両片想いな彼等と御都合スケベ部屋

桜羽根ねね

文字の大きさ
上 下
1 / 9

はじまりの部屋

しおりを挟む
「二人一緒にゴールしないと出られない部屋?何これ」
「俺が知るわけねーじゃん。悠馬がドッキリで連れてきたんじゃないのかよ?」
「はぁー?何でわざわざそんなことする必要があるわけ?光瑠と二人きりになって何かメリットあんの?」
「な……、こっちだってお前みたいな顔だけ野郎とは願い下げだっ」

 棘を放ち合い、ふんっと顔を背ける二人。だが、その相貌はだらしない程ににやけきっていた。

「(訳わかんない部屋だけど光瑠と一緒とか最高すぎ……!光瑠もあれ絶対嬉しがってたよね、素直じゃないなぁ。そこも可愛いんだけど。あー……、悪態つきながら嬉しそうに見上げてくるのマジでヤバすぎだって)」
「(くっそ……、また心にもないこと言っちゃったな。でも、悠馬だって俺と一緒で嬉しそうにしてたくせに!俺のこと好きなの分かってんだから、もっとぐいぐい来てくれたら……俺だって素直になれんのに。まあでも、ここがどこか分からないけどいい機会だよな。悠馬のことドキドキさせて、向こうから告白させてやる……っ)」

 そう、この二人。お互いのことが好きなくせに、天邪鬼でツンデレで負けず嫌いな性格が仇となり、両片想いなのがバレバレであるにも関わらず、いまだにくっついていないのである。

 自分の容姿が凡庸であると自覚している光瑠は、男女問わず誰とでも打ち解ける王子様のような悠馬のことをいけすかなく思っていた。感情の機微に敏感なこともあり、彼の愛想笑いが気にくわなかったのだ。

 そうして、高校生だったある日、ラブレターを捨てようとしていた悠馬を咎めたところから、彼等の関係が始まった。
 結果として、そのラブレターはストーカーと化していた女生徒からの物だった。そこで諦めさせるために恋人のフリをしたのがきっかけで、互いの一面にきゅんとしては惚れてずるずると沼に落ちていくことになった。それはもう、紆余曲折ありながら。

 素直になれていればすぐにでも発展していたであろうが、両想い未満のまま大学へと進み、シェアハウスで一緒に住んでおきながらもこの関係性のままなのである。

 そんな彼等にとって、この謎の状況はまさに渡りに船。あわよくば事故ちゅーでも狙ってやろうかと思うくらいだ。

「とにかく、ゴール?出口まで行けばいいんだよね」
「……まあ、そうなるな。扉は三つあるみたいだけど、どれにするか……」

 にやけてしまいそうになる表情筋を抑え、前を見据えた二人の目には、等間隔に並んだ扉が映っていた。それぞれ文字が書かれているが、何を意味しているのかは分からない。

 白濁の間、淫核の間、豊水の間。
 意味は分からないが、それとなく嫌な予感を覚えてしまう。

「(迷ってても仕方ねぇか)」

 そんな予感に後ろ髪を引かれつつ、これと決めたら一直線な光瑠は、直感で選んだドアノブに手をかけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

笑って誤魔化してるうちに溜め込んでしまう人

こじらせた処女
BL
颯(はやて)(27)×榊(さかき)(24) おねしょが治らない榊の余裕が無くなっていく話。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

処理中です...