ尻尾触られても『感じてる』って認めないわけだ。性欲が何なのかすら分かってなかったんだから。

 ああ、でも。
 この新雪に足を突っ込むような快感は、なかなかないものだよね。
 折角の美味しい機会、食べなきゃ損と思うんだ。

「……あるりさん、それ、辛い?俺でよければ治してあげる」
「っ、本当……!?」
「俺がちんちん触ってあげるから、あるりさんは自分で尻尾触っててよ。すっごく気持ちよくなれると思いますよ」
「う……、うん。分かっ、た」

 俺の言葉に素直に従っておずおず自分の尻尾に触れるあるりさんが、本当に可愛くてたまらない。
 ぺろ、と舌舐めずりをして、俺もあるりさんのペニスに手を伸ばした。


 ──むにゅっ


「うひゃっ!?」
「へっ……?」
「なっ……、ど、どこ握ってんの玲明っ!!」
「え……、あれ、あるりさん……?耳と尻尾……どこやったんすか……?」
「寝ぼけてないでいい加減手を離してっ!」
「いたっ!」

 ぺちん、と頭を叩かれて、ぼんやりとしていた意識が少しずつクリアになっていく。

 俺の目の前には、わなわなと震えながら耳まで真っ赤に染まったあるりさん。狐の耳も尻尾もないし、着ているのは紺色の浴衣だ。影野さんの奥にはまだ寝ているらしい人達の姿も見える。
 そうだ、確か俺達は合宿に来ていて。旅館で雑魚寝して、それで。

「……なーんだ、夢だったんですね……」
「玲明……、僕の日本語が通じないの?手 を は な し て、って言ってるんだけど……!」
「え?」

 そういえば。
 何かむにゅりとしたモノを掴んだままだった…………というか。これ、あるりさんのアレ……だよね?

 こんなとこだけ正夢にしなくてもよかったのに。あーあ、どう言い訳しよう。

 …………ううん、言い訳なんてしなくてもいっか。
 これはこれで楽しくなりそうだし。

「……ねえ、あるりさん。ちんちん勃ってるみたいだけど、抜かなくていーの?」
「う、うるさいっ。いいから早く手を……っん!?」
「あは、おっきくなった。声出したら皆にバレちゃうから気をつけてくださいね」
「っあ……、ばか、玲明、やめ……っ!」
「あのねあるりさん、俺、不思議な夢見たんだ~。あるりさんがこっくりさんで、狐の耳と尻尾がついててさ。性感帯なそこを弄ると、あるりさんがいやらしく喘いでた夢」
「ひゃ、や……っ、みみ、舐めるなぁ……!!」
「都合のいい夢だよね。狐の耳も尻尾も、性感帯なんかじゃないのに」
「ふっ、うぅ……っ!れい、めっ、だめ……だ、イっちゃ…………!」
「イっていいよ、あるりさん。ちゃんと綺麗にしてあげるから。取り憑いてる人間の体液って、すごく美味しいんだよね」
「っひ、や、あああぁ……っ!!」

 あるりさんの痴態を見て、顕現した尻尾の毛がぴんっと逆立ったのが分かる。頭上でひくひく動く耳は、あるりさんの押し殺した嬌声を寸分も漏らさず聞き取ってくれた。

 あるりさんが性に疎いお狐様になってる夢も楽しかったけど、やっぱり感じやすくて羞恥心が強いあるりさんを現実で弄る方がずっと愉しいや。

 こっくりさんである俺を喚んだのが悪いんだから、大人しく喘いじゃってね、あるりさん。
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