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⑥見られました

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「アクアラルド騎士団、第二部隊副隊長のレオンと申す」

 短い黒髪の精悍なイケメンが、表情筋をピクリとも動かさずにそう名乗ってきた。服装こそ簡素なものだけど、服越しでも分かるくらい筋肉がついている。騎士団の副隊長らしいから鍛えてるんだろうな。そんな彼を、グウェンがわざわざ部屋まで呼びつけたのには、理由がある。

「レオンは私が知る中で一番口が堅く、信用に足る者だ。貴様の条件に合わんとは言わせんぞ」
「それは、まあ……、見た目でなんとなく分かるけど……」
「安心なされよ、奥方殿。オレ……、私はこの部屋で行われることを一切口外するつもりはない」

 きっぱりと言い切ったレオンさんの真っ直ぐな瞳に射抜かれて、反射的に頷いてしまう。どうでもいいけど……奥方殿、って、なんか照れるな……。

 とにかく口が堅くて、無表情がデフォルトで、何があっても動じなくて、見聞きしたことを一切合切掘り起こさない人──、俺が言い募った条件に見事に一致しているような人だ。まさかこんなに早く見つかるとは思わなかった。心の準備も全然出来てないってのに……!

『第三者に見られながら、前と後ろを弄られて正直に実況しながら射精する』

 ……それが、今回の儀式のとんでもない内容だ。

 俺が唯一知っているのはラドだけで、だけどラドにはそんな変態行為を見られたくなくて。とにかく条件つけまくってグウェンに投げた結果、やって来たのがレオンさんというわけだ。
 俺はこの、実直をそのまま擬人化したようなイケメンの前で、痴態を晒さないといけないんだな……。やばい、もう羞恥でしにそう。

「カスミ、始めるぞ」
「ん、うぅ……っ」

 隣同士、ベッドに腰かけたグウェンから顎を掬われてキスをされた。ちゅ、ちゅう、とあやすような軽いそれがくすぐったくて、気持ちいい。簡単に蕩けてしまうようになった思考のまま、自分から舌を差し出せば、あっという間にぐちゅぐちゅと捕われてしまった。甘くて、とろとろして、きもちい……♡

「んっ♡ふ、あ♡」

 いつもならそのままされるがままになってしまうけど、今日は痛いくらいに視線を感じて中途半端に理性が残ってしまう。椅子に座って微動だにせず直視してくる、レオンさん。見られている、と思うだけで身体がどんどん熱くなっていく。

「も……♡ぐうぇ、ん、はやく……♡」
「……は、強請りたいならば、『正直に実況』すればいい」
「ん、……っ、キ、キスされて、見られて……、恥ずかしいくらい、気持ちいいから……っ、はやく、前、触って……♡」
「前とは、ここか」
「ひ、っ」

 かりっ、と軽く引っかかれたのは、乳首だ。
 男の乳首なんて、触られたところで何も感じない……はずなのに、変なくすぐったさを感じて声が出てしまった。

「ち、ちが……っ、んぅ!」
「貴様はここも感じるのだな」

 ちゅーされながら、左右の乳首をこりこりと弄られる。摘まれて、潰されて、くりっと引っ張られて。
 キスの気持ちよさがそのまま乳首に伝染したかのように、どんどん疼いてきてしまう。

 本当に触ってほしい『前』が、むくむくと勃起していくのが分かる。乳首だけで、こんな風になるなんて、おかしい。オレの身体がバグってる。これも全部グウェンのせいだ、……ばか。

「ぷ、は……っ♡も、やめ……、ちく、び、違う……♡きもち、ぃ、けど……、ちんこ、触って……♡」
「は……っ、触ってもないのに勃起か。私にどう触ってほしいんだ?」
「い、いっぱい、ぐちゅぐちゅ扱いて、イかせてほしい……っ♡ちんこも、……お尻の、方も……♡」

 これは儀式なんだから、仕方ないことなんだ。俺が淫乱なわけじゃない、グウェンとえっちなことするのが癖になってるわけじゃない。気持ちよくなんか……、いや、正直にならないと、いけないんだよな。

「ちゅう、しながら……っ、射精したい……♡」
「……っ、本当に、貴様は……」
「ふ、んうぅっ♡♡」

 絡めあって溶けあって、そのままひとつになってしまいそうな程深く、唇が合わさる。甘い唾液をこくりと飲み込めば、貪欲な胎がもっと欲しいと強請り出す。

 キスに夢中になる俺のことを、グウェンが器用に抱き上げて膝の上に乗せてきた。背面座位、みたいな体勢だ。首を捻ってキスを続けていると、膝裏を持たれて大きく開かされた。触られてないのにビンビンに勃起してるちんこも、その下でひくついてるアナルも、丸見えに……。

