両片想いな彼等と御都合スケベ部屋

桜羽根ねね

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はじまりの部屋

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「二人一緒にゴールしないと出られない部屋?何これ」
「俺が知るわけねーじゃん。悠馬がドッキリで連れてきたんじゃないのかよ?」
「はぁー?何でわざわざそんなことする必要があるわけ?光瑠と二人きりになって何かメリットあんの?」
「な……、こっちだってお前みたいな顔だけ野郎とは願い下げだっ」

 棘を放ち合い、ふんっと顔を背ける二人。だが、その相貌はだらしない程ににやけきっていた。

「(訳わかんない部屋だけど光瑠と一緒とか最高すぎ……!光瑠もあれ絶対嬉しがってたよね、素直じゃないなぁ。そこも可愛いんだけど。あー……、悪態つきながら嬉しそうに見上げてくるのマジでヤバすぎだって)」
「(くっそ……、また心にもないこと言っちゃったな。でも、悠馬だって俺と一緒で嬉しそうにしてたくせに!俺のこと好きなの分かってんだから、もっとぐいぐい来てくれたら……俺だって素直になれんのに。まあでも、ここがどこか分からないけどいい機会だよな。悠馬のことドキドキさせて、向こうから告白させてやる……っ)」

 そう、この二人。お互いのことが好きなくせに、天邪鬼でツンデレで負けず嫌いな性格が仇となり、両片想いなのがバレバレであるにも関わらず、いまだにくっついていないのである。

 自分の容姿が凡庸であると自覚している光瑠は、男女問わず誰とでも打ち解ける王子様のような悠馬のことをいけすかなく思っていた。感情の機微に敏感なこともあり、彼の愛想笑いが気にくわなかったのだ。

 そうして、高校生だったある日、ラブレターを捨てようとしていた悠馬を咎めたところから、彼等の関係が始まった。
 結果として、そのラブレターはストーカーと化していた女生徒からの物だった。そこで諦めさせるために恋人のフリをしたのがきっかけで、互いの一面にきゅんとしては惚れてずるずると沼に落ちていくことになった。それはもう、紆余曲折ありながら。

 素直になれていればすぐにでも発展していたであろうが、両想い未満のまま大学へと進み、シェアハウスで一緒に住んでおきながらもこの関係性のままなのである。

 そんな彼等にとって、この謎の状況はまさに渡りに船。あわよくば事故ちゅーでも狙ってやろうかと思うくらいだ。

「とにかく、ゴール?出口まで行けばいいんだよね」
「……まあ、そうなるな。扉は三つあるみたいだけど、どれにするか……」

 にやけてしまいそうになる表情筋を抑え、前を見据えた二人の目には、等間隔に並んだ扉が映っていた。それぞれ文字が書かれているが、何を意味しているのかは分からない。

 白濁の間、淫核の間、豊水の間。
 意味は分からないが、それとなく嫌な予感を覚えてしまう。

「(迷ってても仕方ねぇか)」

 そんな予感に後ろ髪を引かれつつ、これと決めたら一直線な光瑠は、直感で選んだドアノブに手をかけた。
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