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魔王との最終決戦

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「危ない!」

 技を使うより先に、身体が動いていた。

 仲間を突き飛ばして受け身を取った俺を、無数の刃が襲ってきた。闇魔法で創られた刃が、鎧や肌を抉っていく。聞こえてきた悲鳴は聖女様のものだろうか。

「(伊達に鍛えてきた、わけじゃない)」

 血が滴る手で剣を握りしめ、さっきは不発に終わったカウンタースキルを繰り出した。剣に跳ね返された魔法が、数倍の威力になって魔王に返っていく。無論、この程度で倒せるなんて思っていない。

 これはただの目くらましで、 本命は……。

「(ああ。綺麗だ、クラヴェル様)」

 光輝く、勇者の剣。

 まっすぐ振り下ろされたそれは、邪悪なオーラを身に纏う魔王をばっさりと切り伏せた。


*****


 俺は剣士リザリード。

 茶色の短髪に同じく茶色の瞳。よく無愛想だと言われるが、感情がないわけではなく表情筋を動かすのが下手なだけだ。平民の生まれだが、恵まれた体格に救われて王宮の第六騎士団に所属していた。雑用団とも揶揄されることがあるそこで、俺は愚直に自身の力を磨いた。
 そうは言っても、傍から見ればただの一般兵だ。平民風情が無駄な努力だと笑われたこともあった。

 俺はただ、田舎の家族に恩返しがしたいだけだ。そのための努力は無駄でも何でもない。言い返す時間が勿体なくて、無愛想に無視をした。それが癪に障ったんだろう。先輩から露骨に嫌がらせを受けるようになったのは、その頃からだ。良い大人がこんな子供のようなことをするのかと、呆れた覚えがある。

 そんな爪弾きにされていた俺を仲間に迎えてくれたのが、勇者クラヴェル様だ。微笑みに魅了の魔法がこもっていそうな甘いマスク、さらさらの黒髪は美しく、細く引き締まった身体に、剣技も魔法も素晴らしい精度で誰をも虜にしてしまう。

 かくいう俺も、虜にされた中の一人だ。

 正直、俺程度の剣士なんて掃いて捨てる程いたはずなのに、彼は前衛に俺が必要だと言ってくれた。だからこそ、クラヴェル様のためなら、俺はいくらでも盾になった。

 そんなクラヴェル様の夜伽の相手が出来るようになったのは、俺にとって身に余る程の幸福だった。
 無愛想で筋肉がついた男を、勇者様はいつも滾ったイチモツで貫いてくれた。俺が恥ずかしがるからと、ヤる時はいつも後ろからだったな。そんな気遣いすら愛おしく思っていた。クラヴェル様が俺で勃ってくれていることだけで、中出しされた後の処理を一人でしている時も満ち足りた気分だった。

 ……そう、俺は傲慢にも、図々しくも、恥知らずにも、自分はクラヴェル様の恋人だと。

 そんな風に、思い込んでいたんだ。
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