「ん……っ!ん、んん……!!や、だめ、……これっ、レオ、ン、さんに、見え……っ」
「見せねば意味がないだろう。足は自分で抱えていろ」
「あ……、は、恥ずかし、い……っ♡」

 言われるがまま足を抱えて、恥部を晒した姿のままレオンさんと目が合った。俺も恥ずかしいけど、こんなモノを見なきゃいけないなんて、向こうからしても嫌だろう。
 それなのに、レオンさんの表情も顔色も変わっていなかった。照れてもいないし、蔑んでもいない。まるで観察するかのように、ただただじっと俺達のことを見ている。

「ひっ、あぁっ♡」
「『実況』を忘れているぞ」
「あ……♡グ、グウェンの、指っ♡俺のアナルにずっぷり挿入った、ぁ♡ちんこの先っぽ、ぐりぐりされりゅの、きもちい、いぃっ♡♡」
「……自分で慣らしたか?随分すんなり挿入ったが」
「ならし、たぁ♡儀式の、内容知って……っ♡すこし、だけ……っ♡でも、自分で、シたのより……ずっと、きもちい……♡おまんこになっちゃう……♡」

 くちゅくちゅと弄られるアナルが、どうしようもなく気持ちいい。異物感さえも快楽に変わって、俺の身体を熱くする。指が二本、三本と増やされて、ちんこを擦る手もどんどん早くなっていって、目の前がちかちかと瞬き出した。やばい、これもう、イく……っ♡

「ちんこも、おまんこも、っ、ぐちゅぐちゅ、きもちい゛ぃっっ♡♡精液きてるっ、あがって、るぅ♡♡むり、イく、イっちゃ、っああぁ、んぷっ、ん、ん~~~っっ♡♡♡」

 ぶちゅ、と勢いよく唇を塞がれた瞬間、俺は全身をビクつかせながら達していた。ビュウゥッ、と解放された精液がレオンさんの足元にまで飛んでいく。

「ん♡んん♡はぅ♡……っ♡♡」

 余韻イキが、すごい……♡後ろに挿入ったままの指をきゅうきゅう締めるのが気持ちよくて、握ったままのグウェンの手をオナホ代わりに、腰を動かしてしまう。
 べたべたになった唇を離すと、獣のようにギラついた瞳と出くわした。あ、と思った時には、イったばかりのちんこの先端を、凄まじい速さで刺激されていた。

「あ゛ああああぁっっ♡♡♡しょこっ♡らめ゛えええぇっっ♡♡♡あ、でるっ、おしっこ、でちゃう゛うううううぅっっっ♡♡♡」

 プシャアアアアアァッッ♡♡♡

 我慢が出来なくなってきている俺のちんこから、呆気なくおしっこが……、……違う、これ、潮……か?鉄砲水のように飛び出したのは、透明な液体だ。放物線を描いて、少し離れた所にいるレオンさんにビチャビチャと──。

「……あ、あああぁっ!?ご、ごごごめんなさ……っんお゛っ♡ま゛って、グウェ、ンっ♡ちんこ、それ以上されたら……っ、ひ、あ゛あぁっ♡♡」
「…………私以外にマーキングした罰だ」

 そんな理不尽なことを言われながらちんこを責められ、結局おしっこまでジョロジョロと漏らしてしまった俺は、羞恥のキャパオーバーでそのまま意識がブラックアウトしてしまった。


*****


「──……昨日は、本当に大変だった……」
「でも、無事に儀式が終わって良かったです。次の儀式も頑張ってください」
「うん……」

 次の日。俺は朝食を持ってきてくれたラドから元気づけられていた。余程酷い顔をしていたんだろう。
 確かに精神的には羞恥死しそうだけど、体調的には特に問題ない。毎日のようにえっちなことをしているのに疲れたり種切れになったりしないのは、異世界補正か何かだと思う。尻の違和感もない……というか、指であんなに気持ちいいなら、グウェンのあのでかいちんこを挿れられたら、もっとやばいんだろうな……。

 きゅん♡

「(……っいや!疼くな俺のケツ!……くっそ、完全にもう癖に……、グウェンの、虜になってる……)」
「カスミ様?ぼうっとされているようですが……、昨日の儀式、余程大変だったんですね」
「えっ。あ、ああ、まあ、うん……、そうだな」

 ラドにはこれまでも儀式の詳しい内容を伝えていない。これからも伝える気は皆無だ。もしかするとグウェンから聞いてるかもしれないけど、ラドには何も知らない話し相手でいてほしいんだよな……。

 昨日の記憶を振り切るように朝食を食べ終わると同時に、不意にノックの音が響いてきた。グウェンは朝から政務に行っているし、この部屋に来る人なんてラドくらいだから……、一体誰だろう。

