いちゃらぶ×ぶざまえろ♡らぶざま短編集

天の声には逆らえない！

その①

突然聞こえてきた謎の声に翻弄されるおはなし

クール系イケメン✕‬ツッコミ気質元気っ子


☆☆☆☆☆


『キスしろ』

　やめろやめろやめろ！
　絶対しないからな！？

『キスしろ』

　嫌だって言ってんだろ！無理だって！

『舌入れろ』

　悪化してんじゃねーよ！！

「氷河、お前さっきからなに百面相してんだ？」
「なっ、何でもない！」
『べろちゅーかませ』
「だからやんないっつってんだろ！」
「は？何を？」
「あっ！あ……、あはは、な、なんでもない」
「はぁ？またそれかよ」

　いや、うん。怪しいよな、分かる。すっごく分かる。俺だってこの状況を説明したいし、助けてほしい。

　だけど、【頭の中に謎の声が響いて、幼馴染みとのキスを強制しようとしてくる】なんて言って信じるかって話だよ。

　確かに俺はこいつのことが……、兵藤レントのことが好きだけど！それはもうラブな意味でだいっっっすきだけど！！

　見た目がかっこいいだけじゃなくて、何かと俺のことを助けてくれて、ちょっとぶっきらぼうなところもあるけど優しくて、くしゃっと笑うところが可愛くて……。平々凡々な俺からすると釣り合うどころの話じゃないけど、好きなんだからしょうがないわけだ。

　ただ……、レントはノンケだし、可愛い彼女の噂もひっきりなしに聞こえてくるから、俺が入る隙間なんてないわけで……。あ、もしかしてこの声って俺の欲望？我慢しているつもりが溢れちゃった的な？

『ちがう』

　会話すんな！怖ぇよ！！何なんだよマジで！！

「氷河、もしかして変なモンでも食ったか？」
「は、はは、そーかも。……ごめん、レント。調子悪いみたいだからもう帰るな」

　折角、レントの家で二人きりで過ごせていたのに、変な声のせいで台無しだ。気持ちを伝えられない分、こういった時間を大事にしたいのに。

　何がキスしろだ。そんなことをしたら、気持ち悪がられて距離を置かれて、傍に居ることすら出来なくなってしまう。そんなのごめんだ。

『押し倒してべろちゅーしろ』

　誰がするかばーーーーか！！！

『タイムオーバー』

「は？」

　あれ？
　え？
　おい、何で勝手に身体が動いて……？