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先生のファンです!

その①

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推し作家の小説を愛読する腐男子くんのおはなし

変態執着攻め×腐男子受け


☆☆☆☆☆


『好きだ。この気持ちに気付くのが、伝えるのが遅くなってごめん。君のことが大好きだよ、太朗』
『あ……。う、嬉しい。僕もずっと大好き、正一君……っ』

 偽物の恋人ごっこから始まった関係が、今この瞬間から本物へと変わった。

 お互いにきつく抱きしめあう二人を祝福するかのように、爽やかな風が吹き抜けていった──。


×××××


「はーーーー……。ハッピーエンド最高……!」

 読んでいた小説の画面を閉じて余韻に浸る。ここまで読めた嬉しさと、終わってしまった寂しさで感情がごちゃ混ぜだ。

 ──腐男子である俺、香月弥太郎の日課は推し作家であるタマユラさんの作品を巡ることだ。

 更新されたものがあればすぐに目を通し、なかったとしても過去作品を味わってスタンプを飛ばす。気持ち悪いと思われるかもしれない感想も送ってきた。

 俺が愛用している小説投稿サイトは、感想もスタンプも全て匿名だから、かなり好き勝手に送ってると思う。それくらい、ハピエン主義の俺に刺さる話ばかり書いてくれるんだ、タマユラさんは。

 攻めと受けの間に途中で何らかの障害があっても、最後にはハピエンになるから安心して読めるし、時々耽美なシーンも挟まるけど内容も純愛ものが多くて俺としてはすごく満腹だ。

「なぁ、昌磨~。昌磨もタマユラさんの作品読んでみろよ」
「気が向いたらね」
「えー、そればっかじゃん。昌磨もBL好きって言ってたよな?……あ、もしかしてハピエンよりメリバやバッドエンドが好きとか?」
「ううん、やたろーと一緒。オレもハッピーな方が好きだよ」
「えー。だったら読んでくれてもいーじゃん」
「オレは自分で読むより、やたろーの話を聞く方が好きだからさ。今回はどうだったの?」
「今回も最高だったに決まってるじゃん!王道でベタだけど、擦れ違いからの両想いって何回摂取してもおいしいよな~。ほら、攻めと一緒に居る女の子のことを本当に好きな人だと勘違いしちゃうシーンとか。大体攻めの身内ってパターンが多いけど、最早様式美って感じ。それに無意識に嫉妬しちゃって恋心に気付くパターンも良いよな~」

 つらつらととりとめもない腐話を語る俺のことを、大学寮で同室の針崎昌磨はにこにこと聞いてくれている。うん、決して聞き流しているわけじゃないはずだ。

 だって昌磨も腐男子だって言ってたし。いやー、見た目で判断しちゃ駄目だよな。

 初めて昌磨と会った時はリアルチャラ男美形攻めだ……!なんて思っちゃったけど、話してみれば優しいし、チャラいどころか真面目だし。それに俺がうっかり薄い本放置して腐男子バレした時に、同じ腐男子だってことを教えてくれたし!

 ほんと、俺には勿体ないくらいのいい友達だ。休みの日もこうして俺に付き合ってごろごろしてくれるしな。完全インドアな俺と違って友達も多いのに、なんだかちょっとこう……親友ポジションを味わえてる気分だ。恥ずかしいから言わないけど。

「やたろー、また感想送るの?」
「もっちろん!あんま送りすぎるのもあれかなって思うけど、好きって気持ちが溢れちゃうからさ~。匿名だから特定される心配もないし」
「ほんと、飽きずによく書けるよね。ちょっと見せてよ」
「わっ、ちょ、重くはないけど邪魔……!」
「こっちの方が見やすいしさ」

 悪びれなくのたまう昌磨は、ベッドの上でうつ伏せになっていた俺に覆い被さってきた。体重はかけられてないけど、すっぽり覆う程の身長差を分からせられてむっとしてしまう。何を食ったらこんなに大きくなるんだか。

 パーソナルスペースが狭いのか、昌磨はこうやってくっついてくることが多いんだよな。多分、誰にでもそうなんだろうけど、流石陽の者って感じだ。

 さらりとした髪の感触を頬に感じつつ、いつものことだからどかすのを諦めて感想をしたためることにした。その間ずっと昌磨はご機嫌な様子だったけど、そんな面白い感想は書いてないはずなんだけどな……?
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