「はい?」
「奥方殿、第二部隊副隊長レオンだ。入室してもよいだろうか」
「っ……!あ、あー……、どうぞ?」

 昨日の今日でめっちゃ気まずいけど、俺も潮ぶっかけたこと謝んないとな……。わざとじゃないとはいえ、申し訳なさすぎるし。

 ガチャリと扉を開けて入ってきたレオンさんは、昨日と違って騎士団の隊服を身につけていた。ぱりっとした白が格好いい。

「失礼する。体調に問題はないだろう、か……」

 相変わらずの無表情だったレオンさんの動きがピタリと止まる。

「……?レオンさん?」
「あ……」

 そして、次の瞬間。
 まるで恋する乙女のように、その精悍な顔を耳まで真っ赤に染め上げた。

「(いや何で!?昨日はちっとも顔色変えなかったのに……!別に俺の部屋に変わったところとか……)」
「あれ、レオちゃん?カスミ様に何か御用事?」
「レオ……ちゃん!?」
「あっ。ついうっかり……。レオちゃんが副隊長で僕よりずっと偉いってことは分かっているんですけど、一つ年下の……幼馴染みなもので」
「幼馴染み……」

 中学生にしか見えないラドだけど、そういえば俺より年上だった。レオンさんも俺より上だけどラドよりは下、と。見た目だけじゃ判断しづらいな……って、今はそれより……。

「ラ、ラド……。レオちゃんは、やめてくれ」
「そうだね、気をつけるよ。でも、レオちゃん……レオンも、僕のこといつでもお兄ちゃんって呼んでくれていいんだからね?」
「……もう、そんな歳では、ない」

 真っ赤になったまま、チラチラそわそわと受け答えするレオンさんは、完全に恋する副隊長だった。なるほど……、これはちょっと応援したくなるな。見た感じ、ラドは好意に気付いてないっぽいし。

「……っ、それより、奥方殿。体調は万全か」
「え、あ、ああ。問題ないよ。俺の方こそ……、その、昨日はごめん。思いっきり汚しちゃって……」
「あの程度、血飛沫に比べれば何ともない」

 比べる対象が怖ぇよ。
 まあ、でも、許してくれるみたいでよかった。

「汚した……?カスミ様、嘔吐か何かされたのですか」
「そ、そうそう、そんな感じ。いやー、食べ過ぎだったのかもな」
「そういう時こそベルを鳴らしてください!本当にもう大丈夫なんですか?」
「う、うん。ごめん、次から気をつけるよ」

 背が小さくても、怒ったラドは怖い。吐いたこと自体が嘘とはいえ、殊勝に頷いておいた。

「……では、オレ……私はそろそろ失礼する」
「レオン、しなくていいの?」
「…………、……する」
「(……?何を?)」

 首を傾げた俺の前で、ラドが小さな口から小さな舌をべ、と突き出した。はてなが増えた俺に構わず、レオンさんが身を屈めて同じように舌を出して……、くちゅり、と熱が絡む音がした。

「な……っ!?」

 え、何これ何してんの!?うわ、舌だけでチロチロ舐めてんのえっろ……、俺もグウェンとしてみた……じゃなくて!
 何で唐突に侍従と副隊長のラブシーンが始まってんだ!?俺が知らないだけでもう恋人同士……だとしても、二人っきりの時にしてくれよ!視線に困る!ガン見するけどな!

「……ん。お仕事頑張って」
「ああ。……ラドも」

 たっぷり1分間はくちゅくちゅ絡み合わせた後、何事もなかったかのように離れていった二人。いや、レオンさんの方は発火しそうなくらい真っ赤だったけど。
 若干浮ついた足取りで部屋を後にしたレオンさんを見送って、俺はラドに詰め寄った。

「ラド!い、今のは一体……!?」
「あ。カスミ様はご存知ないですよね。あれはおまじないなんです」
「お、おまじない……?」

 それにしては、随分と濃厚というか、えっちというか……。

「はい。無病息災を願うおまじないで、毎日ではないですけど昔からしているんですよ」
「へ、へぇ……。こっちの世界には、そんなのが……」
「……と、いうのは、レオちゃんが信じている嘘で」
「え?」
「本当は、唾をつけてるだけなんです。物理的にも、魔法的にも。レオちゃん、僕の言うことなら何でも信じてくれて可愛いんですよ。勿論他にもたくさん可愛いところがあるんですけどね」
「あ、あの……、ラドさん?」
「恥ずかしがり屋なレオちゃんから告白してくれるのをずっと待ってたんですけど……、そろそろ僕の方から動こうかなと思ってるんです。押し倒したら全身真っ赤になっちゃいそうですね」
「……」
「カスミ様。侍従の身で大変失礼だとは思うのですが……、昨日の夜、レオちゃんと『ナニ』をされていたのか、教えていただいてもいいですか?」
「…………は、はぃ……」

 ナフキンの下で、俺のちんこが縮こまる。

 人を見かけで判断するなってこと、分かっていたはずで分かっていなかったな……。
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